ぼうさい甲子園2015 受賞団体の取り組み


受賞団体の取り組み――地域面から

半田・亀崎小、県内初の「全国一」 地域と連携し意識高める/愛知
半田・亀崎小の生徒たち
グランプリに輝き、取り組みについて発表する愛知県半田市立亀崎小の児童たち=神戸市中央区の兵庫県公館で2016年1月10日、森園道子撮影

優れた防災教育や活動を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内から半田市立亀崎小
(貝沼真幸校長)がグランプリに選ばれた。小・中・高・大学を含め「全国一」のグランプリを県内の学校が受賞するのは初めて。

また西尾市立白浜小(清水文克校長)が、津波への防災活動を推奨する「津波ぼうさい賞」を受賞する。亀崎小は、神戸市で開かれる来月10日の表彰式で成果発表をする。【山本愛、伊地知克介】

亀崎小は、東日本大震災直後から、地震と津波を意識した防災活動に取り組んで来た。校内では、地域や家庭での防災意識を高めるリーダー「亀っ子防災隊」の取り組みにも力を入れる。2012年7月に結成され、4~6年生の有志児童約40人が隊員だ。地域の防災訓練に参加して消火器や自動体外式除細動器(AED)の使い方を学んだり、県内外の防災の大切さを伝える施設見学などをして、意識を高めている。
また非常食や簡易トイレなどを展示する防災学習室を設けて、児童の防災への関心を高める工夫をしている。小学生の部の大賞受賞(14年度)後も、地域との連携を大切に、さらに高い防災意識で取り組みを継続させている点などが評価された。

貝沼校長は「子どもの頑張りと、地域の力が認められ大変うれしい。この1年でも、防災に関する活動が根付いてきたことを実感できた。今後は活動の範囲を広げ、他の地域の方々とも協力しながら、地域の防災力を高めていくために貢献できればうれしい」と話した。

白浜小は西尾市南部の海岸から500メートル、海抜0メートルの場所にあり、東日本大震災後の危機感の高まりを受け、近くの高台である正法寺山への避難訓練を始めた。地元も協力して避難路を整備、案内看板なども設置している。近くの保育園や高校と合同の避難訓練や、避難路の清掃などを進めている。

「地域と連携した津波防災の取り組み」と評価された。清水校長は「活動が認められてうれしい。これまで携わってきた児童や教員の頑張りや、保護者や地域のみなさんの協力の成果と思う」と話している。

高校部門大賞 1000年先まで見据え 女川の「命を守る会」/宮城

優れた防災教育や活動に取り組んでいる学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、女川町立女川中の卒業生グループ「女川1000年後の命を守る会」(阿部由季会長)が大賞(高校生部門)に選ばれた。

女川中時代(2013年度)のグランプリに続く3回目の受賞。また、多賀城高(小泉博校長)が優秀賞、気仙沼市立気仙沼小(小野寺正司校長)と亘理町立荒浜中(渡辺裕之校長)が「はばタン賞」に選ばれた。同賞は被災地の優れた取り組みに贈られる。

命を守る会は、女川中卒業生が高校生活の合間に集まり、津波到達地点を示す「女川いのちの石碑」を建立する活動を進めている。建立は中学時代から続けてきた。また、被災体験をまとめた「女川いのちの教科書」の出版に向け編集を進めてきた。多賀城高の生徒有志は東日本大震災後、多賀城市内の津波の痕跡を調べ、津波到達地点を示す看板やステッカーを設置してきた。津波の恐ろしさを後世に伝え、災害への備えにつなげてほしいと願っている。

気仙沼小は毎月11日に「防災タイム」を設けて避難訓練を行っている。荒浜中には、地域の防災拠点として新校舎が整備された。防災機能を生かすため住民と行う避難訓練に力を入れている。【山本愛】

小学生部門 日高特別支援学校に優秀賞 車いすで「防災体操」/埼玉

優れた防災教育や活動を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県立日高特別支援学校が小学生部門の優秀賞に選ばれた。同校で防災を担当する斎藤朝子教諭は「光栄なこと」と喜び、「我が校の取り組みに興味を持ってくれる特別支援学校があったら、情報交換したい。うちのやり方を基に各校向けに作り上げてくれたらうれしい」と語った。【岡礼子】

同校には、肢体が不自由な子供たちが通っており、全児童生徒の約8割が車いす利用者。車いすを自走させられない子や言葉を発することが困難な子も多く、災害時に走って逃げたり、火災の煙を避けて低い姿勢を取ったりすることはほぼできない。このため同校では、児童生徒一人一人がいざという時に車いすの上で身を守る姿勢を取ったり、必要な介助を周囲に伝えたりできるよう、独自の「防災体操」を考案し、学校全体の教育計画に組み込んでいる。また、災害時に周辺の地元企業や医療機関の支援が必要になることも想定し、自校のホームページなどで取り組みを周知したり、企業などに訓練に参加してもらって協力体制づくりを進めたりしている。

「防災体操」は、お笑いコンビCOWCOWの「あたりまえ体操」の歌詞と振りを、同校の児童生徒に合わせて替えたもので、防災教育の時間などに全校で歌って覚えている。千葉県立東金特別支援学校(2013年に高校生部門でぼうさい大賞受賞)が知的障害のある児童生徒向けに「あたりまえ体操」の替え歌を作ったことをヒントに、「じしんがきたら あたまをまもってだんごむし!」「くるまいすのブレーキとベルトしてる?」など、肢体不自由児向けの歌詞を考えた。休み時間に、だんごむしのポーズをしてみせる子もいると言い、斎藤教諭は取り組みの効果を実感している。

また、同校では今年から、小学4年~高校3年の児童生徒による防災委員会を発足させた。13人の委員が体操を率先して覚え、校内の防災安全マップをつくるなどの活動をしている。委員長の新井田滝人(たきと)さん(高3)は、災害に備えて時々校内を点検し、全校に整理整頓を呼びかけているという。

地域一体で備え 優秀賞に能登町・小木中/石川

優れた防災教育や活動を表彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(毎日新聞社など主催)で、県内からは能登町立小木中学校(大句わか子校長、児童数48人)が優秀賞に選ばれた。同校の受賞は12、13両年度の津波ぼうさい賞と、14年度の奨励賞に続き4年連続。

小木中のある小木地区はリアス式海岸の九十九(つくも)湾に面する。生徒たちは2011年の東日本大震災で、同じリアス式の三陸海岸が津波で大きな被害を受けたことに衝撃を受け、取り組みを始めた。

地震・津波に襲われても地域から犠牲者を出さないことを目指し、自校が避難所になることを想定した訓練や、地域の防災意識の向上に努めた。小学校や保育園、高校にも呼びかけ、自主防災組織の発足を実現させたほか、災害時に備えて七夕やグラウンドゴルフを通じて日ごろから住民との交流を深めた点が評価された。避難生活に役立つ段ボールの簡易トイレ作りにも取り組んだ。活動に伴い、生徒たちが地域貢献の実感を持つ副次的な効果もあったという。

受賞を受け、大句校長は「活動が地域の防災意識向上につながったことが評価され、うれしい。今後も避難所や避難経路の整備に力を入れたい」と話した。【竹田迅岐】

奨励賞、大垣桜高家庭クラブに ずきん製作、地域で実践/岐阜

優れた防災教育や活動を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは県立大垣桜高校(大垣市墨俣町上宿、渡辺美智子校長)家庭クラブが奨励賞に選ばれた。大垣桜高の受賞は初めて。4年前から「防災ずきん」製作を通じての防災教育に取り組み、地域に広がる積極的な実践活動として評価された。

生徒らの関心が高く、防災ずきんづくりが進化し、「バッグ型」など、普段は別の用途で使えたり、中に非常用物資が入れられたりするというユニークなものが次々にできた。近隣の高齢者らに教えて世代間交流を図ったり、近くの小学生らに紙芝居とともに防災・減災について教え、防災教育の拡大を進めている。

今年北海道で行われた全国家庭クラブ大会では一連の防災の取り組みについて発表し、最優秀賞に選ばれた。地域の人を招いての文化祭でも発表し、地域への啓発にもなっている。家庭クラブ会長の森島梨緒さん(2年)は「先輩と共に防災・減災活動を通してつながった地域の方との絆をこれからも大切にして、活動を継続していきたいと思います」と話す。担当の増田恵子教諭は「これからも地域で役立つ人材に近づけられるよう生徒と共に活動や交流に励んでいきたい」と話している。【伊地知克介】

県内から2校受賞 印南中、「かめや」教訓を解読 新庄中、独自の「地震学」評価/和歌山

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは田辺市立新庄中学校が「奨励賞」、印南町立印南中学校3年生の総合的な学習津波研究班が「継続こそ力賞」に選ばれた。新庄中は2001年から、大地震や大津波などの災害に備えた課題解決学習として、3年生が独自の防災学習「新庄地震学」に取り組んでいる。今年度も週1時間、国語や数学、美術、音楽など10教科の班に分かれて標語づくり、たこやカレンダーの製作、歌とダンスによる啓発など防災と教科を組み合わせて学んできた。

学習成果は先月、地域住民らも招いた発表会で披露した。生徒会副会長の千葉喬子さん(15)は「昨年の3年生はグランプリを受賞
したのでプレッシャーはあったが、私たちなりに取り組んだ活動を評価してもらえた」と受賞を喜んだ。

印南中は、2005年度に3年生の選択科目の理科で津波防災学習を始め、これまでにもぼうさい甲子園で奨励賞などを受賞した。今年は、160年前の安政南海地震の津波で奇跡的に残った蔵の内壁「かめやの板壁」に書かれた当時の震災の様子や教訓を解読。県立文書館の指導も受け、従来の解釈の誤りを見つけた。

同校学習支援員の阪本尚生さん(61)は「町史にも掲載された解釈の間違いに気付き、高齢女性への聞き取りで『かめや』があった場所も特定でき、達成感があったと思う」と話していた。【野原隆、山本芳博】

中学部門 中津支援学校が受賞 /大分

優れた防災教育や活動に取り組んでいる学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県立中津支援学校(清末直樹校長)が「だいじょうぶ賞」(中学生部門)に選ばれた。受賞は初めて。同賞は身近な安全に活用できる活動に贈られる。

学校は海や川に近く、津波や水害などが懸念されている。同校で学ぶ小中高生約80人の多くに知的障害があり、車椅子を使っている児童生徒もいる。教員らは、車椅子を運ぶ役、誘導役などと避難時の役割分担を決め、校舎3階への垂直避難訓練を全校で実施してきた。避難への意識を日常的なものにするため、各学年の実情に合わせた避難所生活体験も企画。自助力を高める工夫をしている。

防災教育担当の衛藤章江教諭(42)は「訓練の音に動揺して動けなくなっていた児童生徒が、避難行動を取れるようになった。今後は、地域との連携も模索していきたい」と話している。【山本愛】

(2015年12月11日毎日新聞大阪朝刊)

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