主な事業/国際協力に関する事業(海外難民救援事業【旧「世界子ども救援事業」】)

2024年海外難民救援キャンペーン
       流民に光りを ウガンダから 【写真特集】

ウガンダ元子ども兵 取り戻す時間 帰る場所

右目には義眼が埋まり、右ほおには銃創がくっきりと残るビッキーさん。12歳の頃、反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」に誘拐され、戦闘を強いられた。強制結婚により、男児2人を出産し、解放された今も頭痛などの後遺症に悩まされている=ウガンダで2024年11月1日、滝川大貴撮影

 右目には義眼が埋まり、右ほおには銃創がくっきりと残るビッキーさん。12歳の頃、反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」に誘拐され、戦闘を強いられた。強制結婚により、男児2人を出産し、解放された今も頭痛などの後遺症に悩まされている=ウガンダで2024年11月1日、滝川大貴撮影

 その女性の右目には義眼が埋まっていた。左の目元から右ほおにかけて銃創がくっきりと残り、鼻筋の一部は潰れている。笑顔が似合う朗らかな人だが、表情はどこか暗くも見える。

 東アフリカの内陸国・ウガンダでは、1990年ごろから反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」が北部で殺りくや略奪を繰り返した。力が衰えるまで子どもたちを兵力確保などのため誘拐し、その数は推計で3万8000人以上とされる。

 

 北部の都市・グル市には、故郷に帰ってきた元子ども兵の社会復帰を支援する施設がある。この場所を訪れると、男性は木工、女性は洋裁などの訓練に取り組んでいた。彼らの心を癒やそうと、授業には地元民族の伝統ダンスを踊る時間もある。元子ども兵たちは晴天の下、広場で歌いながら打楽器を打ち鳴らして笑顔をはじけさせる。

 施設を運営する日本のNGO「テラ・ルネッサンス」(京都市)の小川真吾さん(49)は「LRAの残党はまだ国外におり、力を取り戻す前に元子ども兵たちの社会復帰を進める必要がある」と支援を訴える。

 ここから南東に車を約6時間走らせ、施設を5年ほど前に卒業した元子ども兵のアドチ・ビッキーさん(38)に話を聞きに行った。グル市出身のビッキーさんは小学生だった12歳の頃、学校の寮で寝ていた未明に他の児童約40人と共にLRAに誘拐された。連行先の拠点では銃の訓練を強いられ、しばらくするとウガンダの集落を襲撃するよう命令された。間もなくして男性兵士と強制的に結婚させられ、男児2人を産んだ。

 誘拐から3年後のこと。ある軍事作戦でウガンダ国軍と戦闘になり、右目を銃で撃ち抜かれた。その場は何とか生き延びたが、LRAの設備では十分な治療を受けられなかった。負傷部位のうみが鼻を通って出てくるほど悪化し、命に関わると判断されてLRAから解放された。「この負傷がなければ故郷に帰ることはできず、逆に今ごろどうなっていたかは分からない」

 帰郷後に手術を受けたが右目の視力は回復せず、そこに義眼を埋め込んだ。現在はウガンダ東部にある、再婚相手の夫の故郷の村で家族と暮らしている。服の仕立てや農業をして生計を立てるが、近くしかよく見えず、農作業中に頭痛が起きるなど、いまだに後遺症に悩まされる日々が続く。

 ビッキーさんは言う。「LRAによって大勢の人々が命を失い、私の内には強い痛みが今も残る。こうした悲劇を繰り返さないためにも、社会が平和であることは本当に大切だ」<写真・滝川大貴 文・郡悠介>

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