第49回毎日農業記録賞《高校生部門》優秀賞


目指せ世界!私の和牛戦記

若松彩唯華(あいか)=宮城県農業高3年

 「五感で会話しろ」。和牛農家の叔母の言葉だ。見るだけで牛と会話ができる叔母の姿に憧れ、牛飼いになるために進学した。1年の夏、初めて目にした子牛の誕生に感動した。姉妹のような関係を築いた。殺されておいしく食べてもらいたいなんて、牛はみじんも思っていない。食肉処理の日まで愛情をかけて育てることが最大の恩返しだと思うしかない。出荷のセリでは平均より20万円高い93万円で落札された。涙を流して牛を抱きしめた。来年1月の和牛甲子園で日本一を目指す。大学で学び、将来は叔母と肥育農家になる。

さるちゃん牧場物語

猿渡斗耶(とうや)=岐阜県立岐阜農林高3年

 乳牛40頭と育成牛、子牛が20頭いる。地域に親しんでもらうため「さるちゃん牧場」という名を付けている。仕事は家族総出だ。家業を継ぎたいと父の母校へ進んだ。母がジェラートの製造販売を始めたので6次産業化を考え、食品科学科を選んだ。課題研究は「徳山唐辛子」の普及。体を温める辛み成分をジェラートに入れたら冬も売れるのではと仮説を立て商品化した。イベントでふるまうと大好評だった。ダム湖に沈んだ村の先哲の知恵をよみがえらせる意味を込め「温湖知辛」と名付けた。家族と地域を笑顔にできる牧場に家業を発展させたい。

人を笑顔に、地域を元気に。~私の考える地産地消~

野瀬空=滋賀県立八日市南高3年

 畜産を専攻している。昨年7月、アイスクリームの製造に力を入れているカフェのオーナーから、「八南牛乳」を使いたいと相談があった。夏休み返上で開発に取り組み、「八南みるく」が完成。農業の現場ではマーケティングのノウハウがまだ導入されていないと感じる。自分の作りやすさを優先している生産者が多いようにも思う。消費者の目線に立って農産物の魅力を伝えていくことが重要だ。栄養士になって、給食に地元食材を取り入れたい。「作り手」の思いを「食べ手」に届ける「伝え手」を目指す。

農業と自然によりよい未来を

岩山泉(りな)=兵庫県立農業高3年

 11歳の時、獣医師に密着したドキュメンタリー番組を見た。獣医師になる確固たる夢を持った。動物学科に進み、ニュージーランドに短期留学。野生動物を取り巻く環境整備を考えた。3年生で、アライグマを研究した。アニメの影響で飼育が増えたものが放棄され、食害被害を広めている。県、加古川市の指導で生態調査し、エサを仕込んだわなで捕獲。心で謝罪しながら自分で殺処分した。涙が止まらなくなった。減らせるのは奪う命だけではない。農家の負担も減らすことができる。人生をかけて、より良い環境を追い求めていこうと思っている。

ブルブルでサステナブル

福田全宏(まさひろ)=奈良県立磯城野高3年

 エアポンプの作動で発生する振動を栽培中のトマトに常時伝えることで、害虫の発生を抑えようとしている。施設園芸科では毎年、主要作物のトマトが黄化葉巻病の被害を受けている。媒介するオンシツコナジラミは殺虫剤抵抗性を持ち、駆除が難しい。時代はSDGs。化学農薬を減らす病害虫管理技術(IPM)に取り組んでいる。生物的防除も重要で、微生物農薬や有用菌の散布もしている。琉球大がトマトに振動を与えることで産卵を抑制する研究をしていることを知り、応用した。サステナブルな農業経営に期待する。

稲作農家における循環型農業の提案について

牧紗也華(さやか)=広島県立西条農業高3年

 姉妹校・フィリピン大付属ルーラル高で、稲わらを用いたキノコ栽培の研究が進んでいる。日本ではもみ殻の多くが産廃処理されている。ル高のアイデアが応用できると考え、もみ殻を使ったキノコ栽培を研究した。キノコの菌糸はもみ殻の成分を崩すので、生産を終えた菌床を土にすき込んでも、土壌改良材として有益な堆肥(たいひ)になると考えた。コマツナを栽培したところ生育が早く、効果が見られた。もみ殻の利用で、一つの循環型農業の確立を目指す。稲作の両国に共通する課題の解決にもつながる。

私が目指すBamboo Project ~農業で解決する放置竹林問題~

石丸陽翔(ひう)=長崎県立諫早農業高3年

 ほ場に生えてくる竹をどうにかできないかと祖父に相談された。地元企業からは、竹に含まれる成長阻害物質の有効活用の研究依頼を受けた。竹の主成分は分解が難しいので処理が困難だ。伐採活動で竹を調達、竹パウダーを作った。農地に散布したが、成長阻害効果は確認できなかった。そこで、成長阻害物質は水溶性ではないかと仮説を立てた。馬鈴薯(ばれいしょ)で栽培実験し、雑草抑制とソウカ病の抑制を達成した。来季から地元で技術導入と共同研究が決まった。放置竹林約5100㌶の削減につながる。

地域の宝『日本一の干し大根と大根やぐら』が教えてくれたこと ~伝統文化継承に向けた私の挑戦~

小倉鈴菜=宮崎県立宮崎農業高3年

 宮崎は加工用大根の出荷量日本一。干し大根をつくる「大根やぐら」は冬の風物詩だ。95%以上の農家が化成肥料を使っているが、有機肥料でも干し大根の規格に適し、食味調査も同じことを栽培で確かめた。農家や行政と協力し、大根やぐらの「日本農業遺産」認定を実現。県内外を対象に「たくあんオンラインツアー」を企画した。日韓高校生のオンライン交流会にも参加。日本のたくあんと韓国のキムチとで、なぜ伝統の継承に差が出るのかを考えた。そこにカギがある。

小さなきっかけから始まった私の青春の1ページ

加藤精菜=鹿児島県立市来農芸高2年

牛のすべてが新鮮だった。担当の先生は牛を見るだけで、体調が分かる。帰宅後は日誌に学んだことを書いた。リモートで開催される第4回和牛甲子園での目標は大会連覇。取り組みの発表が自分の担当だ。去勢牛の陰毛が白く結晶しているのを見て、カルシウムの低い飼料をとり続けると尿石症につながることを突き止めた。利尿剤の投与で牛の健康づくりを進めた。大会当日、全国33校の高校牛児がリモートでつながった。取り組み評価部門は最優秀賞。枝肉評価部門でも出品した牛が最優秀賞に選ばれた。

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