第38回織田作之助賞に岸政彦さんの「リリアン」


 第38回織田作之助賞の選考会が17日、大阪市北区の毎日新聞大阪本社で開かれ、岸政彦さん(54)の「リリアン」(新潮社)が選ばれた。大阪の下町でひっそりと生きるジャズベーシストの男性と、年上の女性の物語。音楽を横軸に、器用に生きられない男女の本音や大阪の街の変化が、会話文を中心にした構成でつづられた。

 記者会見で、選考委員で作家のいしいしんじさんは授賞理由について「手だれの文体で、曲のコードが思い浮かばなくても、美しい会話によって、読者の中に素晴らしい合奏が響いてくる」と話した。

 岸さんは社会学者として「普通の人の生活史」の聞き取りを続けてきた。立命館大大学院教授。2016年に初の小説「ビニール傘」を発表。以後、作家活動も続けている。受賞の知らせに「大阪は僕にとって非常に大事な街で、自分のふるさとやと思っています。大阪にちなんだ賞をいただけたのはこれ以上ない喜びです」などとコメントした。

 同賞は織田作之助賞実行委員会(大阪市・大阪文学振興会・関西大学・パソナグループ・毎日新聞社)主催、一心寺協賛。受賞作は新鋭・気鋭の作家の小説(単行本)を対象にした候補5作品から選ばれた。贈呈式は来年3月に催される予定。【清水有香、山脇新一郎】

2021年度織田作之助賞に決まった岸政彦さん
2021年度織田作之助賞に決まった岸政彦さん

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