主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2014年ハイチ・ドミニカ報告【特集】
        隣国へ子ら売買 置き去りの路上 

仲介業者 "1人5000円"

トラフィッカーの男たち(左の2人)と、ドミニカ共和国に密入国するタイミングを計る少年(一部画像を処理しています)

トラフィッカーの男たち(左の2人)と、ドミニカ共和国に
密入国するタイミングを計る少年(一部画像を処理しています)

   6月中旬、ハイチ東部の町ベラデール近くにあるドミニカ共和国との国境の周辺を歩いた。マーケットが開かれていたこの日は、買い物客や業者でごった返していた。ハイチの子ども保護機関の監視員の目を避けるように、木の陰で携帯電話で話し込む男と、不安げな表情で一緒にいる少年を見つけた。

 男(32)に話を聞くと、「トラフィッカー(密入国あっせん業者)」だと言い、ハイチ人の少年(10)をドミニカに密入国させる途中だという。当然、違法な行為だが、「罪悪感は全く感じないね。豊かな国に送ってあげてるんだから」。男はそう話した。少年を密入国させるための料金は2000ドミニカペソ(約5000円)、依頼者は少年の親戚だという。ドミニカ側では、別の業者に少年を引き渡す予定で、「最終目的地は知らない」とも言った。

 少年にも話を聞いた。2年前に両親が家を出て行き、それ以来親戚と一緒に暮らしている。数日前、親戚から「両親はドミニカにいる。お前もそこに行くんだ」と告げられた。この日朝、迎えに来たトラフィッカーの男と出発した。少年は「ドミニカで両親に会えると聞いているが、本当に会えるのかは分からない」と不安げな表情を浮かべた。この取材の後、2人は親子のふりをして監視員の目を盗み、国境のゲートをくぐってドミニカに密入国した。

 ユニセフによると、2009年にハイチからドミニカに売買された子どもは2000人に上り、10年の地震後はさらに増えている。

 この地域に数十人いるトラフィッカーの元締の男(36)に話を聞いた。依頼主の多くは子どもの両親や親戚だという。密入国ルートは山越えなど複数ある。「監視されても大丈夫だ」と自信を見せる一方で、この地域の貧しさに触れ、「みんなトラフィッカーでしか稼げない。他の仕事で稼げるんだったらみんなやめるだろう」と話した。

 3年間現場で監視をしている子ども保護機関IBESRのウィリー・パニャーグ監視員(36)は「全部のルートを監視するには数十人の態勢が必要。現在は数人しかおらず、監視しきれない」と厳しい現状について話した。

ハイチとドミニカ共和国 地図

ハイチとドミニカ共和国 地図

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