主な事業/国際協力に関する事業(海外難民救援事業【旧「世界子ども救援事業」】)

2022年ウクライナ侵攻 難民救援キャンペーン 

滞在先 見つからない
  
相談所に長い列

親族が借りてくれたワンルームのアパートで過ごすカリナ・チェルカシナさんと子どもたち=2022年3月16日、小出洋平撮影

親族が借りてくれたワンルームのアパートで過ごすカリナ・チェルカシナさんと子どもたち=2022年3月16日、小出洋平撮影

 ポーランド南部の古都クラクフは、ウクライナとの国境から電車で3時間半の交通の要衝だ。クラクフの中央駅は今、難民でごった返し、炊き出しや衣料・日用品の配布といった支援の拠点にもなっている。2022年3月16日昼、駅構内にある難民向けの住宅相談所を訪れると、数十人が列を作っていた。

 ウクライナ東部から娘2人とポーランド入りしたイリナ・ソロマシェンコさん(39)は「利便性が高いクラクフ中心部で滞在先を探しています」と話す。今は民家の一室を無料で間借りしているが、中心部から50キロ離れた郊外にあり、移動が大変だ。新しい物件を探す相談に来たが、この日は条件に合う住まいが見つからず、引き返すしかなかった。紹介所の担当者は「物件は限られており、希望に応えるのがだんだん難しくなっています」と話す。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ロシア軍による2月24日のウクライナ侵攻開始以降、ポーランドには2022年3月18日時点で約200万人の難民が押し寄せている。ポーランドの人口の5%にも相当する膨大な人数だ。国民はおおむね受け入れや支援に前向きで、自宅の一室を無料で貸し出す市民もいるが、安定した滞在先の確保は常に課題だ。

 クラクフ中心部のワンルームのアパートではカリナ・チェルカシナさん(31)が10歳と3歳の息子に本の読み聞かせをしていた。それを見ていたカリナさんの母ラリサ・イエレメンコさん(51)は話した。「避難先がすぐに見つかったのは幸運でした」

 ウクライナ東部ドニプロから、2022年3月12日に3世代4人で逃れてきた。「頻繁に空襲警報が鳴るのに避難できる防空壕(ごう)もありませんでした」。すし詰めの列車やバスで国境を越え、クラクフで暮らす親族が借りてくれたこのアパートにやって来た。部屋は8畳ほどで手狭だが、政府やボランティアの支援で衣料品や薬も手に入った。

 ただ、少しずつ整っていく自分たちの生活と爆撃にさらされる故郷との隔たりは大きくなっていく。「ここでは皆に良くしてもらっています。でも自宅に残る夫らのことがとても心配です」。戦争についてどう思うかと尋ねると、しばらく沈黙した。ほおには涙が伝っていた。「言葉になりません」【クラクフ(ポーランド南部)で平野光芳】=随時掲載

 

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