主な事業/国際協力に関する事業(海外難民救援事業【旧「世界子ども救援事業」】)

2019年ナイジェリア報告 終わらぬ恐怖 (7)

新たな命 生きる力
  
避難民キャンプに産声

国内避難民キャンプの医療施設で、約2時間前に生まれた男の子を抱く母親のアイシャ・ヤハナ・スレマンさん=ナイジェリア・ボルノ州マイドゥグリで2019年9月20日

国内避難民キャンプの医療施設で、約2時間前に生まれた
男の子を抱く母親のアイシャ・ヤハナ・スレマンさん
=ナイジェリア・ボルノ州マイドゥグリで2019年9月20日

 「元気です。とても大きな赤ちゃんですよ」。ナイジェリア北東部ボルノ州の州都マイドゥグリにある国内避難民キャンプで9月20日午前7時35分、男の子が元気のいい産声を上げた。新しい命の誕生は、イスラム過激派の武装勢力「ボコ・ハラム」の襲撃で故郷を追われ、恐怖と不安に押しつぶされそうな避難民の心に、生きる勇気を与えている。

 母親はアイシャ・ヤハナ・スレマンさん(35)。身長52センチ、体重4900グラムの男児を無事に出産した。腕の中で眠る我が子をいとおしそうに見つめながら「こんなに幸せなことはない」と喜びを語った。8人目の子どもで、男の子は2人目。「男の子が欲しかったところだった。うれしくてすぐに夫に電話した」。名前はこれから決める。

 このキャンプには約2万2000人が生活し、ほぼ毎日、赤ちゃんが生まれている。スレマンさんら家族は今年1月、ボコ・ハラムの襲撃を受け、ボルノ州北東部の町から逃れてきた。キャンプでの生活には慣れたといい、「今は何の問題もなく生活している」と話す。

 一方、国連によると、ナイジェリアの5歳未満死亡の割合は1000人あたり120人で、世界で2番目に悪い。背景には、治安と貧困の問題がある。キャンプで生まれた命を守り、育てること。これこそが、ナイジェリアに平和を築くスタートとなるはずだ。【文・岡村崇、写真・山崎一輝】

 

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