第39回織田作之助賞に滝口悠生さんの「水平線」


 第39回織田作之助賞の選考会が21日、大阪市北区の毎日新聞大阪本社で開かれ、滝口悠生(ゆうしょう)さん(40)の「水平線」(新潮社)が選ばれた。太平洋戦争末期に激戦地となった硫黄島をめぐる物語。島民の子孫にあたる兄妹を軸に、現代を生きる2人と、島で命を奪われた者や本土に疎開した者たちとの声が時空を超えて響き合う。

 記者会見で、選考委員の作家、高村薫さんは「作者や登場人物の意識が揺らぎ、夢とうつつが重なり合って、70年前の死者と語り合うような世界が生まれた。作者独特の緩さの中で、戦争も現代の感覚で捉えられている」と評した。

 滝口さんは2011年、「楽器」で新潮新人賞を受賞しデビューした。16年に「死んでいない者」で芥川賞。母方の祖父母が硫黄島出身で、「水平線」での受賞について「いつか書けたらと思っていた題材の作品。まずは書き終えてよかったという思いでしたが、こうして賞を頂けたことがご褒美のようでうれしい」と喜んだ。

 織田作之助賞は実行委員会(大阪市、大阪文学振興会、関西大学、パソナグループ、毎日新聞社)主催、一心寺協賛。受賞作は新鋭・気鋭の作家の小説(単行本)を対象にした候補5作品から選ばれた。贈呈式は23年3月、大阪市内で開催される予定。【清水有香】

2022年度織田作之助賞に決まった滝口悠生さん
2022年度織田作之助賞に決まった滝口悠生さん

文化のイベント一覧へ

文化