主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2019年ナイジェリア報告 終わらぬ恐怖 (2)

少年兵 解放後も地獄
  
「憎き存在」居場所・職なく

ボコ・ハラムの「少年兵」として戦闘に参加させられていたイブラヒム・クンドゥリさん(18)。「今はとにかく仕事がほしい」と話した=ナイジェリア・ボルノ州マイドゥグリで2019年9月20日

ボコ・ハラムの「少年兵」として戦闘に参加させられていた
イブラヒム・クンドゥリさん(18)。「今はとにかく仕事がほしい」と話した
=ナイジェリア・ボルノ州マイドゥグリで2019年9月20日

 子どもたちを訓練し、襲撃に送り出す「少年兵」は、最悪の児童労働の一つだ。ナイジェリア、カメルーン、チャドの国境地帯を中心に活動するイスラム過激派の武装勢力「ボコ・ハラム」は、昨年末時点で約300人(国連)を「徴兵」している。少年たちは解放後にまともな生活を望むが、仕事に就けない。ある元少年兵は「ボコ・ハラムに戻りたい」とさえ語る。社会からの「憎き存在」とのスティグマ(負のレッテル)にも追い詰められた少年たちは今、「地獄の選択」を迫られている。

 イブラヒム・クンドゥリさん(18)は昨年、ボルノ州の州都マイドゥグリに近いボコ・ハラムの駐留施設にいたところを、ナイジェリア政府軍に救出された。現在はマイドゥグリにある国内避難民キャンプで1人で生活する。

 2014年、ナイジェリア政府軍とボコ・ハラムの戦闘に巻き込まれ、両親を失った。「生きていくためだった」。身寄りがなく、行く当てのなかった兄妹ら計6人全員で、ボルノ州南部のボコ・ハラムの拠点に足を運んだ。

 約3カ月間にわたり、洗脳教育を受け、ボコ・ハラムの戦闘員として信頼できると判断された段階でライフルを渡された。戸惑う少年たちもいたが、クンドゥリさんに迷いはなかった。15年から約3年間、ボコ・ハラムの戦闘員として数多くの戦場に送られた。「戦闘は仕事。参加しているときは充実していた」。無表情で、淡々と語る。

 今はボコ・ハラムの支配からは逃れたが、周囲の目は厳しい。「みんな僕を好きになってくれない。憎きボコ・ハラムの少年兵だったことを知ってるから」。記者と視線をそらしたまま、口調も投げやりだ。

 7歳上の兄は、今もボコ・ハラムの戦闘員。その兄から、電話で戻ってくるよう誘われている。「チャンスがあればボコ・ハラムに戻りたい。今はチャンスがないだけ」と何度も繰り返した。「充実していた」あの頃に戻りたい衝動に押し切られそうになっている。

 本心では、まともな人生を歩みたい。キャンプではさまざまな団体の支援を受けて生活するが、教育を受けていないため、職が見つからない。「何でもいいから仕事がほしい。仕事があれば、もちろん、少年兵に戻りたいという気持ちはなくなるのに……」。諦めたような表情に、深い悲しみがにじんでいた。【文・岡村崇、写真・山崎一輝】

 

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