主な事業/国際協力に関する事業(海外難民救援事業【旧「世界子ども救援事業」】)

2022年ウクライナ侵攻 難民救援キャンペーン

児童受け入れ 言葉の壁
  
ポーランドの小学校

ウクライナから避難後、ポーランドの公立小学校に通うマリアナ・スリブニツカさん(中央)=ポーランド南東部ジェシュフで2022年3月17日、小出洋平撮影

ウクライナから避難後、ポーランドの公立小学校に通うマリアナ・スリブニツカさん(中央)=ポーランド南東部ジェシュフで2022年3月17日、小出洋平撮影

 20人ほどの児童のうち、7人が手を挙げた。2022年3月17日、取材に訪れたポーランド南東部ジェシュフの公立ジェシュフ第16小学校で、記者が「最近ウクライナから来た子は手を挙げてください」と頼んだ時のことだ。見学したのは5年生の2時間目のポーランド語(国語)。教室では女性教諭が黒板を使って授業をしていた。

 前から3列目に座っていたマリアナ・スリブニツカさん(11)も首都キエフから逃れ、3年生の妹クリスティナさん(8)と9日から通い始めたばかり。近所の高層アパートで母親らと仮住まいし、毎朝姉妹で20分ほどかけて徒歩で登校する。「好きな授業は体育。言葉が分からなくても楽しめるから」。小学校の玄関にはカラフルなリュックサックが30個ほど山積みになっていた。ウクライナから満足な荷物も持てずに避難してきた子供に使ってもらおうと、保護者らが用意した無料の通学用かばんだ。

 国連児童基金(ユニセフ)によると、約750万人のウクライナの子供のうち約430万人が今回のロシアによるウクライナ侵攻で自宅を追われ、うち180万人以上は国外に避難した。戦闘の長期化が懸念される中、子供たちの「学ぶ権利」をどう保障するかも大きな課題だ。第16小でも2022年2月下旬以降、難民の子が続々と入学しており、全校児童約570人の1割を占めるまでになった。

 「一番の問題はコミュニケーションです」と話すのはドロタ・ジョンサ校長だ。ウクライナ語とポーランド語は同じスラブ系の言葉で、通訳なしでも意思疎通できることはある。ただウクライナから来たばかりの子供がポーランド語の授業を即座に理解するのは困難。学校側はウクライナ人教員を採用して、一部学年では難民専用クラスを設ける方針だ。

 ポーランドでは近年、ウクライナから仕事を求めて移り住む人が増えており、第16小にも以前から10人ほどのウクライナ人児童がいた。ある教諭は「ウクライナ人の友達や知り合いがいない人はいなかった。それが今回、ロシアに侵攻されたウクライナへの共感、支援につながっている」と話す。ウクライナ人の子供たちは支援すればポーランド語もうまく話せるようになってきた。ただ、これほど多数の難民の子を急激に受け入れるのは経験がなく、対応は手探り状態でもある。それでもジョンサ校長は話す。「困難な状況の子供たちを助けたいです。協力したり、お互いの文化を尊重したりする。在校生もその大切さを学べます」【ジェシュフ(ポーランド南東部)で平野光芳】

 

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