2010年ケニア・エチオピア ケニアから 乾きと命 (3)

母のシンド・アリさんはポリオで歩くことができない3歳のアブドゥラへちゃんを抱いてソマリア南部から3日間歩いて到着した
=エチオピア・ドロアドの難民一時滞在センターで
2010年6月9日、小松雄介撮影
ソマリアからの避難民が難民キャンプへの移送を待つエチオピア・ドロアドの一時滞在センター。6月9日、ソマリア南部から避難してきた女性、シンド・アリさん(25)は目に涙を浮かべる次男アブドゥラヘちゃん(3)を胸に抱き、センター内の診療所で順番を待っていた。「3年間ほとんど雨が降らず、畑の穀物が枯れ、飼っていた牛とヤギも死に絶えた。2年前からは支援物資も届かない」
アブドゥラヘちゃんは足がまひし、歩けないという。医師はポリオと診断した。有効な治療法はなく後遺症が残る可能性が高い。シンドさんは「もっと早くソマリアを離れて治療を受けさせたかったが、国境まで移動する費用さえなかった」と視線を落とした。
エチオピア・ドロアド
ソマリアでは約20年間にわたる内戦に加え、昨年まで3年間、干ばつにも見舞われた。治安の悪化が国連などによる食糧や医療の援助を妨げた。ドロアドの難 民キャンプには都市部だけでなく、遊牧民が暮らす周辺部からも避難民が押し寄せる。キャンプを運営する国連難民高等弁務官事務所のジャミール・シャハフ・ ドロアド事務所長は「内戦や干ばつ、食糧難。避難民を生む要因は複合的だ」と話す。
6人の子どもを連れて4月に難民キャンプに来た女性、ハリモ・アリ・ユーゼフさん(30)も遊牧民だったが、干ばつで家畜を失った。遊牧生活をあきらめて 町に定住し、集めたまきを売って食いつないでいた。今年、町を支配する武装勢力がまき集めを禁じたため、それも困難になり、母国を出た。生後9カ月の末っ 子、カウサルちゃんを抱き、「干ばつも戦争ももう私を追いかけてこないで」と悲痛な表情で語った。
難民を支援するエチオピアのNGOのアブドゥラミッド・オスマンさん(38)は言う。「遊牧民は干ばつで家畜を失っても、親族で残った家畜を分け合い生きてきた。しかしこんなに長く干ばつが続いては、もう限界だ」【遠藤孝康】