第41回毎日農業記録賞《一般部門》 最優秀賞


『酪農』から『楽脳』へ―55歳の挑戦―

月井 美好さん(64)=栃木県那須塩原市

『酪農』から『楽脳』へ―55歳の挑戦― 月井 美好さん(64)=栃木県那須塩原市

2004年、36年間のサラリーマン生活を終えてそれまで兼業だった酪農経営専業になった。牧場の広告塔となる差別化した牛乳を作ろうと考え、オリジナルブランド「那須高原ハーレー牧場の牛乳」を製品化した。  遺伝子組み換え飼料は使わず、牧草づくりに農薬を使わないことをPRしながら宅配をメーンに販売した。「安全で生産者の顔がみえておいしい」という評判が広まり、販路は拡大した。

福島第1原発事故の風評被害もあったが、幸い12年度の売り上げは回復した。これも品質重視の生産を続けてきた結果と感じている。今後も従業員全員が頭を使って知恵を出し、「楽脳」できる新しい酪農ビジネスモデル確立を目指す。

つきい・みよし

有限会社ハーレー牧場社長。妻、1男1女。美術品鑑賞と収集が趣味で、所有する絵画、版画、浮世絵、書、仏像などの一部を応接室に展示している。小学校で披露する構想も練る。

私の歩んだ道・歩む道

小池 美与志さん(84)=新潟市南区

私の歩んだ道・歩む道 小池 美与志さん(84)=新潟市南区

信濃川の分流に当たる中ノ口川河川敷で、現在約2ヘクタールの果樹を栽培している。とりわけ西洋ナシ「ル レクチエ」は、祖父が明治35年にロシア極東地方に旅行した際に西洋ナシに出会い、そのおいしさから栽培を決意したことが導入のきっかけだった。

生産は安定せず、収入にはならなかったが、祖父が残したものを絶やしてはなるまいと細々と栽培を続けた。今ではブランド果物として脚光を浴び、我が家の畑には「ル レクチエ発祥の地」の石碑が建立されている。

後継者の息子は1999年に他界したが、孫娘が後を継ぐと頑張っている。私もさらに栽培方法の改良に努め、孫娘の独り立ちを支えたいと思っている。

こいけ・みよし

新潟県旧茨曽根村(現新潟市南区)生まれ。西洋ナシやブドウ、モモなどの果樹栽培を続ける。1999年に長男、正一さんが急性くも膜下出血で急死。農業を志す孫娘のゆかりさん(27)に指導する日々を送る。

刑事より牛飼いを選んだ人生

塩田 薫さん(41)=香川県善通寺市

刑事より牛飼いを選んだ人生 塩田 薫さん(41)=香川県善通寺市

香川県の実家では両親が家畜人工授精所を経営しながら乳牛と和牛の繁殖を手がけていたが、自分は大阪で警察官、刑事として勤務していた。

しかし親の体調が思わしくなく、先行きに不安を感じる中で、自分が畜産業を継ぐかどうか苦しく悩む日々が続いた。できれば一生を警察官として全うしたかったからだ。

迷いを振り切れたのは、妻の両親や同僚から温かい励ましを受けたからだった。慣れない作業に奮闘する妻にも感謝の気持ちでいっぱいになった。

繁殖雌牛17頭で飼育を始めたが、5年で39頭、子牛25頭と目標に近づいてきた。警察時代に言い続けていた「うそはあかん」の信念をこれからも貫き、牛飼いをやっていく覚悟だ。

しおた・かおる

香川県善通寺市生まれ。1994年、大阪府警に採用、鑑識課などに所属。08年に警部補で退職、家業の繁殖牛飼育と牛の人工授精師を継いだ。妻、由紀さんとの間に1男2女。父、母と同居し7人で暮らす。

きゃべつ畑のひまわりに夢を託して

大脇 直美さん(47)=宮崎県高鍋町

きゃべつ畑のひまわりに夢を託して 大脇 直美さん(47)=宮崎県高鍋町

19歳で農家に嫁いだ。若さを理由に陰口を言われたくなかったので、夫と二人、しっかり頑張って生きようと誓い、自分たちの決めた道を歩んできた。今ではキャベツと白菜を約14ヘクタール栽培する露地野菜農家になった。 30代半ばからは、地域の女性農業者リーダー育成事業に参加し、米粉料理、シフォンケーキづくりと、地域生産品の加工・販売に取り組みを広げた。特産のキャベツのPR活動にも力を注いだ。

2010年に発生した口蹄疫で畑にまけないたい肥に代わってヒマワリの栽培が地域で拡大し、ヒマワリ畑の景観を売り物とするイベントを始めた。地域、世代間の協力を深める好機となっており、今後は消費者との交流拡大につなげていきたい。

おおわき・なおみ

宮崎県川南町出身。19歳で看護師をやめキャベツ農家へ嫁ぐ。若手農家の嫁を集めた「農奥」を組織。視察や「嫁」ならではの悩み相談に乗るなど、後進の育成に励む。夫と息子が2人。

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