第42回織田作之助賞に島口大樹さんの「ソロ・エコー」と谷崎由依さんの「百日と無限の夜」


第42回織田作之助賞に決まった島口大樹さん(嶋田礼奈さん撮影)、谷崎由依さん(神ノ川智早さん撮影)(右)

 

 第42回織田作之助賞の選考会が23日、大阪市北区の毎日新聞大阪本社で開かれ、島口大樹さん(27)の「ソロ・エコー」(講談社)と、谷崎由依さん(47)の「百日と無限の夜」(集英社)の2作が選ばれた。

 島口作品は失踪した父の残した写真を頼りに、横浜の街を歩く青年の物語。街の歴史と個人の生が、記憶の中で響き合う。谷崎作品は、切迫早産で入院を余儀なくされた小説家の「わたし」が、夢うつつの中で過去と現在を行き来しながら、さまざまな声と出合う。

 受賞の知らせに、島口さんは「横浜の地で出会った人たちに感謝を伝えたい」、谷崎さんは「評価していただけた懐の広さに感謝している」とコメントした。

 記者会見で、選考委員の古川日出男さんは島口作品について「今ここにない時間、人、空間を目の前に立ち上がらせた。小さな祈りのような小説」、いしいしんじさんは谷崎作品について「全員が圧倒された。命がけの経験をした谷崎さんは遠くまで旅をして帰ってきた。小説にしか表現できない作品」と述べた。

 島口さんは2021年、「鳥がぼくらは祈り、」で群像新人文学賞を受賞しデビュー。同作が野間文芸新人賞候補となり、22年には第2作「オン・ザ・プラネット」が芥川賞候補となった。

 谷崎さんは、07年に「舞い落ちる村」で文学界新人賞を受賞しデビュー。19年に「鏡のなかのアジア」で、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受けている。

 主催は織田作之助賞実行委員会(大阪市、大阪文学振興会、関西大学、毎日新聞社)、協賛は一心寺、オダサク俱楽部、丸善雄松堂。受賞作は新鋭・気鋭の作家の小説(単行本)を対象にした候補5作品から選ばれた。贈呈式は来年3月4日、大阪市中央区の綿業会館で開かれる。【関雄輔、棚部秀行】

文化のイベント一覧へ

文化