主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2016年ヨルダンのシリア難民報告【特集】

未来つかみ取れ

◇アスリートに

病院で義足を取り付けるアブドゥルサラーム・アルハリーリさん。砲弾の破片で右脚を切断した=アンマンで

病院で義足を取り付けるアブドゥルサラーム・アルハリーリさん。
砲弾の破片で右脚を切断した=アンマンで

 皮膚に傷がつかぬよう、切断した右脚の先端に包帯を巻き、義足を取り付ける。ズボンをはき、靴下をつける動作にも慣れた。ゆっくりとだが、自分の力で進むことができる。車椅子では得られない喜びだ。

 「乾ききったパンが破裂するように一瞬にして砕けたんだ」。アブドゥルサラーム・アルハリーリさん(19)は右脚を失った時のことを目を閉じて思い返した。

 2015年3月、シリア南西部のダルアーの路地で友人たちと座って談笑していた時、戦車の砲弾が数メートル先に落ちた。閃光(せんこう)で視界が真っ白になり、甲高い爆音が耳をつんざいた。

 右脚に破片が直撃し、皮膚の一部でかろうじてつながっていた。強烈な痛みが走った。「もう終わりだ。自分はもう死ぬんだ」と悟り、直後に気絶した。運ばれた病院で太ももから下を切断した。

 4カ月後、転院した「国境なき医師団」が運営するアンマンの病院で義足を作った。シリアにはそうした施設がなかった。介助なしでは行き先が限られる車椅子。初めて義足を付けて立ち上がった時、忘れていた感覚を思い出した。今では休憩を挟めば1キロ近く歩くこともでき、階段も上れる。「自分じゃないみたいだ」。ふさぎ込んだ気分はどこかに消えていた。

 180センチを超す長身に広い肩幅。サッカー人気の高いシリアでは地元のクラブチームでミッドフィールダーとしてプレー。運動神経には自信があった。

 パラリンピックを見たことがないというアブドゥルサラームさんに、義足を付けて陸上競技で活躍するアスリートの動画を見せた。「義足でこんなことができるのですか。僕もスポーツ用の義足が欲しい。いつか挑戦してみたい」。目を輝かせ、リハビリ室に戻っていった。

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