主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2017年東南アジアの零細金採掘 輝き探す闇 (4)

深さ6メートルの穴に入って掘った金鉱石を上からつり上げてもらうクリストファー・ジュド・エドリアさん=フィリピン・カマリネスノルテ州パラカリエで

深さ6メートルの穴に入って掘った金鉱石を上からつり上げてもらう
クリストファー・ジュド・エドリアさん
=フィリピン・カマリネスノルテ州パラカリエで

 マンホールほどの狭い穴の深さは約6メートル。穴の中を、壁の足場を頼りに命綱なしでひょいひょいと下り、金属の棒をハンマーでたたいて突き刺し、金鉱石を採る。この繰り返しが、フィリピンのカマリネスノルテ州パラカリエに住むクリストファー・ジュド・エドリアさん(17)の日常だ。

 底はひどく蒸し暑く、ライトをつけた額やハンマーを持った手はすぐに汗まみれになる。「簡単な仕事じゃない。やめたいと思うけれど、他に仕事がないから続けているんだ」

 死の危険を感じたこともある。5年前、父親の指示で穴に残したシャベルを取りにいった時のこと。穴底からさらに横へ延びた真っ暗な穴の奥へと分け入ると、突然土が崩れてきた。「背中に土がたくさんかぶさり、本当に怖かった」。一時は生き埋めになったが、父がすぐに助けてくれた。ただ、今でも穴に潜る時は怖いと感じる。

 クリストファーさんらが従事する零細小規模金採掘(ASGM)では、水銀使用による健康被害の他にも、金鉱石などを採る作業に危険がつきまとう。多くは地中にあり、深い穴や川の底に潜ることを余儀なくされるからだ。こうした作業は、体が小さく身軽な子どもに任されることも少なくない。

 「フィリピンのASGMのほとんどは政府の許可を得ず違法なので、労働者は社会保険にも入れない。常に危険性の問題がつきまとう」。この問題に詳しい環境NGO「バントクシックス」のノエル・パーシルさん(46)は指摘する。雇用主が治療費を負担することもあるが、あくまで仕事が終わるまでの間。後遺症が残った場合の生活の保障はない。それでも健康であれば誰でもできるため、貧困層の子どもが収入を求めてこの仕事を選びがちだ。

カマリネスノルテ州パラカリエ

 クリストファーさんは午前7時から午後4時まで、ほぼ毎日仕事をする。金の精製で水銀を使うこともある。雇用主からもらう1日の収入は日本円にして約500円。同じような給料の父(49)とともに、妹(12)や弟(9)との4人家族の生活を支える。収入がなく、ツケでコメを買い、支払いが2週間先になることもざら。ヤシの葉で屋根を編んだ平屋の自宅はすきまだらけだ。

 学校に通えず進級が遅れ、現在中学3年生だが、最近もほとんど行っていない。「先生が教えることが分かって、質問に答えられた時が楽しい。できるだけ行きたいけれど、仕事をしないといけない」と肩を落とす。「今は将来について考える暇がない。精いっぱい、とにかくどんな仕事でも頑張って、家族を支えたい」【文・畠山哲郎、写真・川平愛】=つづく

 

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