主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2018年イラクIS後 暴虐の傷痕

「勝利」の陰で

避難先のキャンプでやけどを負った2歳の男の子=イラク・ニナワ県のハゼルM1キャンプで2018年8月15日木葉健二撮影

避難先のキャンプでやけどを負った2歳の男の子
=イラク・ニナワ県のハゼルM1キャンプで
2018年8月15日木葉健二撮影

  気温50度の熱風に包まれたテント群は、砂ぼこりで茶色に染まっていた。約1万人の国内避難民が身を寄せる、イラク北部・ニナワ県のハゼルM1キャンプ。テント内の事故で上半身に大やけどを負った2歳の男児が、私たちのカメラに愛くるしい目を向けた。

 父親は過激派組織「イスラム国」(IS)のトルコ人戦闘員。男児が生まれる前に爆撃で死んだ。母親はIS戦闘員と結婚したことを悔やみ、げっそりやせた。母方の祖父(49)は男児を養子にし、"ISの子"と迫害されないよう、名前も変えた。祖父は言う。「ダーイシュ(ISの別称)が来る前の日々に戻りたい。我々は、人生そのものを破壊されました」

◇ ◇ ◇

 イラク政府は2017年12月、ISとの戦いに「勝利」を宣言した。今もキャンプで「暴虐の傷痕」を抱えながら懸命に生きる子どもたちと、その家族の姿を報告する。【文・千脇康平、写真・木葉健二】

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