主な事業/国際協力に関する事業(海外難民救援事業【旧「世界子ども救援事業」】)

2019年ナイジェリア報告 終わらぬ恐怖 (6)

父と子 決死の再会
  
子ども1000人超が拉致被害

再会した時の話をしながら笑顔を見せる国内避難民のシェティマ・アリサウラさん(左)と息子のアクラ・シェティマさん=ナイジェリア・ボルノ州マイドゥグリで2019年9月26日

再会した時の話をしながら笑顔を見せる国内避難民の
シェティマ・アリサウラさん(左)と息子のアクラ・シェティマさん
=ナイジェリア・ボルノ州マイドゥグリで2019年9月26日

 「もう二度と離さない」。ぎゅっと抱き寄せる父に、14歳の息子は照れ笑いした。イスラム過激派の武装勢力「ボコ・ハラム」に拉致されていた少年。1年前、赤十字国際委員会(ICRC)の支援で、父子は3年ぶりに再会を果たした。「もう死んだのかもしれない、と思うこともあった」。絶望の淵を見た父の言葉は、ボコ・ハラムの罪の深さを感じさせた。

 シェティマ・アリサウラさん(45)とアクラ・シェティマさん(14)父子は現在、ナイジェリア北東部ボルノ州の州都マイドゥグリの国内避難民キャンプで生活している。2015年1月、同州東部の町で、自宅がボコ・ハラムに襲われ、当時10歳だったアクラさんが連れ去られた。その後、ボコ・ハラムの拠点で子どもたち15人と住宅の一室に入れられた。「ボコ・ハラムはたくさんの人を殺してきた。怖くてたまらなかった」とアクラさん。1~2年後、監視の目がゆるんだ早朝に1人で逃げ出し、ナイジェリア軍の関連施設に駆け込んだ。

 脱出から4カ月後、ICRCのスタッフがキャンプを訪れ、保護された子どもたちの顔写真を見せたところ、その中の1枚を見たアリサウラさんが声を上げた。「アクラだ。間違いない」。さらに数カ月後、ICRCのスタッフに連れられ、キャンプで暮らす家族の元に帰って来た。アリサウラさんは「最高の瞬間だった」と振り返る。

 ICRCは再会支援プログラムをチャド湖周辺4カ国(ナイジェリア、ニジェール、カメルーン、チャド)で展開している。ナイジェリアでは13年に始まり、これまでに約400人が再会にこぎつけた。ただ、行方不明として依頼を受けているのは2万2000人で、再会できたのはごく一部だ。ICRCの担当者は「ナイジェリア北東部は広く、すべての案件を解決するにはまだまだ時間を要する」としている。

 14年4月に200人以上の少女を拉致した事件で世界中に悪名をとどろかせたボコ・ハラム。13年以降の約5年間に1000人以上の子どもたちを連れ去ったとされる。それだけでなく、襲撃で多数の家族が離散し、大人を含む安否不明者の全容は把握できていない。あまりに多くの親子が再会を信じ、今も恐怖と向き合っている。【文・岡村崇、写真・山崎一輝】

 

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