主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2016年ヨルダンのシリア難民報告【特集】

未来つかみ取れ

病を抱える父(36)に代わり、8人きょうだいの長兄で11歳から一家の大

黒柱として働くシャヘル・ジアードさん(13)の両手。勤務先の建築事務所ではペンキ塗りも手伝うため、

こびり付いた汚れは洗っても落ちない。1カ月働いても30ヨルダン・ディナール(約4500円)ほどしか

稼げず、一家は家賃未払いでアパートを追い出されたばかりだ。シャヘルさんは「数学が得意だったけど、ヨ

ルダンでは一度も学校に行っていません。もう学ぶことは諦めました。病気の父の力になれてうれしい。妹や

弟のために、もっとたくましい人間になりたい」と話し、疲れた表情を緩ませた。=ヨルダン・アンマンで

◇13歳の大黒柱
病を抱える父(36)に代わり、8人きょうだいの長兄で11歳から一家の大黒柱として働くシャヘル・ジアードさん(13)の両手。勤務先の建築事務所ではペンキ塗りも手伝うため、こびり付いた汚れは洗っても落ちない。1カ月働いても30ヨルダン・ディナール(約4500円)ほどしか稼げず、一家は家賃未払いでアパートを追い出されたばかりだ。シャヘルさんは「数学が得意だったけど、ヨルダンでは一度も学校に行っていません。もう学ぶことは諦めました。病気の父の力になれてうれしい。妹や弟のために、もっとたくましい人間になりたい」と話し、疲れた表情を緩ませた。
=ヨルダン・アンマンで

 内戦の影響でヨルダンに逃れたシリア難民の半数は子どもたち。仕事に追われたり、授業についていけず学校から遠ざかったりするケースが多い。将来シリアに平和が訪れた時、こうした子どもたちが「ロストジェネレーション」(失われた世代)となり、国を立て直す人材が不足する恐れも指摘されている。一方で逆境にも負けず、奮闘する若者たちもいる。<文・津久井達/写真・久保玲>

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シリア内線と難民

 「アラブの春」に触発されて始まった反体制デモをアサド政権が2011年3月に武力弾圧し、内戦に発展した。政権、反体制派、過激派組織「イスラム国」(IS)、クルド人勢力が互いに抗争。アサド政権はロシアやイラン、反体制派は欧米、サウジアラビア、トルコなどからそれぞれ支援を受ける。

 国連などによると、死者が25万人以上、周辺国に逃れた難民は約480万人。トルコが276万人、レバノンが101万人、ヨルダンが65万人を受け入れた。トルコからギリシャ経由で欧州を目指すシリア人も多い。欧州連合(EU)とトルコ政府は2016年3月、欧州への密入国者をトルコに強制送還することで合意している。

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