第40回織田作之助賞に乗代雄介さんの「それは誠」


  第40回織田作之助賞の選考会が12月21日、大阪市北区の毎日新聞大阪本社で開かれ、乗代(のりしろ)雄介さん(37)の「それは誠」(文藝春秋)が選ばれた。東京を訪れた修学旅行生の物語。主人公の男子高校生は自由行動の日、生き別れたおじに会いにいく計画を立てる。旅を通して、たまたま同じ班になったクラスメートたちと心を通わせる様子が描かれる。

  記者会見で、選考委員の作家、古川日出男さんは「複雑な家庭で育った主人公が決死の行動をし、同じように幼い男女が『魂のドミノ倒し』のように彼の仲間になっていく。彼らの冒険は小さいけれど切実さがある。ウエルメードな(筋書きがよい)物語に見えるが、苦闘して書いている乗代さんの姿勢にも感動した」と評した。

  乗代さんは2015年、「十七八より」で群像新人文学賞を受賞しデビュー。18年「本物の読書家」で野間文芸新人賞、21年「旅する練習」で三島由紀夫賞を受けた。今回の受賞の知らせに「小説を書く時はいつも織田作之助が書いていた『人間の可能性』という言葉を思い出します。ある土地の中で『人間の可能性』を書こうと格闘した作家の名を冠する賞を頂き、光栄に思います」とコメントした。

  織田作之助賞実行委員会(大阪市、大阪文学振興会、関西大学、毎日新聞社)が主催。受賞作は新鋭・気鋭の作家の小説(単行本)を対象にした候補5作品から選ばれた。贈呈式は2024年3月7日、大阪市中央区の綿業会館で開かれる。【清水有香】

第40回織田作之助賞に決まった乗代雄介さん
第40回織田作之助賞に決まった乗代雄介さん

 

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