2010年ケニア・エチオピア ケニアから 乾きと命 (5)

路上にごみが散乱する劣悪な環境で生きるアルセム・オドゥウォール君(左)とイボン・アキニちゃん
=ケニア・ナイロビのキベラスラムで
2010年7月
12日、小松雄介撮影
7月3日早朝、ケニアの首都ナイロビにある長距離バスのターミナルは、地方との間を行き来する人々でごった返していた。行商の女性に交じって、小さな荷物を抱えた男性たちが降りてくる。出稼ぎに来た労働者だ。
南西部のビクトリア湖畔の町から到着したニック・オチエンさん(26)は妻と2人の幼い子どもを残して仕事を探しに来た。元々、湖の小魚を売っていた。湖 は干ばつなどで水量が減り、水草が湖面を覆う。漁獲量は激減した。1日の収入は150シリング(約150円)。「1日1食の食事代がやっとだ。ナイロビで 仕事が見つかればいいのだが……」。不安そうな表情だ。
ケニア・ナイロビのキベラスラム
中部の町キツイ行きのバスを待っていたサイモン・シービさん(48)は1年前から単身ナイロビに来て食肉卸売業を始めた。きっかけは昨年の干ばつだった。 「畑の豆やトウモロコシが全部枯れた。田舎には土地はあるが、水がない。出稼ぎしないと、5人の子どもを養えない」と話す。週末は妻に畑仕事の指示をし、 すぐにナイロビに戻るという。
ナイロビの人口は約310万人。約50年間で10倍にふくれあがった。自然増に加え、干ばつなどの影響で生活に苦しむ人々が次々と地方から流入するため だ。市内最大のキベラスラムの人口は100万人を超えたとされる。過密なスラム内では、トイレ不足が深刻で、住民が小便を入れて捨てた袋が路上に散乱す る。学校を運営するリリアン・ワガラさん(41)は「下痢や皮膚病、肺炎を患う子どもが多い」と話す。
両親を亡くし、スラムの親族の家で暮らすアルセム・オドゥウォール君(12)は4年前にスラムに来てから体調がすぐれない。「先週は腕に湿疹(しっしん) ができて、せきと吐き気が止まらなかった」と話す。同居のイボン・アキニちゃん(6)は「私も何度も病気になったの」と話す。2人の家の前の路地にはごみ が山積みで、近くの川には真っ黒な水が流れていた。【遠藤孝康】