ぼうさい甲子園2016 表彰式・発表会


広がれ「犠牲ゼロ」 若者率先、道しるべ

優れた防災教育の取り組みを顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社・兵庫県・ひょうご震災記念21世紀研究機構主催、UR都市機構協賛=の表彰式・発表会が今月8日、神戸市中央区の兵庫県公館で開かれた。

12回目となる今回は、小学生、中学生、高校生、大学生の4部門に計136校(団体)の応募があり、44校(団体)が入賞した。グランプリ、ぼうさい大賞、優秀賞の8校の発表内容などを紹介する。

記念写真に納まる受賞者ら
記念写真に納まる受賞者ら=神戸市中央区の兵庫県公館で2017年1月8日、平川義之撮影

グランプリ

手作りの避難、実践 高知県立須崎高

須崎高(高知県須崎市)は、防災プロジェクトチーム代表の竹林俊輔さん(3年)と次期代表の濱口眞教さん(2年)が「須崎で奇跡をおこすために~オーダーメード避難プロジェクト~」と題して発表。約8年間、継続・発展させてきた防災への取り組みを紹介した。

今年度は、学校のある地区住民に向け個別状況に応じた「オーダーメードの避難カルテ」を作成して配布。一緒に避難場所まで逃げ、時間を計測した。「逃げても助からんろう」との高齢者の声を聞き、「地震や津波で誰も死なせてはいけないとの決意からだった」と取り組みの理由を明かした。また、昨夏に上級救命講習を修了した3年生が、昨年12月の須崎市総合防災訓練で機能的に活動できた経験を踏まえ、技術向上を新たな目標に掲げると述べた。

最後に2人は、昨年末の高知県知事との対談で高校生が主体となる防災啓発や避難訓練を提言したことに触れ、他校とのネットワーク作りの重要性も訴えた。

小学生の活動に刺激 司会の芦屋高2生徒

発表会の司会は、兵庫県立芦屋高放送部の服部鈴香さん(2年)=写真右=と原田彩花さん(1年)=同左=が担当した。会場の隅々まで言葉が正確に届くよう、ゆっくりと大きな声で学校紹介をした。

芦屋高ボランティア部は津波ぼうさい賞を受賞。2人は、司会を務めながら他校の取り組みを注意深く聴いて防災教育への関心を高めたという。服部さんは「小学生が避難訓練のために屋外で寝泊まりする活動報告もあり、驚いた。芦屋高校もそうだが、地域住民の人たちと協力して避難訓練をしていた。地域が一体となって取り組む姿勢の大切さを改めて感じた」と話した。

「すごく緊張した」という原田さんは「防災の手段がたくさんあると知り、勉強になった。こういう機会があれば、また頑張りたい」と笑顔で話した。

復興の願い、歌に乗せ 神戸・西灘小合唱団

表彰式は、神戸市立西灘小6年生45人でつくる「しあわせを運ぶ合唱団」の歌声で幕を開けた。音楽の力や復興への願いをテーマに同校の臼井真教諭が作曲した「歌は音楽の天使」「笑顔の向こうに」「しあわせ運べるように」の3曲を披露した。

子どもたちは、おそろいのベレー帽姿で登場。阪神大震災の3年後に作られたことや双子の子どもを亡くした母親が作詞したことなど、歌に込められた思いを1曲ずつ紹介。さびの部分では手話を交え、息の合ったハーモニーを響かせた。

団員の岸本浩聖さんは「緊張したけれど地震に負けない心を強調して歌うことができた。地震の恐ろしさを忘れずに伝えていきたい」。指揮をした6年担任の芝奈穂美教諭は「子どもたちには自分に置き換えて被災地のことを考えられるようになってほしい」と話した。

講評

取り組み定着、実感 選考委員長・河田恵昭 人と防災未来センター長

防災教育の取り組みが着実に広がり、定着してきていることを感じた。審査は地域性、独創性、自主性、継続性の四つの観点から行った。グランプリの高知県立須崎高は、避難を諦めている高齢者をはじめ地域全体の防災意識を高めたことが高く評価された。

ぼうさい大賞では、徳島県阿南市立津乃峰小は、児童が主体的に防災に取り組んだ。石川県能登町立小木中は小規模校ながら地域全体の防災力向上に貢献した。静岡大・藤井研究室は2年連続の大賞受賞で、防災における教職の専門性を育んだ。

日本は災害や防災減災について世界最先端の研究をし、情報を発信しているが、実践されなければ意味がない。情報を教育に反映させ、実践することで災害の被害が少なくなる。

今後とも、ぼうさい甲子園を中心に、教育の中でどう防災を進めるかが、国の防災力を決める大きな一歩となる。また、防災について考えることを文化として根付かせなければいけない。誇りをもって防災教育の活動に主体的に取り組み、継続してほしい。

2017年01月25日特集面

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