ぼうさい甲子園2017 受賞団体の取り組み


受賞団体の取り組み——地域面から

津乃峰小がGP受賞 年間計画で防災力高める 那賀高、撫養小なども入賞 /徳島

 優れた防災教育や活動を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内から阿南市立津乃峰小がグランプリに選ばれた。このほか、安全なまちづくりに取り組んだとして県立那賀高と「こどもプロジェクト1・2・3」(石井町)が「だいじょうぶ賞」、先進的取り組みがあった「フロンティア賞」に鳴門市撫養小5年生、「継続こそ力賞」に徳島市津田中・防災学習倶楽部がそれぞれ選ばれた。【山本愛、山口知】

 津乃峰小は昨年度の「ぼうさい大賞」に続く受賞。地域の実践活動に加え、教育年間計画「クロスカリキュラム」で総合的に防災の力が身につくよう学校全体で取り組む。

 那賀高は、近くを流れる那賀川で氾濫のリスクがあり、2012年度に防災クラブを設置。防災や減災の活動を続けており、今年度は災害発生時、避難したことを示す「確認シール」を地域の住宅玄関に張ってもらおうと400枚を作製した。

 「こどもの健全育成」を目的に発足した「こどもプロジェクト」は、地元ケーブルテレビと協力して防災番組を制作するなど、子供の視点でユニークな活動を続けている。

 総合学習の時間を使って5年生が防災について学ぶ撫養小。児童側が体育館での避難生活訓練を提案するなど活発に活動し、運動会では防災の要素を取り入れた競技を実施した。藤倉新教諭は「児童主体の活動が、家族や地域に広がればいい」と話す。津田中はグランプリ経験もある常連校。避難食になるジャムを手作りし、近隣住民に配布。市施設での避難体験一泊研修には今年初めて地域住民にも参加してもらった。

いわき・江名中に特別賞 津波対応など学習 /福島

 優れた防災教育や活動に取り組む学校や団体を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、いわき市立江名中学校(新井達也校長)が、被災の経験や教訓から生まれた取り組みに与えられる特別賞「はばタン賞」に選ばれた。

 同校は東日本大震災の津波で被災した沿岸部にあり、体育館が2カ月あまり避難所となった。しかし、6年が経過し、当時幼かった在校生の危機感も薄らいでいることから「防災意識を継承し、行動できる力を養おう」と今年度、放射線・防災教育に取り組み始めた。

 行政担当者や専門家を招いた5回の学習会では全校生徒162人がハザードマップなどを基に自らの津波、原子力災害時の避難先を確認し、救助活動や建設中の防潮堤について学んだ。3時間の救命講習で修了書を得る▽避難所設営や炊き出しを体験する——など災害対応の担い手となることを意識した学年別プログラムも設けた。

 新井校長は「子どもたちが被災した地域の一員として防災を考えることで、とっさに動ける力や社会への興味を育んでくれれば」と期待する。【乾達】

「教科アイデア賞」に東金特別支援学校 DVD制作、地域へ配布 /千葉

 今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県立東金特別支援学校(東金市)が教科アイデア賞に選ばれた。2011年度の初受賞以来、7年連続の受賞となる。

 同校では自ら身を守る力を育もうと、「当たり前に身を守る」意識を児童生徒に広めている。命を守る手段を学習するオリジナルCD「あたりまえ防災」は以前から高く評価されていたが、今年度は映像を取り入れた続編をDVDとして制作し、11月に地域住民にも配布した。

 また、昨年度結成された有志による「あたりまえ防災隊」は今年度約40人が参加、「防災ウオークラリー」の運営や避難訓練の指導などを主体的に行っている。DVD映像の撮影を手がけたのも防災隊メンバーだった。

 「やってきたことを地域に伝えたい」「東金を災害に強い街にしたい」と児童生徒は意気込んでおり、防災担当の押塚雄史教諭は「子どもたちの活動が東金市全体に広がってほしい」と話した。

はばタン賞 白旗小と滝尾小の活動評価 /熊本

 優れた防災教育や活動を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは甲佐町立白旗小と御船町立滝尾小が、被災経験と教訓から生まれた優れた取り組みに贈られる「はばタン賞」に選ばれた。【山口知】

 白旗小は、昨年4月の熊本地震で被災した地域にある。同小児童101人のうち約1割が、仮設住宅から通学している。昨年6月、児童が校内で育てた季節ごとの花を仮設住宅の避難者に届ける「フラワースマイルプロジェクト」を始めた。今年は避難者と一緒に田植えや稲刈りも行った。避難者との交流は仮設住宅がなくなるまで続ける方針という。他にも活断層の見学や防災講演会なども行っている。

 滝尾小は熊本地震で起きた土砂災害により、通学路の国道445号が通行止めになった。復旧する昨年12月までは、近くの中学校で授業を実施。被災で防災教育の重要性を改めて感じたという。被災前は定期的に避難訓練をする程度だったが、今年度から各学年の授業に防災学習を取り入れており、作成する防災マップも地域住民と共有する予定だ。他にも今年の阪神大震災の「1・17の集い」に児童代表が参加した。

 

県内から3校輝く 優秀賞に印南中、熊野高リーダー部 新庄中はアイデア賞に /和歌山

 優れた防災教育や活動を顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内から印南町立印南中3年生と、県立熊野高Kumanoサポーターズリーダー部(上富田町)が優秀賞に輝いた。このほか、教科教育での優れた取り組みに対する「教科アイデア賞」は田辺市立新庄中が選ばれた。

 印南中は今年度、災害時要援護者の避難を重視してきた。9月の訓練では、3年生40人が車椅子に乗って避難。車椅子をけん引する用具がうまく使えないなど、利用者が災害時に直面する課題がよく分かったという。

 熊野高のリーダー部は部員56人。毎週火曜日の放課後に高齢者宅を回り、安否を確認するボランティア活動に取り組む。年間300軒近くを訪れ、家具が固定されているか確認したり、さまざまな要望を上富田町に伝えたりしている。池田聖輝也(ときや)さん(3年)は「お年寄りに深く話を聞いて、担当の先生に伝えるようにしている」と話す。

 新庄中は3年生が総合学習で防災について学ぶ。取り組みは「新庄地震学」と呼ばれ、週1回、英数国など9教科にちなんで防災を学ぶ。英語では外国人向け防災ガイドブックも作製している。他にも今年度から、東日本大震災の被災地で活動した海上保安庁職員など、防災活動を実際に体験した人の講演会も開いている。【山口知】

被災者に寄り添い続け 「継続こそ力賞」盈進中高 /広島

 優れた防災教育・活動などを顕彰する今年度の「ぼうさい甲子園」(1・17防災未来賞)=毎日新聞社など主催=で、県内からは盈進中学高校(福山市)が優れた活動を続けてきたとして、「継続こそ力賞」(高校生部門)に選ばれた。

 活動の中心である「ヒューマンライツ部」は、地域や国際社会の平和と人権の環を広げようと核廃絶の署名活動に取り組むほか、ハンセン病問題なども学ぶ。2011年の東日本大震災後は、被災地の支援や訪問など実施した。12年からは阪神大震災の遺族とも交流を始め、「被災地を忘れず、学び続ける」を合言葉に活動する。

 東日本大震災が3月11日だったため、毎月11日を「被災者に思いを寄せる日」に設定。同部や生徒会メンバーらが街頭に立ち、広島土砂災害なども含めて「被災地を忘れないで」と呼び掛けている。

 今年、宮城、福島両県を訪問した同部員の高校3年、高橋和(あい)さん(18)は「復興で建物や道路が新しくなり、被災の傷跡が見えなくなったが、被災者の心の悲しみは変わらない。寄り添い続けることが大切だ」と話している。【山本愛】

 

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