第38回毎日農業記録賞 《一般部門》 優秀賞②


山里での農村生活、三十年をかえりみて

中川ナツ子さん(74)=新潟県柏崎市、農業

無人販売所のシンボルだったフクロウを手に
無人販売所のシンボルだったフクロウを手に

火を出し、隣家を全焼させてしまった。申し訳ないのに地域から励まされたことが、生き方を決めた。お返しにと88年、道端にパラソルを立てただけの無人販売所を始めた。近くの女性も加わり、翌年には丸太の店に。客の求めで始めた無農薬野菜の漬物は横浜のスーパーにも出荷した。中越地震後に食料品店が欲しいと頼まれて06年にスタッフ約10人の直売所を開設。今年で店長は退いたが、最後の恩返しとして技術を伝えていきたい。

なかがわ・なつこ

新潟県柏崎市生まれ。25歳で結婚。91年に地元主婦らのグループで漬物製造・加工の許可を取った。96年には昔話を語る「柏崎語り部の会」、03年には方言で昔話を演じる劇団「よったり座」を結成した。

飛騨美濃じまんの原石「つるむらさきうどん」

杉山ミサ子さん(66)=岐阜県関市、団体代表理事

つるやの天ぷら用に栽培するツルムラサキの畑で
つるやの天ぷら用に栽培するツルムラサキの畑で

夫の古里に一家で転居し、河原を開墾した。しかし夫が急逝。旧町役場に就職し、特産品開発担当になった時、ツルムラサキに出合った。農業婦人クラブを作って栽培したが、食べ方が分からない。試行錯誤の末、粉末にして小麦粉と混ぜ、うどんに。イベント時に出すだけでは特産にならないと、古民家を改造した農家レストランを00年に開店。まだ赤字だが、うどんを踏む80歳の女性の笑顔にいつも励まされている。

すぎやま・みさこ

熊本市育ち。東京の大学へ進学して就職、結婚。子育てには田舎がいいとの思いもあって武芸川へ。「よそ者」の目線でまちの活力を仲間と探す。武芸川町特産品開発企業組合(http://www.e-tsuruya.com)代表理事。

ピンチとチャレンジは、自分磨きの最大のチャンス!

竹内友子さん(45)=三重県多気町、畜産業

子牛買い付けで九州まで走らせることもあるトラックで
子牛買い付けで九州まで走らせることもあるトラックで

和牛420頭を肥育している。結婚して23年、大きなピンチが3回あった。酪農業からの転換、夫の交通事故、私の闘病生活。感謝の気持ちを忘れず、今を楽しもうと過ごすようになった。挑戦も自分を磨く。小学生の牛舎見学は面倒だが、感謝の手紙は本当にうれしい。口蹄疫(こうていえき)発生で宮崎から牛を導入できなくなり、夫婦でトラックを運転し初めて熊本まで買い付けに行った。苦労やチャレンジは自分を輝かせる。

たけうち・ともこ

出産のため電気製品などの規格審査会社を退社した後、「農」の世界に。農業女性の会「フルフルM.I.T」に所属し、イベントでは産品販売に声をからす。趣味はご朱印を集める寺巡りとドライブ。7人暮らし。

息子達へ

福原昭一さん(55)=滋賀県彦根市、有限会社フクハラファーム

トラクターに乗り込む。田は広い
トラクターに乗り込む。田は広い

26歳の時、父の病死で就農。大規模な区画整理に刺激されて専業に。アイガモ農法による手間ひまかけた稲作と、徹底した効率化を同時に進め、今は経営規模約150ヘクタール。働く若者も集まり、従業員は15人を超えた。

生育状況を携帯カメラで入力するなど作業のデータ化に取り組む。発見力やコスト意識の喚起が息子たち(若者)を育てると確信するからだ。そして作業は単純かもしれないが奥は深い、だから「おもしろい」と伝えたい。

ふくはら・しょういち

近畿大理工学部卒。94年に彦根市で第1号の農業生産法人フクハラファーム(http://www.fukuharafarm.jp/)を設立した。3人の息子も農業に携わる。「趣味は農業」。若いころはスポーツカー、今は四駆に乗る。

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