2024年海外難民救援キャンペーン
流民に光りを ウガンダから【特集】

WFPウガンダ事務所代表代理のマーカス・プライアー氏=カンパラで2024年10月16日、滝川大貴撮影
飢餓と貧困の撲滅に取り組む国連唯一の食料支援機関「世界食糧計画(WFP)」ウガンダ事務所のマーカス・プライアー代表代理(54)が現地でインタビューに応じた。ウガンダに集まる難民の現状について、「栄養失調の深刻化を懸念している」と強い危機感を示し、「日々飢えに苦しんでいる人がいることを知ってほしい」と日本を含めた国際社会による支援強化の必要性を訴えた。【聞き手・郡悠介】
ウガンダはアフリカで最も多くの難民を受け入れている国だが、そのことはあまり知られていない。難民が集まる理由は、ウガンダ政府が難民受け入れに寛容な「オープンドアポリシー(門戸開放政策)」を掲げているためだ。しかし、近年は政策を維持する上で、政府や国連、NGOが難しい対応を迫られている。
ウガンダに身を寄せる難民はこの10年間で16万人から、10倍以上の180万人近くに増えた。周辺の南スーダンやコンゴ民主共和国などから、少なくとも年間10万人が新たにウガンダに逃れてきている。
レセプションセンターで、食料配布に集まる人たち。配布が約1時間半遅れとなったこの日、「ノーフード」の絶叫や、受け取りの順番争いで騒然となっていた=2024年10月23日、滝川大貴撮影
最大の課題は、ウガンダへの人道支援の資金が大幅に減少していることだ。私たち(WFP)は各国の難民たちに食料支援を行っている。ウガンダについては数年前まで十分に配給できていたが、資金不足でこれまでで最も低い水準に減らさざるを得なくなっている。
レセプションセンターで次女メイムナちゃん(1)=右=に食事を与えるスーダン難民のライアンさん(31)。戦闘が続くスーダンの首都ハルツームを逃れ、平和な場所を求めてウガンダにたどり着いて数週間がたった。政府軍の兵士だった夫のジェラルさん(33)は内戦の勃発直後にRSFに拘束されたまま行方が分かっておらず、ライアンさんはその身を案じている=2024年11月13日、滝川大貴撮影
収入を得る機会が限られる難民にとっては、WFPの支援が主要な食料源となっている。しかし、ウガンダの難民全体の14%に当たる最も苦しんでいる層に対してでさえ、本来の量の6割しか配給できていない。その層から外れた約150万人は配給を3割だけか、全く受けることができていない。
背景には、国際的な支援がウクライナやパレスチナ自治区ガザ地区に集中していることが挙げられる。世界で最も深刻な危機に関心が向くのは自然なことだ。しかし、ここウガンダにも日々飢えに苦しんでいる人たちがいることを知ってほしい。ウガンダへの難民を支援するには年間1億3400万米ドル(約210億円)が必要で、国際社会のさらなる支援が欠かせない。
特に2023年4月から内戦が続くスーダンからは6万人以上がウガンダに逃れてきた。この人道危機で食料の需要が飛躍的に増え、栄養失調の深刻化を懸念している。
私は若い頃に日本で暮らしていたことがあり、温かく接してもらった思い出は今でも忘れられない。日本人の温かさは世界で苦しむ人々を支えてきた姿勢にも表れている。これまでの皆さんの支援に感謝するとともに、この関係がこれからも続くとうれしい。
◇マーカス・プライアー(Marcus Prior)氏
1970年、英国生まれ。英BBC放送などを経て、2004年から世界食糧計画(WFP)に勤務。ケニア、西アフリカのセネガル、タイに広報官として駐在。22年からウガンダ事務所副代表を務め、25年1月から現職。