主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2019年ナイジェリア報告 終わらぬ恐怖 (3)

監視の目、24時間鋭く
  
軍と連携 ボランティア自警団

マイドゥグリ南西部にある市街地への入り口を見張る自警団(CJTF)のメンバーのサニ・アブバカルさん(手前)たち=ナイジェリア・ボルノ州マイドゥグリで

マイドゥグリ南西部にある市街地への入り口を見張る
自警団(CJTF)のメンバーのサニ・アブバカルさん(手前)たち
=ナイジェリア・ボルノ州マイドゥグリで

 イスラム過激派の武装勢力「ボコ・ハラム」の襲撃は、ナイジェリア北東部のボルノ州の住民を恐怖の底に突き落とした。危機的状況下で地域を守ってきたのは、ボランティアの自警団だ。2013年の設立当初は武器が足りず、多くの犠牲者を出した。現在はナイジェリア軍の支援で充実させたが、ボコ・ハラム壊滅の日まで緊張が続く。

 遠くまで広がる平原は緑が豊かで、その合間に赤茶けた土が見える。「動くものがあれば、注意して観察しろ」。市街地の入り口に建てられた2メートル四方ほどの簡素な小屋では、ライフルを手にした若い男たちが24時間態勢で監視の目を光らせていた。

 自警団はCJTF(シビリアン・ジョイント・タスク・フォースの頭文字)と呼ばれる。基本的にボランティアで、24時間態勢で活動し、ナイジェリア軍がカバーしきれない部分を補ってきた。

 ボルノ州の州都マイドゥグリ市内の南西部で警備にあたるCJTFのサニ・アブバカルさん(40)は、13年にメンバーとなり、ナイジェリア軍のボコ・ハラム掃討の補助的役割を担ってきた。「設立当時は武器といえば木の棒と木の弓。当然、ボコ・ハラムに全く太刀打ちできなかった。多くの住民や仲間が犠牲になった」と唇をかむ。

 銃の扱い方などの訓練を受けた後、20人態勢で活動。ボコ・ハラムの襲撃にはナイジェリア軍と連携して対応し、銃撃戦になることもある。「メンバーも増え、ナイジェリア軍から武器が支給され、ここ数年でかなり強化された。今はボコ・ハラムに十分対抗できる」と胸を張る。

 現在、ボコ・ハラムは主な活動地を隣国カメルーンなどに移し、ナイジェリア国内では比較的安定した地域も出てきた。メンバーの高齢化も課題となっている。国連開発計画(UNDP)はCJTFの再編と退団するメンバーの社会復帰に向けたワークショップを開催している。約2万4000人を統括してきたCJTFの調整官、カッリ・アバアジさん(54)は「地域の安全のために全力で活動してきたのだから、職業訓練などメンバーが社会復帰できるような支援態勢を構築してもらいたい」と訴える。

 ボコ・ハラムの脅威は以前よりは収まったが、襲撃は散発している。「CJTFが役目を終えるのが理想だが、当分の間は必要だろう」とアバアジさん。住民が武器を持たずに生活できる日が訪れるのは、いつになるのか。【文・岡村崇、写真・山崎一輝】

 

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