第62回毎日芸術賞を贈呈


 第62回(2020年度)毎日芸術賞(特別協賛・信越化学工業株式会社)の受賞者が決まり、3月24日に東京都文京区のホテル椿山荘東京で賞を贈呈しました。

 本賞を受賞したのは建築家の青木淳さん、西澤徹夫さん、演出家の鵜山 仁さん、美術家の鴻池朋子さん、作家の髙樹のぶ子さん、歌人の水原紫苑さんの6人です。特別賞は、TBS日曜劇場「半沢直樹」の制作者、出演者が受賞となりました。

毎日芸術賞を受賞した(左から)堺雅人さん、福澤克雄さん、鴻池朋子さん、西澤徹夫さん、青木淳さん、鵜山仁さんの代理で妻の丘子さん、髙樹のぶ子さん、水原紫苑さん=ホテル椿山荘東京で、2021年3月24日

 贈呈式での受賞者の喜びの声を紹介します。

 動画でもご覧いただけます(動画約9分)

 

建築

青木 淳さん、西澤 徹夫さん
京都市京セラ美術館の改修設計

 

青木 淳さん

 ◇時代に即した見方に挑み 青木 淳さん

 京都市京セラ美術館の改修設計で建築部門を受賞した建築家、青木淳さんは「建築の仕事に対し、芸術の賞をいただけたことは本当に光栄」と喜んだ。1970年代から設計に携わってきた青木さんは「僕らの世代は、新しくて格好良いものを一から作るというよりも、既にある目の前の世界をどうより良く変異させていくのかということがテーマになりました」と語った。

 33年建築の歴史ある建物に新たな息吹を与えたと評された点について「今の時代に即した新しい意味を見いだし、見方を変えさせるということに挑みました。その取り組みが評価され、本当にうれしい」と締めくくった。

 

西澤 徹夫さん

 ◇建物と対話しながら設計 西澤 徹夫さん

 京都市京セラ美術館の改修設計で建築部門を受賞した建築家、西澤徹夫さんは「古い建物を保存しつつ、現在のニーズに合わせていく非常に難しいプロジェクトでした」と振り返った。

 今回は青木淳さんと共同受賞となった。「なかなか最終形がイメージできず不安で怖い時期もありました」と打ち明けた西澤さんは、建物と対話しながら設計を進めたという。「この建物が背負う文化や歴史、未来の姿を想像しながら図面を引きました」

 受賞については「区切りではなく、まだまだ想像力を働かせ、対話をしながらこの仕事を続けていけと言われたようです」と語った。

 

演劇・邦舞・演芸

鵜山 仁さん
舞台「リチャード二世」(東京・新国立劇場)の演出とシェークスピア歴史劇シリーズ完結

 

鵜山仁さん

 ◇12年の継続、結束のたまもの

 舞台「リチャード二世」の演出と12年にわたるシェークスピア歴史劇シリーズの完結で演劇・邦舞・演芸部門を受賞した演出家の鵜山仁さんは公演を控えており欠席。ビデオメッセージで「12年の蓄積、継続は多くの人々の結束のたまもの」と感謝し、「シェークスピアや登場人物たちとも一緒に舞台を作ってきたと確信できる不思議な経験ができた」と述べた。

 

美術Ⅰ=絵画・彫刻・工芸・グラフィック

鴻池 朋子さん
「鴻池朋子ちゅうがえり」(東京・アーティゾン美術館)の展示

 

鴻池 朋子さん

 ◇感覚に作用するアートを

 「鴻池朋子 ちゅうがえり」展(東京・アーティゾン美術館)で美術Ⅰ部門を受賞した美術家の鴻池朋子さんは「贈呈式が今日で本当によかった。桜が咲く庭を見て、ひとしお気持ちに響きました」と晴れやかな表情で語った。

 東京での個展は約10年ぶり。新しく生まれ変わったばかりの美術館での開催で、同館が現代美術を扱うのも初めて。コロナ禍もあったが「あるもので何とかしようとする美術館の方々の姿勢が大きな支えとなった」と振り返った。

 芸術の概念も、再考する時期に来ている。「人の感覚に作用するアートを、いろいろな分野の方々と対話しながら作っていきたい」

 

文学Ⅰ=小説・評論

髙樹 のぶ子さん
「小説伊勢物語業平」(日本経済新聞出版)

 

髙樹 のぶ子さん

 ◇本の中から業平また成長

 「約1100年前の男を、小説として現代に甦(よみがえ)らせました。この冒険を評価されて大変うれしい」。『小説伊勢物語 業平』(日本経済新聞出版)で文学Ⅰ部門を受賞した髙樹のぶ子さんは、そうスピーチを切り出した。

 加えて今作では、新しい発見があったという。「いろんな方から評価や解釈をいただき、本の中から業平がさらにいい男に成長しています。こういう体験は私の作家人生で初めて」。そして「私を、というより、業平を選んでくださってありがとうございました」と声を弾ませた。次作について「業平に劣らずいい女、小野小町を書く予定です」と明かし大きな拍手を浴びた。

 

文学Ⅱ=詩・短歌・俳句

水原 紫苑さん
歌集「如何なる花束にも無き花を」(本阿弥書店)

 

水原 紫苑さん

 ◇これからの一首が勝負に

 第10歌集『如何なる花束にも無き花を』(本阿弥書店)で文学Ⅱ部門を受賞した歌人の水原紫苑さんは「夢にも思わず、すごく驚きました」。

 古典和歌に造詣が深く、在原業平や小野小町らを輩出した「本当にいい時代」に対し、「いま私が短歌をつくることに一体何の意味があるのか」を常に問い続けているという。そうしたなか、昨年来のコロナ禍を「ピンチであるとともにチャンス」と捉え、「どんな言葉を出すことができるかは分かりませんが、昨日までの歌は関係ありません。これからの一首が勝負なんです。そのために賞をいただいたと思っています」と力を込めた。

 

特別賞=放送

TBS日曜劇場「半沢直樹」の制作者・出演者
TBS日曜劇場「半沢直樹」の企画・制作

 

 
福澤克雄ディレクター
堺雅人さん
 

 ◇視聴者への感謝にあふれ

 特別賞を受賞したTBS日曜劇場「半沢直樹」の制作者・出演者を代表してTBSの福澤克雄ディレクターは「小学校から大学までラグビー一筋。一切演出なんてやったことがなく、こうした賞を頂けるなんて夢にも思っていませんでした。本当にありがとうございました。これからも働く皆さんを元気にする番組を作っていきたい」とあいさつ。

 主演の堺雅人さんは「いろんな人に感謝したいのですが、やはりテレビを楽しみにしてくださっている皆さんに感謝したい。熱い面白いものを見たいと思ってくださる、その力が僕たちを本気にさせ、もっともっと頑張らないとと思わせてくれる」と感謝した。

 

受賞者略歴

■青木淳(あおき・じゅん)さん
東大院修了。代表作に「ルイ・ヴィトン表参道」「青森県立美術館」など。京都市京セラ美術館長。64歳。


■西澤徹夫(にしざわ・てつお)さん
東京芸大院修了。代表作に「東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー」改修、「八戸市新美術館」など。46歳。


■鵜山仁(うやま・ひとし)さん
奈良県生まれ。慶応大卒。1982年、文学座座員になる。2007~10年、新国立劇場演劇芸術監督。主な演出作に「グリークス」など。00年毎日芸術賞千田是也賞など受賞歴多数。20年紫綬褒章。67歳。


■鴻池朋子(こうのいけ・ともこ)さん
秋田県生まれ。さまざまな地上の物質、地形や天候、観客の身体をも作品空間に取り込み、これまでの芸術を学際的に検証。根源的な問い直しを試みている。2017年芸術選奨文部科学大臣賞。60歳。


■髙樹のぶ子(たかぎ・のぶこ)さん
山口県生まれ。1980年、作家デビュー。84年「光抱く友よ」で芥川賞、99年「透光の樹」で谷崎潤一郎賞など多くの文学賞を受賞。2017年、日本芸術院会員。18年、文化功労者。74歳。


■水原紫苑(みずはら・しおん)さん
横浜市生まれ。早稲田大学大学院仏文修士課程修了。春日井建に師事。歌集に「びあんか」(現代歌人協会賞)、「あかるたへ」(若山牧水賞)、「えぴすとれー」(紫式部文学賞)など。61歳。


■福澤克雄(ふくざわ・かつお)さん
1964年1月17日生まれ。東京都出身。慶応大時代はラグビーで日本一に。89年にTBS入社し、演出作は数多い。福澤諭吉の玄孫(やしゃご)として知られる。


■堺雅人(さかい・まさと)さん
宮崎市出身。早稲田大在学中、劇団「東京オレンジ」の旗揚げに参加。舞台や映画でも活躍。

顕彰のイベント一覧へ

顕彰