主な事業/国際協力に関する事業(海外難民救援事業【旧「世界子ども救援事業」】)

2024年海外難民救援キャンペーン
       流民に光りを ウガンダから

「最貧の地」 食糧難直撃

栄養失調と診断され、医療施設に通院する1歳の双子の姉妹、姉のマリアちゃん(右)と妹のアグネスちゃん。未熟児として生まれた2人は現在も病弱で、頻繁に発熱や食欲不振を起こす=ウガンダ・カラモジャ地域で2024年11月4日、滝川大貴撮影

栄養失調と診断され、医療施設に通院する1歳の双子の姉妹、姉のマリアちゃん(右)と妹のアグネスちゃん。未熟児として生まれた2人は現在も病弱で、頻繁に発熱や食欲不振を起こす=ウガンダ・カラモジャ地域で2024年11月4日、滝川大貴撮影

 赤っぽい土が広がる大地には刺すような日差しが照りつけ、土ぼこりが視界をさえぎる。アフリカ・ウガンダ北東端のカラモジャ地域は、特に開発から取り残された同国最貧の地とされる。近年の気候変動による干ばつや、世界的な食料高騰の直撃も受けて数千人が餓死したとみられ、子どもたちを中心に大勢が命の危機にひんしている。

コティド県(ウガンダ)

 カラモジャ西部・コティド県にある医療施設には、栄養失調状態の幼児と親たちが集まっていた。

 「これまでも不作の年はあったが、2、3年前は経験したことのない飢餓に襲われた。肉親を含む大勢の知り合いが亡くなった」。1歳の双子の母ラウラさん(28)は、マリアちゃん、アグネスちゃんの2人を抱き、スティック状チューブに入った栄養食を心配そうな様子で与えていた。

 2人は2023年7月に生まれた。妹のアグネスちゃんは体重約2000グラム、姉マリアちゃんに至っては約1000グラムで呼吸不全を起こし、酸素吸入を受けて一命を取り留めた。ともに未熟児だったのは、ラウラさんが妊娠期に食糧難による栄養不足だったことが原因だと医師は指摘する。姉妹は今も重度の栄養失調と診断され、発熱や食欲不振を繰り返している。

 カラモジャ地域は四国の約1・5倍の広さに約150万人が暮らす。半乾燥地帯で、元々農作物の栽培には厳しい環境にある。特に21~22年は雨量が少なく、広範囲で干ばつに見舞われた。主食になる「ソルガム(モロコシ)」と呼ばれるイネ科穀物などが記録的な不作に陥った。

 現地で農業支援をする日本のNGO「テラ・ルネッサンス」(京都市)によると、22年にコティド県だけで1600人以上が飢えて死亡し、カラモジャ全域では人数はさらに膨らむとみられている。現地でのソルガムの相場は約2・5キログラム当たり1000~2000ウガンダシリング(約40~80円相当)程度だが、5000ウガンダシリング(約200円相当)に跳ね上がった。22年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻に伴う世界的な食料高騰により拍車がかかったという。また、家畜の牛の略奪が横行して軍が鎮圧のため出動するなどし、農作業が思うようにできなかったことも状況を深刻化させた。

 ラウラさんには双子が生まれる前に、3人の子どもがいた。しかし、飢餓で栄養失調状態だった長女ロンゴロクちゃんは感染症を患い、治療のかいなく21年11月、5歳で亡くなった。

 長男ロベンさん(7)は空腹に耐えかねて家を出て行き、近くの街で路上生活を送っているという。ラウラさんは「ロンゴロクは家事や水運びを手伝ってくれた優しい子で、とてもつらい。ロベンは一度家に連れ戻したが、また出て行ってしまった」と悲しむ。

 22年には母親と兄の2人も飢餓のため相次いで亡くした。ラウラさんの夫は双子が生まれる前の23年3月、別の女性の元へと去って行った。身近に頼れる肉親が次々いなくなったことも生活苦に追い打ちをかけた。

 今は4歳の次女と1歳の双子の子ども3人の面倒を一人で見ている。近所の住民の水や燃料用木材の運搬を手伝って収入を得ているが、それもごくわずかだ。「みんな懸命に畑仕事をしているが、どれだけ努力しても雨が降らず土は乾いたままだ。状況は年々悪化していて何も助けにはならない」と訴えた。【コティド県で郡悠介、写真・滝川大貴】

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