特集 毎日地球未来賞創設
毎日地球未来賞創設 「食料」「水」「環境」 課題解決のために
毎日新聞社は創刊140年記念事業として、「毎日地球未来賞」(協賛・株式会社クボタ)を創設する。毎日国際交流賞を発展的にリニューアルさせて、21世紀の地球規模の課題である「食料」「水」「環境」の3分野で問題解決に取り組む個人や団体を顕彰、その活動を広く伝えることで市民の理解を深めるものだ。市民と団体や企業が手を取り合って共存する、「未来賞」が目指す世界をみよう。
第4回毎日国際交流賞受賞のJVC 野菜、井戸、森――生きる力を届ける
毎日地球未来賞の前身、毎日国際交流賞を受賞した中にも「食料」「水」「環境」に関する問題解決を活動テーマに挙げる団体・個人は少なくない。第4回毎日国際交流賞を受賞した日本国際ボランティアセンター(JVC)は活動に3テーマがすべて含まれる団体だ。
「食料」では南アフリカのHIV(エイズウイルス)陽性の患者の支援活動が挙げられる。エイズを発症しないための栄養の確保のため、家庭菜園づくりを指導している。経済的に困難な状態で生きている人たちに庭でトウモロコシ、トマト、キャベツなどの野菜の育て方を研修で教える。「自分の力で生きていける」という自信が生まれることにもつながっているという。
「水」ではカンボジアなどでの井戸掘り支援が知られている。現地の人が自力で整備できるように、あえてセメントの枠組みづくりだけ支援し、他の作業は自分たちでするように促す。水を常に得られるよう、「井戸をどこに作り、どう管理するか」について話し合いを重ねる。こうした支援はラオス、スーダン、アフガニスタンでも実施している。
「環境」については、ラオスで展開している「森を守る」取り組みが挙げられる。ラオスは豊かな森で知られ、人々も森から食料や建材など暮らしの糧を得ている。だが、最近は日本を含む海外企業の進出が盛んで、森林の伐採も進む。そこで、住民に自らの財産を守るための法的な権利擁護の方法などについて研修を開き、自分たちで環境と暮らしを守れるように支援している。「木を植える」のではなく、現地の人が緑を守れるように取り組んでいるのが特徴だ。【伊地知克介】
被災農家支援、苗作りや消費も
東日本大震災の後、クボタは多方面にわたり、被災地支援活動を展開している。クボタの実例を通じ、企業の社会貢献のあり方を考える。
クボタが被災地で最も力を入れているのが農家の支援だ。その一つが、津波被害にあった水田の塩分を除去する実証試験。5月下旬から、農業法人から約200アールのほ場の提供を受け、宮城県名取市で7種類の試験に取り組んでいる。土壌改良剤を組み合わせ、雨水を利用して塩分の地下浸透を促す。得られたノウハウを被災地に提供することを検討している。
津波は免れたものの、稲の苗作りが間に合わなかった農家も支援している。鉄粉を薄くコーティングした種もみを機械を利用して直接水田にまく方法で、5月下旬に宮城・福島の両県で実施した。鉄でコーティングすることで表面が硬くなり、鳥に食べられるのを抑えられる。鉄の重みで種もみも安定するという。10月には収穫を見込む。
この他にも、被災地農産物の購入・消費や雇用支援にも取り組む。4月から、福島や茨城など東北・関東4県の農産物を使ったメニューを、全国13カ所の社員食堂で提供している。協賛イベントでの被災地の農産物販売も企画している。また、12年春に岩手、宮城、福島県の高校生を十数人採用する。当面10人前後採用する予定だ。【植田憲尚】
第1回毎日地球未来賞 募集の概要
募集対象
21世紀の地球規模の課題である「食料」「水」「環境」の3分野で、国内外の問題解決に取り組んでいる個人や団体
東日本大震災が起きた年に創設することから、当面の間、被災地で3分野にかかわる復興支援を行う団体・個人も対象に加える
選考
地方自治体、ボランティア・国際交流関係者などの推薦(自薦可)と、本社取材網の情報を基に選考委員会が審査、決定
選考委員会
【選考委員長】
- ・増田寛也=野村総合研究所顧問、前岩手県知事、元総務相、毎日新聞・震災フォーラムメンバー
【選考委員】
- ・横山光弘=国連食糧農業機関(FAO)日本事務所長
- ・沖大幹=東大生産技術研究所教授
- ・あん・まくどなるど=農漁村研究家、国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット所長
- ・久保俊裕=クボタ取締役常務執行役員
- ・岸井成格=毎日新聞社主筆(敬称略)
賞
- ・毎日地球未来賞=賞金200万円
- ・クボタ賞=賞金150万円
推薦書の請求・送付先
締め切り
11月11日
発表
12年1月の毎日新聞紙上
主催 | 毎日新聞社 |
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後援 | 内閣府、外務省、農林水産省、厚生労働省、環境省、国土交通省 |
協賛 | 株式会社クボタ |
毎日地球未来賞創設 クボタの取り組み、久保俊裕常務に聞く
現地の実情に即して
クボタは「For Earth、For Life」というスローガンで、食料・水・環境分野における課題への挑戦を掲げ、事業のみならず社会貢献にも取り組んでいる。東日本大震災でもさまざまな支援に取り組む。クボタで社会貢献活動を担当する久保俊裕常務に、取り組みを聞いた。
東日本大震災での被災地支援について一番重視したことは何ですか。
現地の実情や段階に応じた支援を考えていくことです。少しでも早く、必要な物資を送りたい気持ちになりますが、現地の実情を踏まえないと受け入れ先が困るだけです。そこで、義援金拠出をすぐに実施しました。その後は、建設機械の提供や農地の復旧支援などに取り組みました。現地営業所からの報告を通じ、ニーズを踏まえて段階的に行っています。
95年の阪神大震災での教訓をいかしたそうですね。
阪神大震災では、社内の支援体制作りの前に早く救援物資を送らなければという気持ちがはやって、ある地区には届けられても隣の地区には届いていない、ということもありました。また受け入れ先が見つからず、混乱しました。当時の対応は記録に残し、今回も参考にしました。
毎日地球未来賞に何を期待しますか。
89年から毎日国際交流賞を協賛し、NPO(非営利組織)やNGO(非政府組織)を支援してきました。当時はそのような支援制度は珍しかったと思います。それが、今や多くの企業がNPOやNGOを支えています。そこで我々の重点分野に掲げる食料・水・環境に絞って、草の根活動を、また、当面の間は震災で活動する団体も支援しよう、と考えています。【植田憲尚】
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