ぼうさい甲子園2013 受賞団体の取り組み


受賞団体の取り組み――地域面から

学校や地域が取り組む優れた防災教育を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)の受賞校・団体が決まった。小学生、中学生、高校生、大学生の4部門に計115校・団体の応募があり、委員9人(委員長=河田恵昭・人と防災未来センター長)による選考の結果、グランプリに宮城県女川町立女川中が選ばれた。各部門から、最優秀賞の「ぼうさい大賞」(うち1校がグランプリ)、優秀賞、奨励賞をそれぞれ選んだほか、過去の被災地での活動を対象にした「はばタン賞」には東北の3校を選出。これまで応募が少なかった地域での取り組みに贈る新設の「フロンティア賞」は、3校に決まった。2014年1月12日、神戸市中央区の兵庫県公館で表彰式と発表会を開く。

震災教訓石碑に、女川中/防災「あたりまえ体操」、大賞の千葉・東金特別支援学校
建立された「女川いのちの石碑」の前で笑顔を見せる町立女川中の生徒たち=宮城県女川町で11月23日、金森崇之撮影
建立された「女川いのちの石碑」の前で笑顔を見せる町立女川中の生徒たち=宮城県女川町で11月23日、金森崇之撮影

◇震災教訓石碑に–女川中

家に戻ろうとしている人がいれば、絶対に引き止めてください――。今年度の「ぼうさい甲子園」(毎日新聞社など主催)で、グランプリに輝いた宮城県女川(おながわ)町立女川中の3年生らは、町内全21カ所の浜に「女川いのちの石碑」を建立する取り組みを進めている。そこには、東日本大震災による津波で被害を受けた古里のために、教訓を後世に伝えようとの思いが刻まれている。
女川町では震災で当時の人口の約8%に当たる849人が死亡・行方不明になった(今月4日現在、震災関連死を含む)。建立を発案した3年生は、震災直後の2011年4月の入学。「1000年先の命を守りたい」との思いから、浜の津波最高到達点に、それぞれ石碑を建てることを発案した。今年2月から生徒自ら資金を募り、必要な1000万円を約半年で集めた。

「津波でつらい思いをする人が減ってほしいという思いがあったからこそ、ここまでやってこられた」と、3年の勝又愛梨さん(14)は思いを語る。

3年の山下脩君(14)は「費用が集まるのに何年かかるんだろう、と不安だった。建立できたのは、世界中の人たちが女川のことを思ってくれたから」。

石碑は高さ2・2メートル、幅1メートル。「大きな地震が来たら、この石碑よりも上へ逃げてください」などと記されている。これまで3基が建立され、生徒が20歳になるまでに全基を建立することを目標にしている。【後藤豪】

 

自分たちで振り付けを考えた「あたりまえ体操」を行う県立東金特別支援学校の児童・生徒たち=千葉県東金市で3日、後藤豪撮影
自分たちで振り付けを考えた「あたりまえ体操」を行う県立東金特別支援学校の児童・生徒たち=千葉県東金市で3日、後藤豪撮影

◇防災「あたりまえ体操」–大賞、千葉・東金特別支援学校

一方、高校生部門でぼうさい大賞に選ばれた千葉県立東金特別支援学校は、知的障害がある児童・生徒が自分の命を主体的に守るため、防災教育に取り組む姿勢が評価された。
昨年7月、高等部の男子2人が岩手県と宮城県の支援学校など5校を訪問。被災地の教訓を生かすため、お笑い芸人のネタを元にした替え歌「あたりまえ体操」を作った。

音楽の授業などで、「とにかくにげっぺ!(「逃げる」の意味) あたりまえぼうさい」などと歌いながら、踊っており、日暮和弘校長は「防災を身近なものと感じられるようになった。東金の伝統にしたい」と語った。

優秀賞に宮古工業高 学区網羅、津波模型を製作/岩手
県立宮古工業高の生徒たち
釜石市と大槌町の津波模型を製作する県立宮古工業高の生徒たち=宮古市で

◇はばタン賞:吉浜中(大船渡)鍬ケ崎小(宮古)

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは県立宮古工業高(稲森藤夫校長)が優秀賞を受賞した。また、宮古市立鍬ケ崎小(古玉忠昭校長)と大船渡市立吉浜中(村上洋子校長)が、被災地での経験や教訓から生まれた活動が対象の「はばタン賞」に選ばれた。
宮古工業高はぼうさい甲子園で、過去にぼうさい大賞2回受賞している。津波模型の製作と、それを使った「疑似津波実演会」の二つを活動の柱に据える。

津波模型づくりは2005年度から取り組み。北は宮古市田老地区から南は山田町まで、計10基の模型を作り、学区全域を網羅した。今年度は、釜石市と大槌町を対象にした模型1基の作成に取り組み、来年の中ごろの完成を目指す。

顧問の山野目弘・実習教諭(61)は「来年度からは、ハザードマップを作ることの重要性を高校生が小学生に伝えていく啓発活動を新たに行いたい」と話した。

鍬ケ崎小は、昨年度後半から「鍬ケ崎からの元気の発信」をテーマに活動。班ごとに地域の人々へインタビューし、鍬ケ崎の良さをリーフレットにまとめて宮古市役所やJR宮古駅など市内27カ所に配った。また、交流校の盛岡市立向中野小の児童らに対して、防災カルタを使って、津波の恐さを説明する取り組みも初めて行った。
吉浜中は、昭和三陸大津波体験者からの聞き取りなどを基にした津波演劇の上演を行ったほか、東日本大震災について地域住民に取材し、文集にまとめる計画も進めている。【後藤豪】

女川中がグランプリ 気仙沼・階上中、仙台・南吉成中入賞/宮城
学区の浸水区域を記した地図について話し合う気仙沼市立階上中の生徒たち=気仙沼市で
学区の浸水区域を記した地図について話し合う気仙沼市立階上中の生徒たち=気仙沼市で

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは、女川町立女川中がグランプリを受賞した他、気仙沼市立階上中(今野勝美校長)が奨励賞、仙台市立南吉成中(高橋教義校長)が、被災地での活動を対象とする「はばタン賞」に選ばれた。
階上中は、2005年度より「自助・公助・共助」をテーマに防災学習に取り組んでいる。気仙沼市によると、東日本大震災では、中学校の学区に住む約4800人のうち、約4%の208人が亡くなった。震災以後は、個々の防災意識をさらに高める必要があるとの観点から、「自助」を活動の軸にしている。

今年度は、災害時を想定して児童・生徒を保護者に引き渡す訓練を、同市立階上小と合同で実施。その他、NPO法人「兵庫県暮らしにやさしい防災・減災」からもらった防災カルタを題材に、生徒たちがカルタを作り、同小学生への啓発を促す取り組みや、避難所設営訓練などを昨年度に引き続き行った。
南吉成中は、仙台市内では内陸にある。生徒らが沿岸部の農家に「弟子入り」して綿花栽培を手伝い、被災者との交流を図ったり、防災のスキルを身につける目的で「校内炊き出し調理コンテスト」などを行ってきた。今年11月には初めて、中学生主導による地域防災訓練も行った。【後藤豪】

「仁賀保高Be助人」にフロンティア賞 地域巻き込み避難訓練/秋田
話し合いを行う県立仁賀保高Be助人のメンバーら
話し合いを行う県立仁賀保高Be助人のメンバーら

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは県立仁賀保高Be助人(ビスケット)が「フロンティア賞」に選ばれた。同賞は、過去に応募が少なかった地域での取り組みが対象で今年度、新設された。
Be助人の前身である「Benkyo&Volunteer同好会(BV会)」は、東日本大震災直後の2011年4月設立。生徒主導で行っているのが特色で、東北6県の名産を使ったクッキーを企画・販売して得た収益や、各種助成金など、活動費は自力で賄っている。

今年7月からは、「お菓子のように周囲の人を和ませたい」との思いを込めて、BV会の中の防災にかかわる活動を「Be助人」と銘打った。現在は、全校生徒の約25%の106人(1~3年)が参加している。これまでの活動で代表的なのは、今年3月と8月に、同高で行った「1泊避難訓練」。生徒が校舎に泊まって避難所訓練と避難所運営訓練をするというものだ。「難しい条件でないと訓練にならない」との考えから、訓練を夜に行った。3月の訓練には、生徒以外に地域住民約20人も参加した。
2年の斉藤亜希さん(17)は「活動を通じて、市内、県内の防災への意識を高めるきっかけを作りたい」と話した。【後藤豪】

「津波ぼうさい賞」に磐城高天文地質部 実地調査や実験重ね/福島

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは県立磐城高(箱崎温夫校長)天文地質部が「津波ぼうさい賞」に選ばれた。
天文地質部の生徒たちは、東日本大震災時のいわき市の津波の浸水範囲や津波高をマップにまとめた。一昨年5月から約1年間かけて沿岸部約60キロを歩き、付近住民約600人から話を聞いて作製した。野外調査の結果、「津波被害は土地利用の工夫で軽減できるが完全に抑制することは難しい」ことが分かった。
昨年は、川の氾濫による浸水被害や、道路の海岸線に対する角度の違いによる津波の遡上(そじょう)のしやすさなどを調べるため、模型や人工津波発生装置を作って、実験した。
今年度は、野外調査や実験の結果などを基に、同市四倉(よつくら)地区のハザードマップ作りを主な活動にしている。避難範囲▽被害の大きさによる避難ゾーンの区分け▽津波の遡上しやすい道路▽津波の滞留しやすい地域――の4項目で、今年度内の完成を目指している。
顧問の島津康行教諭(37)は「今後は研究成果を目に見える形で、地域住民に伝えていきたい」と話した。【後藤豪】

クラブ作り活動、糸魚川・根知小に大賞/新潟
糸魚川市立根知小の児童たち
「地域安全マップ」を作成する糸魚川市立根知小の児童たち=糸魚川市で

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは、糸魚川市立根知小(谷口一之校長)が小学生部門で、最優秀賞の「ぼうさい大賞」を受賞した
。 同小は、内閣府などが主催の「防災教育チャレンジプラン2011」に応募したのをきっかけに、防災への取り組みが活発化した。  今年度は新たに「めざせ!ぼうさい甲子園グランプリ」を目標に掲げ、「コドモ防災クラブ」を作った。全校児童27人のうち、3~6年生10人で構成し、▽救命法を学ぶ▽防災カードゲーム「クロスロード」に挑戦▽コドモ防災士のテーマソングを考える▽地域安全マップづくり――などの活動に取り組んだ。

学校オリジナルのヒーロー「防災戦隊チャレンジャー」が児童たちにミッションを与え、正解すればオリジナルの防災カードがもらえる「根知っ子防災MISSION!」の取り組みも、昨年度に続き行った。
指導にあたった宮川高広教頭(48)は「3年間突っ走ってきたので、今後は、継続性を意識した系統的なサイクルをつくっていきたい」と語った。【後藤豪】

 

能登・小木中が「津波ぼうさい賞」受賞–2年連続/石川
能登町立小木中の生徒たち
2013年11月の文化祭で、津波に対する心得を説いた劇を上演した能登町立小木中の生徒たち=同中提供

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは能登町立小木中(小川正校長)が2年連続で「津波ぼうさい賞」を受賞した。
小木中がある小木地区は海に面していて、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県や宮城県の町と地形的に似ている。「人ごとではない」と、震災後から防災教育に取り組んできた。今年度は11月に、地区の避難訓練を同町立小木小学校など連携し、約500人が参加して行った。同中の生徒たちが小学生に対し、ゴミ袋と新聞紙を使っての防寒着作りなどを教えた。その他、文化祭では、1年生が津波に対する心得を説いた劇をミュージカル風にして上演した。

防災担当の広沢孝俊(こうしゅん)教諭(48)は「津波防災に関する取り組みを学校の伝統、地域の文化にしていきたい」と話した。【後藤豪】

御嵩・上之郷小に教科アイデア賞/岐阜

学校や地域の優れた防災教育・活動を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは社会科など教科の授業の中に防災教育の要素を取り入れて工夫した御嵩町立上之郷小が「教科アイデア賞」に選ばれた。
授業で防災教育をする中で、児童の「命を守る意識が高くなった」という。地域との協力も進め、町の防災訓練に参加したり、親子登下校で通学路を点検したり、という取り組みを続け、活動に広がりがあることも評価された。
2011年9月の集中豪雨で校内に水と土砂が流れ込んだ被災体験が原点になり、地域と一体になって防災教育を進めてきた。
福井俊道校長は「防災の取り組みの中で、児童が地域の人と出会う機会を作れたのが意義があったと思う。今後も継続していきたい」と話した。【伊地知克介】

県内から1団体、1学校 美浜の「MMM」が優秀賞、半田商は教科アイデア賞/愛知

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは美浜町の「地域貢献団体MMM(スリーエム)」が大学生部門の優秀賞を受賞した。また、県立半田商業高(榊原宏樹校長)が、特色ある防災教育の要素を教科に取り入れた学校を表彰する「教科アイデア賞」を受賞した。【後藤豪、伊地知克介】

◇住民と学生一体、セミナーを開催
MMMは、2012年6月設立。同12月からは、日本福祉大がある美浜町奥田地区で、「手をつなごうプロジェクト」と題して、地域住民と学生が一体となり、地域防災セミナーを数カ月ごとに行っている。「身近で起こる災害を知り、対応を考える」「地域に障がい者がいることを知ってもらう」など、クールごとにテーマを設定し、地域散策や炊き出し、DIG(災害図上訓練)などを行った。  代表の西井智隆さん(21)は「防災だけでなく、地域の課題や発展につながることを地域の人たちと一緒に考えていけるコミュニティーをつくっていきたい」と話した。

◇「出前授業」など多方面で活動
半田商業高は、地元の小学校に生徒が「出前授業」に出向いたり、東日本大震災の被災地支援の「ハートツリー運動」に取り組むなど、多方面で活動してきた。商業高校の特色を生かし、災害時の非常食としてオリジナル防災用品「ごんぱんだ」を市内のパン店と協力して開発。イベントなどで販売する活動は、生徒の学習になるとともに防災啓発にもつながっている。
白井上二教頭は「受賞を励みに、活動を継続していきたい」と話した。

佛大・応援隊に奨励賞 高齢者見守りなど評価/京都

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、府内からは佛教大大宮防災と福祉のまちづくり応援隊が初応募で、大学生部門の奨励賞に選ばれた。
応援隊は、高齢化が進む京都市北区の大宮学区で2010年、同学区社会福祉協議会が主催する「防災と福祉のまちづくり講座」に学生が参加したことをきっかけに発足。一人暮らしの高齢者に対して地域住民が行う「大宮ほっとかへんで運動」には、応援隊の学生たちが近隣支援者として登録し、見守り活動を行っている。
ほかに、今年11月に同市立大宮小で行われた「大宮学区総合防災訓練」では、学生たちが体育館に子どもの遊び場を作ったり、要支援者の見守りなどを行い、避難所運営のサポートを行った。
指導にあたる同大学の後藤至功(ゆきのり)講師(地域福祉)は「災害と日常は切り離されたものではなく、連動しているということを学生が取り組みを通じて学ぶことが大事だと思う」と話した。【後藤豪】

南港南中、フロンティア賞 地域つなぐ「リーダー」/大阪

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、府内からは大阪市立南港南中(福島信也校長)が「フロンティア賞」に選ばれた。同賞は、過去に応募が少なかった地域での取り組みが対象で、今年度新設された。【後藤豪】
約40年前に整備された集合住宅街「南港ポートタウン」は高齢化が進む。近くには幼稚園もあり、高齢者や小さい子どもを守るためには、「中学生が地域の担い手になることが必要」との考えから、地域を巻き込んだ防災教育に取り組んでいる。
同中は海に近いこともあり、従来は火災向けだった訓練を昨年度から地震・津波向けに替えた。今年度は新たに、1~3年生の希望者計約30人を「防災リーダー」に任命。南海トラフ巨大地震を想定した「大阪880万人訓練」に合わせて9月5日に行った訓練では、防災リーダーが2班に分かれ、高齢者と園児を同中の校舎4階に避難誘導した。
生徒会会長で2年の赤井凌さん(14)は「普段、地域の人たちとの交流が少ないので、こういう機会を大事にして、いざという時のことを考えていきたい」と話した。

神戸の「アトリエ太陽の子」、「継続こそ力賞」を受賞 「命の一本桜」東北に勇気/兵庫
「命の一本桜」
福島県いわき市立平第四小学校で今年10月に制作された「命の一本桜」=アトリエ太陽の子提供

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは「アトリエ太陽の子」(神戸市)が「継続こそ力賞」に選ばれた。ぼうさい甲子園には9年連続の応募。昨年度まで3年連続、被災地での活動を対象とする「はばタン賞」を受賞した。
アトリエ太陽の子は、2004年から活動。東日本大震災では、発生翌日から取り組んだ「1000本の命のサクラプロジェクト」は、県内に住む幼稚園児から高校生まで計1000人が画用紙にサクラの絵を描き、宮城県や岩手県の小中学校、避難所に贈った。
昨春から始めたのはは「命の一本桜プロジェクト」。

子どもたちがクレヨンで桜の幹や地面を描いた巨大な紙(縦3・2メートル、横8メートル)に、ピンクの水彩絵の具を手のひらに塗って押し当て、花びらを表現した。これまで岩手、宮城、福島の3県の小中学校など30カ所以上で、作品を制作したり、届けたりした。
代表の中嶋洋子さん(61)は「東北の被災地の子どもたちが、おなかの底から笑える日が来るまで、阪神大震災を経験した私たちが支援していきたい」と話した。【後藤豪】

 

県内から2校 印南中「津波ぼうさい賞」、熊野高「教科アイデア賞」/和歌山

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは印南町立印南中(片山隆校長)が「津波ぼうさい賞」、県立熊野高(稗田敬一校長)=上冨田町=が「教科アイデア賞」に選ばれた。  印南中は、2005年度から3年生の選択科目で、津波防災についての取り組みを続けてきた。国立和歌山高専から提供を受けたコンピューターデータをもとに、条件を変えて、印南を襲う津波のシミュレーションを行ってきた。担当の阪本尚生教諭(58)が今夏、地形図と津波浸水図を重ね合わせることを思いつき、津波第1波の進入路や侵入時間が具体的に分かるようになった。

今年度は、算出された津波の高さがどれくらいかを体感するため、3年生5人が現地に出向き、リポーターとカメラマンに分かれて津波リポートを行った。収録した映像は今月14日の文化祭で公開し、全校生徒や地域住民への啓発を図る予定。阪本教諭は「私たちの取り組みにふさわしい賞をいただけてうれしい」と話した。

熊野高は今年度、総合学科の三つの選択科目で、2、3年生が「ハートフルハザードマップ」づくりに着手。明治時代以降に地域を襲った洪水を対象に、史実の文献調査や地域の人たちへの聞き取りをしている。また、一人暮らしの高齢者宅を生徒たちが放課後などに訪問し、安否確認を行う取り組みを来年1月から始める予定だ。【後藤豪】

高校生部門 奨励賞、防府の「アカザ隊」/山口

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは、「水の自遊人しんすいせんたいアカザ隊」(防府市)が高校生部門の「奨励賞」に選ばれた。アカザ隊は、2009年度のグランプリをはじめ、6回目の受賞となった。

06年4月、防府市の川遊び団体として発足した。地域のコミュニティーFMのパーソナリティーを務める同隊事務局の吉野邦子さん(43)が、同市立華城小学校のワークショップを番組内で取り上げ、児童とつながりが生まれたのがきっかけだった。現在は、地域の高校生~小学生約20人が所属し、新聞を使ったスリッパづくりの体験などに継続して取り組んでいる。

防災への取り組みは07年から開始。今年度は国土交通省の出前講座を利用して、機械を用いた「100ミリの降雨体験」を実施した。  吉野さんは「継続することの大切さを感じている。今後も地域の防災力を上げるために、活動を続けていきたい」と話した。【後藤豪】

小松島・坂野小と徳島・津田中、優秀賞/徳島
オープンスクールで「防災スリッパづくり」に取り組む児童たち
オープンスクールで「防災スリッパづくり」に取り組む児童たち=小松島市坂野町の坂野小で

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは小松島市坂野小(谷本良裕校長)と徳島市津田中(長江俊明校長)が「優秀賞」を受賞した。【後藤豪】
坂野小は今回、初めての応募。算数では「津波の速さ」、図工では「新聞でつくる防災スリッパ」など、あらゆる教科で防災教育を組み入れる「クロスカリキュラム」を昨年度から導入している。日常教科に入れることで生きた教育を行い、子どもたちの意識を高めることが目的だ。

今年度は新たに、子どもたちがフィールドワークで調べた内容をもとに、地域の高齢者らに対して避難マップを個別に作る取り組みを行っている。11月のオープンスクールでは、防災公開授業を行い、4年生は新聞紙を使った「防災スリッパづくり」に取り組んだ。

担当の山本栄教諭(51)は「防災教育は地道に続けていかないといけない。無理なくできる範囲でやっていきたい」と話した。
津田中は2010、11年度のグランプリを含め、昨年度まで4年連続で「ぼうさい大賞」を受賞。防災教育の取り組みは今年度で9年目に入った。
新たな取り組みとしては、「南海地震発生後の復興まちづくり」をテーマとした発表を、紙媒体だけでなく目に見えるジオラマにした。地域住民への防災意識調査は、「東日本大震災前後の意識の変化」をテーマに5年前と同じ質問で実施。8月には、徳島大が開発したタブレット型パソコンによるバーチャル避難訓練を2年生28人が行った。

「STみなみ」が「だいじょうぶ賞」受賞 2年連続/香川
高松市立太田南小の児童らがカラー舗装した歩行者用道路
2013年4月、高松市立太田南小の児童らがカラー舗装した歩行者用道路=高松市で、同小提供

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは、高松市立太田南小・地域安全チーム「STみなみ」が、防犯活動にも応用できる取り組みを表彰する「だいじょうぶ賞」に2年連続で選ばれた。

「STみなみ」は昨年6月、太田南小と太田南校区コミュニティ協議会、同校区連合自治会など地域団体が連携して設立。地域一丸となって子どもたちの命を守る取り組みが行われている。

太田南小は、全校児童約1000人のマンモス校だが、昨年9月から平日の毎朝、10~20人規模のグループで集団登校を始め、児童の安全意識が高まった。また、危険な交差点では、在校生、卒業生らが一緒となって、歩行者用の道路を約50メートルにわたって「カラー舗装」した。今年9月には、地域住民を含む約2200人が参加して、防災力強化訓練と防災学習を行った。【後藤豪】

大賞に「県立大イケあい」/高知

◇奨励賞・十川小 津波ぼうさい賞・須崎高 継続こそ力賞・愛宕中、高知工高

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、「県立大イケあい地域災害学生ボランティアセンター」が大学生部門の「ぼうさい大賞」に選ばれた。四万十町立十川小・十川小土砂災害教育プログラム推進委員会は奨励賞、県立須崎高が「津波ぼうさい賞」、高知市立愛宕中と県立高知工業高が「継続こそ力賞」を受賞した。【後藤豪】

ボランティアセンターは今年3月から活動し、学生約40人が参加。「未来に被災するだろうと言われる地域」を「未災地」と呼び、ゴールデンウイークに「未災地ツアー」を実施した。メンバーの他、関西や関東の学生ら15人も参加し、被災が予想される地域に対して何ができるかを考えるワークショップなどを開いた。

十川小・同小土砂災害教育プログラム推進委は、地域の防災マップづくりに取り組んでいる。研究者らと地域を歩き、急傾斜地は赤、土石流の恐れがあるところは青にしてポイントを地図に落としていくほか、マップ上の写真もすべて児童が撮影した。来年2月には、学区約300世帯に配布する予定だ。

須崎高は海に近く、東日本大震災以降、津波への危機感が高まった。活動は、2、3年生約30人でつくる「防災プロジェクトチーム」が中心。昨年度から今年度にかけて、▽学校北側地区の避難道の入り口に立てる誘導看板の製作(5カ所)▽初の中高合同地震津波避難訓練▽市役所と共同で津波防災学習用冊子の製作――などを行った。

愛宕中は、生徒たちが自分が住む地域の住民と一緒に避難場所や危険場所の調査をしたり、昭和南海地震(1946年)の体験者約30人から聞き取りを行った。ビデオ化し、来年1月に完成予定。

高知工業高は、2~3年生の生徒たちが南海地震のメカニズムや被害予想などについて、高知市内などの小中学校計8校で防災出前授業を行った。

鹿児島・黒神中がフロンティア賞/鹿児島

優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは鹿児島市立黒神中(下平譲校長)が「フロンティア賞」に選ばれた。同賞は、過去に応募が少なかった地域での取り組みが対象で、今年度新設された。

同中は、桜島の火口から約4キロに位置する全校生徒6人の小さな中学校。桜島の噴火活動が活発になっていることもあり、昨年度から本格的に防災教育に取り組んでいる。「知識・理解」「判断力」「実践力」の三つを活動の柱に据える。

桜島の「大正大噴火」から来年100年を迎えるのを前に、噴火によって埋没した鳥居や門柱など、校区にあるスポットをまとめた看板が1月に完成。学校に隣接した「埋没鳥居」周辺の清掃は、1947年の開校以来続いており、後世に大噴火を伝えようと努めている。避難訓練の際に地域住民への声かけや、高齢者を車いすに乗せて避難させる試みを昨年から始めた。

指導にあたる山崎隆洋教諭(37)は「桜島の歴史を学ぶことで子どもたちに自分の郷里に誇りをもってほしい」と話した。

2013年12月 7日

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