大阪・関西万博で「白と黒の伝統 書と囲碁の世界」を6月6~8日に開催
◇育む文化、輝く未来
4月13日に開幕した2025年大阪・関西万博。165の国や地域、国際機関が参加するほか、国内の著名人や企業も出展する。その中で、毎日新聞社は6月6~8日に「白と黒の伝統~書と囲碁の世界~」をEXPOメッセ「WASSE」で開く。
◆書と囲碁 毎日新聞 EXPOメッセ「WASSE」
◇白と黒 伝統、多彩に発展
1000年以上前に大陸から伝来し、日本で独自の発展を遂げた「書」と「囲碁」。「白と黒の伝統~書と囲碁の世界~」は世界で親しまれる二つの文化を紹介する。
会場に踏み込んだ瞬間、息をのむような光景が広がる。101歳の書家、中野北溟(ほくめい)さんの珠玉のような作品。草野心平の詩を題材にした石飛博光(はっこう)さんの「富士山」は幅16メートル超のまさに大作だ。日本最高峰の作家が協演するこのエリアでは、ほかに仲川恭司さん、赤平泰処さん、薄田東仙さん、遠藤彊(きょう)さん、下谷洋子さん、中原志軒さん、永守蒼穹(そうきゅう)さん、北野攝山(せつざん)さんらの作品が集まる。
さらに毎日書道展の代表的書家による大型作品と色紙を展示。現代日本の書が磨き上げてきた「漢字」「かな」「近代詩文書」「大字書」「篆刻(てんこく)」「刻字」「前衛書」という多彩な表現の形を存分に楽しめるはずだ。
会場奥には大型スクリーンを備えた広場がある。書家による「席上揮毫(きごう)」を連日行い、書作品が出来上がるまでの過程を紹介。国際高校生選抜書展(書の甲子園)で活躍する高校生による「書のパフォーマンス」も6月7、8日に実施する。
囲碁では「第80期本因坊決定戦五番勝負第3局」の大盤解説会と、「万博こども交流囲碁フェスティバル」を開催する。
同6日は「ホテルアゴーラ大阪守口」(大阪府守口市)で本因坊戦第3局が予定されており、一力遼本因坊と芝野虎丸十段が対局する。万博会場に対局映像や盤面図を投影して、プロ棋士が解説する。同7、8日の「囲碁フェスティバル」には幼稚園児から小学生まで100人以上が集合。3歳児からルールを理解できるとされる囲碁の魅力を、来場者に体感してもらう。【濱弘明】
招待作品名票
毎日書道会最高顧問
中野 北溟 NAKANO Hokumei
【タイトル】はれやか
人々の「よろこび」は私のそれに共通し、万博においても同様である。この度の万博に世界中の人たちがきっと足を運ぶと思うのである。それだけ大きな力を持つ催しなのだ。そう思っている私である。脚を運ぶに違いない。
万博に参加して現場に、と思うのだが、今の私の日常の行動は自分の住む自分の室内でも車椅子のそれなのであり、万博会場には不可能であることは言うまでもない。残念。
万博に関わる「よろこび」一杯の私は、
よろこびが「はれやか」の語句となって
大きな世界の「心」が筆に生かされたのだ。
「書は心」である。
いま、私の心は「はれやか」なり。
1923年、北海道・焼尻島生まれ、101歳。2000年に毎日芸術賞。北の大地に根ざした詩情あふれる世界を描く。
毎日書道会常任顧問
石飛 博光 ISHITOBI Hakko
【タイトル】「富士山」 草野心平の詩「富士山 日本の未来におくる 作品第参」
2011年3月11日の東日本大震災から数週間、新幹線の窓から見た富士山の凜とした厳しい佇まいに心打たれ、無我夢中で揮毫した。富士山、まさに「こころの山」だ。
1941年北海道生まれ。2012年に毎日芸術賞受賞。NHK Eテレ「趣味悠々」出演。映画「書道ガールズ!!」で指導監修。
=成田山書道美術館蔵
毎日書道会常任顧問
仲川恭司 NAKAGAWA Kyoji
【タイトル】「麗」(はなやか)
白の大紙面に舞う雅の一字書を狙って、筆力を発動する捻れの用筆、淡墨の長く暢びやかな墨線で、はなやかな世界を表現したいと念じて筆を執りました。
1945年、新潟県金沢村(現佐渡市)生まれ。手島右卿に師事。2017年度毎日芸術賞。専修大学名誉教授
毎日書道会理事
赤平 泰処 AKAHIRA Taisho
【タイトル】陶淵明 飲酒
陶淵明の漢詩の中でも、とりわけなじみのある作品を題材に選んだ。強い線で、てらいのない筆勢、迫力にポイントを置いて、一気に書き上げた。
1946年青森県弘前市生まれ。2019年、毎日書道展文部科学大臣賞。著書に『我が心の書』『書美が際立つ細字表現』など。
毎日書道会理事
薄田東仙 USUDA Tosen
【タイトル】People 歓喜 大阪・関西万博
世界が一つになり、未来の地球を考える万博に喜びをもって表現したい。作品の人は中国雲南省ナシ族のトンパ文字、多く集めて人々(people)とした。
1948年、新潟市生まれ。青山杉雨、長揚石に師事。2008年、中国・興教寺に瓦対・扁額を奉納。2011年、文化庁・文化交流使。全日本書道連盟常務理事
毎日書道会理事
遠藤 彊 ENDO Kyo
【タイトル】丁男
丁男(ていだん)は「血気盛んなる若者」。老境に至りて久しいが少しでも丁男として血気盛んな男として作家活動をしたいとの想いを込めて表現した。
1946年山形県村山市生まれ。徳野大空、關正人氏らに師事。日展会員、創玄書道会副会長、扶桑印社代表
毎日書道会理事
下谷洋子 SHIMOYA Yoko
【タイトル】「橘」 万葉集(大伴家持)
長寿・不老不死の象徴として尊重された橘の花の美しさを滔々としたリズムで書いた。歌に合わせた雅な料紙に、漢字とは異なるかな文字のたおやかなリズムを感得してほしい。
1951年、群馬県渋川市生まれ。2016年、上皇后美智子様御歌歌碑揮毫。書道芸術院理事長
=写真は作品の一部
毎日書道会理事
中原 志軒 NAKAHARA Shiken
【タイトル】「希」 pray
希は元々糸を交えて刺繍した布をさす。現代社会は克服すべき課題が山積みだ。世界の願いを織りこんで美しく調和された造形は。希望へのデザインである。
1949年、香川県出身。宇野雪村に師事。2023年奎星会ウィーン展で席上揮毫
毎日書道会理事
永守 蒼穹 NAGAMORI Sokyu
【タイトル】「海くれて」松尾芭蕉の句(海くれて鴨のこゑ ほのかに白し)
墨色と線の強さ優しさ、文字の形、大小、行の流れで余白の美と穏やかさを願う。筆は柔らかな羊毛、墨持ちが良く手漉きの紙と合い豊かな線を生む。感謝。
1950年、熊本県宇土市生まれ。父の教えで4歳から筆を持つ。金子鷗亭、卓義に師事。日展会員
毎日書道会監事
北野攝山 KITANO Setsuzan
【タイトル】
シラー詩 ベートーベン作曲交響曲第九番 歓喜に寄せて
Beethoven : Symphony No.9 “Ode to Joy” Friedrich Schiller
白と黒が織りなす無限の表現。書の世界の魅力をここ夢洲より届けられること。いのち輝くエネルギーを感じ取ってもらえること。幸せに思います。
1951年、大阪市生まれ。森本龍石、近藤攝南に師事。高野山書道協会副会長、日本詩文書作家協会常任理事、書団響理事長、太源書道会理事長