主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2013年ブルキナファソ報告 瞳輝くまで (3)

そこに「愛」みつけた

「LOVE」の字が刻まれた指輪をするアミディ・フダ君=ブルキナファソ・ゴーデボー難民キャンプで

「LOVE」の字が刻まれた指輪をするアミディ・フダ君
=ブルキナファソ・ゴーデボー難民キャンプで

 ささくれた少年の左手には、赤地に「LОVE」と入るおもちゃの指輪があった。ブルキナファソのゴーデボー難民キャンプ。年下の同級生に囲まれた小学1年生のアミディ・フダ君(10)にその意味を伝えると、それまでの緊張がほぐれたように言った。「いい意味だね。ますますこの指輪が気に入った」

 マリ難民約1万人が暮らすキャンプには、約680人が通う小中学校がある。ユニセフ(国連児童基金)によると、マリの成人識字率は統計のある国の中で最低の26%(05~10年)。同校の9クラス中三つは、初めて読み書きを学ぶクラスだ。

 フダ君もこのキャンプで、初めて文字に触れた。マリ北部の小さな村に生まれ、物心ついた頃には家畜を追っていた。幼なじみが登校するのを、何度か見たことがある。「うらやましかったけど、ヤギの世話は僕の仕事だったから」と話す。

 そんなフダ君の環境を一変させたのは、マリ北部における政府軍と反政府武装組織の衝突だった。昨年2月、家畜を親戚に預けて国境を越えた。ロバが引く荷車に母親と妹を乗せ、父親とともに丸2日歩いた。水の準備が不十分で、かきむしるほど喉が渇いた。

ゴーデボー難民キャンプ

ゴーデボー難民キャンプ

 国境近くにとどまったのち、今年1月にゴーデボーへ移った。故郷のヤギが盗まれたと聞き、くさくさしていた頃だ。父サファラさん(51)に「学校があるそうだから、通いなさい」と言われ、跳び上がる思いだった。支給された教科書とかばんを抱いて眠った。

 学び始め、フダ君は公用語のフランス語を幾つか覚えた。ノートに「B」と書く。それが「」(赤ちゃん)等の言葉をつくる一字であることを知った。「物や人の名前は全部書き表すことができるんだ」。途方もなく、世界が広がったような気がした。

 「字は面白いね」。2年前に200セーファーフラン(約40円)で買ったという指輪を見てフダ君は続けた。「人に親切にしたり、されたりするとき一緒にあるものが、たったの4文字で書けるんだもの」

 勉強を続け、フダ君は手紙を書こうと思っている。故郷にいる親族や友人にキャンプのことを伝えたい。その手紙には指輪の意味を添えるつもりだ。=つづく【文・平川哲也 写真・大西岳彦】

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