主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2017年東南アジアの零細金採掘 輝き探す闇 (3)

金の混じった砂に水銀を加えて素手で混ぜるレイナン・ブロソさん(右)=フィリピン・カマリネスノルテ州パラカリエで

金の混じった砂に水銀を加えて素手で混ぜるレイナン・ブロソさん(右)
=フィリピン・カマリネスノルテ州パラカリエで

 浅く大きな木製の皿に、金の混じった砂と水銀を入れ、手でこねる。水を加えて揺らし、砂やごみを捨てる作業を繰り返すと、真ん中にキラキラ光る水銀と金の合金が見えてきた。「これをあぶると、純度の高い金ができるんだ」。レイナン・ブロソさん(15)が指さす。

 浜辺に金混じりの黒色の砂が広がる。フィリピン・カマリネスノルテ州パラカリエ。スペインに植民地化された16世紀より前から金の産地として知られるこの地で今、水銀を使った零細小規模金採掘(ASGM)が貧しい子どもたちに広まっている。

 「学校に行っていないから何もしないと退屈なんだ」。レイナンさんがこぼす。小学校を卒業したが、お金がなくて進学できず、10歳から続けるこの仕事が日課だ。有毒な水銀を素手で触り、合金をあぶる際には蒸気も吸い込むが、「体に悪いなんて初めて聞いた」と驚く。

カマリネスノルテ州パラカリエ

 近くの水際には升のような形をした約100個のコンクリートの構造物が見える。約1メートル四方の升形の下には地下50メートルまで続く穴がある。労働者が地中の砂金や金鉱石を採るために掘った穴だ。1年前、政府の命令を受けた地元自治体により使用が禁止され、現在は使われていない。無許可だったためだ。

 「たくさんの家族がこの穴で生活を支えていたが、皆引っ越してしまった」と地元ASGM組織の幹部の男性は肩を落とす。レイナンさんの父もかつてここで働いていた。今は細々と魚を取り、母や兄がそれを売って生活を支える。

 レイナンさんの稼ぎも貴重な支えだ。日本円で1日500円の収入は、6人家族の食費に消える。幼い妹は心臓に穴が開く先天性の病気を抱え、薬が欠かせない。「これから家族はどうなるんだろう。すごく心配だよ」

 フィリピンのASGMは、大半が無許可で運営されている。政府への申請資料を作る際に高額な費用がかかるなどの理由からだ。ただ、取り締まりを強化すればレイナンさんのような貧しい家庭が困窮することもあり、黙認されているのが現状だ。

 その一方で別の問題も生じている。同州内の別の場所で約20人を雇って金採掘をする男性が明かす。「新たに金鉱石の採れる穴を掘ると、次々に警察官がやってきて賄賂を要求するんだ」。摘発を避けるため、その都度お金を払い、稼ぎの半分は消えるという。

 そんな現実を知らないレイナンさんに「将来の夢は何?」と尋ねてみた。

 「警察官になりたいんだ。困っている人たちを助けるために」【文・畠山哲郎、写真・川平愛】=つづく

 

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