ぼうさい甲子園2018 表彰式・発表会


命守る、私が力に 地域と共に歩む

 優れた防災教育の取り組みを顕彰する2018年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社、兵庫県、ひょうご震災記念21世紀研究機構主催、UR都市機構協賛=の表彰式・発表会が19年1月13日、神戸市の兵庫県公館であった。入賞した33校・団体の表彰の後、グランプリとぼうさい大賞、優秀賞の計8校が順にステージに立ち、活動内容を発表した。各校の熱心な取り組みに参加者らは刺激を受け、防災の大切さを再認識していた。

グランプリ

高知・四万十町立興津中 津波最短10分、猶予を表示

 高知県四万十町立興津中は全校生徒9人が登壇。南海トラフ巨大地震による津波をテーマに「正しく冷静に恐れよう」と題し、津波到達時間を知らせる表示板を設置した活動を紹介した。

 「地震が起きたら、わしゃあきらめちゅう」。昨年度、インタビューでお年寄りが語った言葉が生徒の心に刺さった。学校がある興津地区は土佐湾に面し、最大15メートルの津波が想定される。

 本当に逃げる暇はないのか。生徒らは京都大の津波シミュレーションで、到達が早い場所でも10分ほどの猶予があると知った。「到達時間を知れば、緊迫感だけじゃなく心の余裕にもなるのでは」

 県の防災マップを基に、人が足をすくわれる30センチの津波が来るまでの時間を調べ、表示板にして地域に約50枚張った。

 発表の最後で、山崎凜耶(りりか)さん(3年)は「この活動を通して考えたことがあります」と切り出した。

 「15メートルという津波の高さのみが強調されますが、注目すべきは自力避難の限界とされる30センチ浸水までの時間だと思います。たとえ1メートルの想定でも、30センチ浸水までの時間が短ければむしろその方が危険ではないでしょうか」
 そして「皆さんはどうお考えですか」と問いかけ、発表を終えた。

受賞校、着眼点に驚き 司会、尼崎小田高の2人

 発表会の司会は、兵庫県立尼崎小田高放送部の田代このみさん(2年)=写真右=と猪原(いはら)静さん(1年)=同左=が務めた。

 同校は今年度のぼうさい甲子園で、普通科看護医療・健康類型が特別賞のだいじょうぶ賞を受賞した。司会の冒頭、「学校は海抜ゼロメートル地帯にありますが、災害に対する意識は高いとは言えません。学校全体で防災・減災・縮災教育を見直しています」と話し、学校の取り組みを紹介した。

 各校の発表を聞き終え、田代さんは「学んだことを家族や周りの友達にも伝えたい」。猪原さんも「同世代の着眼点がすごかった。私も災害対策や避難場所について家族と話したい」と語った。

AED命のタカラモノだよ♪ 和歌山・熊野高

 オープニングで、和歌山県立熊野高・Kumanoサポーターズリーダー部の女子生徒18人がオリジナルのダンス「心肺蘇生ダンス」と「防災エクササイズ」を披露し、会場を盛り上げた。

 心肺蘇生ダンスはプリンセスプリンセスのヒット曲「Diamonds」の替え歌に合わせ、心肺蘇生の動きを取り入れた。歌詞は「電源つけて、パッドを張って」などと、AED(自動体外式除細動器)の使い方も入れた。防災エクササイズは、歌詞で地元の災害の歴史に触れ、地域のふれあいの大切さを表現。振り付けをした大江利奈さん(2年)は「覚えやすいダンスなので広まってほしい」と話した。

 このほか、静岡大教育学部・藤井基貴研究室の学生が、防災紙芝居「みずがくるぞ」を披露した。

講評

防災教育、広がり着実 選考委員長・河田恵昭 人と防災未来センター長

 回を重ねるにつれ、子供たちや学生による防災教育や防災活動の取り組みが着実に広がり定着していることを喜ばしく思う。
 審査は、地域性、独創性、自主性、継続性の四つの観点で評価した。
 グランプリには全校生徒9人の高知県四万十町立興津中が選ばれた。興津地区は南海トラフ巨大地震で最大15メートルの大津波が想定されているが、津波到達までに避難が可能だと分かり、津波到達時間を示す表示板を50カ所に掲示した。地域や行政と一体となり高齢者の視点で地域ぐるみの防災活動を推進している点が高く評価された。
 ぼうさい大賞の徳島県阿南市立津乃峰小、兵庫県立山崎高、関西大・近藤誠司研究室は、地域を巻き込んだ活動に発展させたり、主体的に取り組んだりしている。
 今回が平成最後のぼうさい甲子園となる。新元号となり大きな節目を迎えるが、災害列島日本には節目がなく、より一層災害に立ち向かう決心をしていかなければならない。安全安心な社会作りに向けたさらなる取り組みが継続されることを期待している。

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