主な事業/国際協力に関する事業(世界子ども救援事業)

2019年ナイジェリア報告 終わらぬ恐怖 (4)

地獄がよみがえる
  
襲撃5年 再建なお不安

ボコ・ハラムにヌグウォム村が襲撃された時のことを語る村長のアバ・アリさん=ナイジェリア・ボルノ州で2019年9月24日

ボコ・ハラムにヌグウォム村が襲撃された時のことを語る
村長のアバ・アリさん=ナイジェリア・ボルノ州で2019年9月24日

 ナイジェリア北東部ボルノ州中部のヌグウォム村は2014年、イスラム過激派の武装勢力「ボコ・ハラム」の襲撃を受け、壊滅的な被害を受けた。それから3年後、国連の支援で住民の帰還が始まり、学校も再建された。しかし、資金不足で医薬品が足りないほか、治安が回復し切れていないため、医師たちは都市部からおびえながら通っている。住民らは「また襲われるのでは……」と不安を抱えている。

 2014年8月のある夜、ボコ・ハラムの襲撃を受けた。住民によると、暗くてはっきりした数はわからなかったが、多くの戦闘員がいたという。住宅に火を放たれ、35人が撃ち殺された。約5000人の住民の大半が村を離れた。高齢者たちは村に残ったが、翌月、再び襲撃され、さらに2人の命が奪われた。ほとんどの建物が跡形もなくなっていた。村を離れた住民たちは国内避難民となり、ボルノ州の州都マイドゥグリなどのキャンプで命をつないだ。農業をしていた住民が多く、収入を失った。

 17年以降、国連開発計画(UNDP)の支援で、300世帯分の住宅や学校、医療施設を建設した。同年10月以降、住民らの帰還が始まり、元の住民の4割にあたる約2000人が戻った。アバ・アリ村長は「生まれ育った村を離れるのはつらかった。この村で生活していた住人や家族と一緒に暮らせることがありがたい」と喜ぶ。

 しかし、課題は多い。村の近くにあるナイジェリア軍の駐留所は規模が小さく、ボコ・ハラムが大挙して押し寄せてきた場合に対応できない不安がある。医療施設では薬が不足し、1日に訪れる患者30~40人のうち7割に処方できていない。医師らはマイドゥグリからの約30キロの道のりを、襲撃におびえながら通っている。

 2019年2月、近くの軍の駐留所などが襲われた。5年前の地獄の光景がよみがえる。住民たちは「自分たちで身を守るのは難しい。警備を強化してほしい」と声を上げるが、政府が対応を強化する気配はない。「安全がきちんと保証され、一日でも早く、残りの住民に戻って来てほしい」。そう語るアリ村長の表情には、苦渋の色がにじむ。武器とは無縁だった農村に平和が訪れるのは、いつになるのか。【文・岡村崇、写真・山崎一輝】

 

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