課長以上の役職につく女性の割合は25年4月、17.8%に達しました。時間や場所にとらわれない柔軟な働き方も推進し、支局次長や販売総本部など、男性の多かったポジションに女性管理職が配置されるようになっています。
新入社員に占める男女比率がほぼ半々に達しているため、女性社員の比率は年々上昇し、25年4月に初めて、30%に達しました。現在の課題は、男女比率のバランスがとれていない部署や部局があることです。働き方改革を進め、部署内の多様性を促進します。
インパクトのある高い目標設定と取得呼びかけにより、年休を取ろうという雰囲気が醸成されつつあります。一方で、一部の中高年層は年休取得にためらいがあるようで、全体的な伸びは抑制的でした。
新たなアイデア創出を促すため人事交流を活発化させ、年功にとらわれない人材登用を進める方針ですが、伸び悩んでいます。若手の育成、幹部の意識改革がカギです。
予想を超えた高い伸びとなりました。若い世代の意識変革は想像以上に進んでおり、管理職側にも男性育休への理解が深く浸透し始めています。取得者が増えるとともに、職場の理解も進むようになりました。
コンテンツ多様化のため、デジタル記事の女性読者の比率増を目指しています。子どもの教育、選択的夫婦別姓のゆくえ…など女性の興味関心とリンクする話題を出稿しましたが、数値の変化にはつながっていません。今後もさまざまな試みを続けます。
社会的な課題をどうとらえるか識者が語る「論点」で、取材対象者の男女均等化を目指しています。女性の有識者を積極的に開拓しテーマの多様性をはかったところ、比率は順調に上がっています。
ほぼ横ばいでした。社員の定着には、働き方改革とやりがいをもてるキャリア構築が不可欠です。年休取得を促進し、長期のキャリア形成を支援します。
▼社内コミュニケーション支援制度
部署横断で開く勉強会やクラブ活動に活動補助費を支給。
従業員の連帯と社会架橋につながる活動を促進する
▼キャリアデザイン研修
中堅女性社員を対象に実施。外部講師の講演やワークショップで過去をふり返り、中長期のキャリア構築を支援
▼キャリアサポーター制度
中堅社員が後輩のサポーターとなり、仕事やワークライフバランスの相談にのる
▼副部長の業務削減
業務削減案を各部局から募り、順次実施
▼従業員満足度調査
多様性・公平性・包摂性の進展をめざし23年度に続き実施
OECD東京センター元所長、村上由美子氏のコメント
村上由美子(むらかみ・ゆみこ)さん
ベンチャーキャピタル「MPower Partners」ゼネラルパートナー、毎日ユニバーサル委員会委員
毎日新聞社が「DEI宣言」で数値目標を明確に掲げたことは高く評価できます。定性的な理念にとどまらず、具体的な指標を設定することで、毎日新聞社としてDEI推進に明確なコミットメントを示しているということです。また、年度ごとに数値目標の進捗をチェックしていることも評価できます。進捗管理は、継続的な取り組み推進の基盤になるためです。
DEI宣言の1年目にあたる2024年度の実績のなかで、男性育休取得率が飛躍的に伸びていることは、DEI推進のモメンタムを象徴する成果と言えます。男性が育休を取得することが会社のノーム(一般的な規範)になり始めていることを示しているようです。男性育休取得率や有給休暇取得率は、特に若い世代にとっては「働きやすさ」を測る重要な指標の一つ。このモメンタムを維持すれば、男性育休取得率100%の達成時期を2030年から前倒しできるのではないでしょうか。
数値目標のうち、有識者が社会的課題を論じるオピニオン面の連載「論点」の女性有識者比率も、想定以上のペースで改善しています。実績を踏まえて目標水準の引き上げや達成時期の前倒しをすることで、積極的な改革・改善を進めることができるでしょう。
メディア業界で多様な視点を取り入れる動きが進む中、「論点」の女性有識者比率の向上は、経営戦略としても重要です。新しい世代の有識者を積極的に発掘し、時代の変化を先取りすることは、メディアの競争優位性にもつながります。
また、毎日新聞デジタルの女性ユーザー比率の向上も、新たなユーザー層を開拓する施策として重要です。女性の関心や価値観に応えるコンテンツを生み出すためには、プロデュース側の多様性も不可欠です。女性の視点、若者の視点でなければ気づきにくいテーマを継続的に発信することができれば、ユーザーの共感と支持が広がるでしょう。
新聞業界がビジネスモデルの転換を迫られる中、DEI推進はイノベーションと競争力強化を実現するための鍵になります。同質性の高い組織にイノベーションは生まれません。組織の多様化を進めるには、女性のみならず、若い世代を積極的に役職者に登用することも必要です。経営層のリーダーシップのもと、DEI推進を継続して、メディアとしての価値と競争力をさらに高めてほしいです。