第41回毎日農業記録賞《高校生部門》優秀賞
雑穀でみんなを笑顔に
北原 直樹さん(18)=長野・上伊那農業高校3年
私の住む長野県南部は、かつて雑穀の栽培が盛んだった。高校では、雑穀の栽培と普及に取り組んでいる。
東日本大震災の発生を受けて、栄養価に富む雑穀を被災者に食べていただこうと考えた。試行錯誤を重ね「雑穀カレー」を開発、宮城県の石巻北高校に届けることができた。
カレーは改良を重ね地元でも販売した。石巻北高校との交流も拡大した。今年は地元の小学生に雑穀を知ってもらうための食育活動に力を注いでいる。
きたはら・なおき
3世代7人で暮らす。幼いころの農業体験が、将来を決める源になっている。担任教諭は「芯がありぶれない生徒。おとなしいが一歩前に出る強さがある」と評価する。
お茶の販路拡大を目指して
杉本 和生さん(18)=静岡・磐田農業高校3年
我が家はお茶の専業農家だが、地域の現状は厳しい。お茶栽培を守るため、我が家を含む3農家は茶園共同管理と農作業受託の会社を発足させている。
良質の茶作りにも力を注いだ。肥料や水を工夫し、できた茶を父にほめられた時は何よりうれしかった。 しかしせっかく良いお茶を作っても消費者はなかなか振り向いてくれない。どうすれば消費量が増えるのか。さらに勉強し、我が家のお茶のファン作りに精進したい。
すぎもと・かずき
高校では陸上部に所属し、全国高校駅伝県予選会に最終7区の走者として出場し、ゴール後倒れ込むほどの力走を見せた。6人家族で、尊敬する人は父だという。
無農薬栽培を通して学んだこと
切江 美桜さん(16)=愛知・鶴城丘高校2年
学校で昨年、コシヒカリの完全無農薬・有機栽培に挑んだが、稲を食い荒らすジャンボタニシの被害は大きかった。農業とは自然とのたたかいであり、農薬を使う農家の気持ちが分かる気がした。
ジャンボタニシの生態観察を通じ、農薬を使わずとも被害を抑える方法があることを知った。水田が稲だけでなく、多くの生き物を育んでいることも学んだ。食料生産だけでなく環境保全にもつながる無農薬栽培についてさらに勉強したい。
きりえ・みおう
両親と姉、弟の5人家族。高校では美術部と野菜などを栽培するバイオ同好会に所属。県の農産物のキャラクターに応募し、キャベツにコアラの耳を付けた作品が入選した。
紫は夢の色
手島 千波さん(18)=兵庫・県立農業高校3年
地域の農業を元気にしたいと考えていた私の元に、ある日、地域で古来生産されてきた紫黒米を使ったシフォンケーキができないかという相談が地元企業から舞い込んだ。
何度試作しても紫色でなく灰色になるケーキ。試行錯誤の末、原因を突き止め突破口を見いだした。県や地域の農業団体からも応援を受けるようになり、工夫を重ね、ついに商品は完成した。紫色にこだわり、地域の食材にこだわり、食の安全と安心にこだわった成果だと感じている。
てしま・ちなみ
お菓子作りが好きで、「将来はケーキを作る仕事に携わりたい」と食品科学科に進学。学校では「食を科学する研究グループ」の唯一の3年生として後輩を指導している。
廃棄チーズを用いた土壌改良の試み
水野 宏紀さん(17)=兵庫・県立農業高校3年
高校では土壌改良の研究に打ち込んでいる。そもそもは、野菜の無農薬栽培を貫いていた祖父が他界し、荒れた畑を美しくよみがえらせて、祖母に元気になってもらいたいためだった。
地元の乳製品工場から廃棄チーズを使った発酵肥料の提供を受け、大きな成果が出たことから、自分でも作ることを思い立った。作成過程での悪臭抑制が大きな課題だが、地元企業から材料の提供を受け数種類の肥料作りに挑戦している。
みずの・ひろき
実家は非農家で「父母とも農業に関心はない」というが、亡くなった祖父の無農薬野菜作りへの考えに触発され農業に目覚めた。土壌肥料学への関心が強く、同分野での研究者を目指している。
産声をあげた女子高生家畜人工授精師
砂田 智子さん(18)=岡山・高松農業高校3年
サラリーマン家庭に育ったが、動物が好きで、高校では乳牛飼育を専攻している。先輩や先生に教わりながら一つ一つの作業を習得し、共進会出場などの経験を積む中で、酪農が多くの専門家の支援を受けて経営が成り立つことを知った。
自分も酪農家をバックアップする仕事に就きたいと考え、家畜人工授精師の資格取得に挑戦した。高校生での講習会参加は自分一人だったが、無事、合格することができた。私の挑戦は続く。
すなだ・さとこ
昔から動物好きだったことから、高松農高への進学を両親や姉に薦められた。家畜人工授精師の資格を取得した後、現在は牛の卵巣の形状や異常を触診し、見極める研究を行っている。
土佐あかうしとわたしの使命
谷内 加奈歩さん(18)=高知・高知農業高校3年
心を込めて世話をした乳牛が子供を産めない体で、出荷が決まった。厳しい現実だが、そのことが畜産についてもっと勉強したいと思うきっかけになり、地元に貢献できる飼育農家になりたいと思うようになった。
高知で飼育される土佐あかうしは飼育頭数が年々減っているが、学校で飼育していた牛の肉を販売したところ消費者の評判は上々だった。将来は土佐あかうしの飼育農家となり、この牛肉のおいしさをもっと広めたい。
たにうち・かなほ
両親と弟、妹の5人家族。酪農を将来の仕事にしたいと考え、高知農高畜産総合科に進んだ。第64回日本学校農業クラブ全国大会の農業鑑定競技会(畜産)で優秀賞受賞。
私が農業後継者になる!
小川 未来さん(16)=長崎・諫早農業高校2年
生まれ育った大阪では農業と無縁だったが、専業農家の祖父母の住む長崎に家族5人で引っ越したことが運命の転機になった。誰が農業を継ぐか話し合った結果、白羽の矢が立ったのは私だった。
進学先には諫早農を選び、祖父母の作業を手伝ううちに、やりがいと課題の双方が分かってきた。先進農業経営者を訪問して加工や販売の大切さを知った。農業経営は甘くないだろうが、私は自分で決意した。私が後継者になる。
おがわ・みき
中学まで大阪府岬町で過ごす。明るい性格で、時に大阪弁交じりに話す。絵を描くことが好きで、高校では文芸部所属だが「周りが本を読んでいるなか、イラストばかり描いている」という。
私の目線!農業と出会い自信と希望を見つけた
渡辺 一美さん(18)=宮崎・宮崎農業高校3年
私は先天的に足が不自由だが、自分でできることは何でも挑戦してきた。祖父母が農業で生き生きと働く姿をみて、宮崎農への進学を決めた。
実習では自分のできることを見つけ、自分の役割を果たせるよう努力した。車いすだから無理と考えることなく、「どうしたらもっと作業がスムーズにいくのか」考える習慣が身についた。人より低い視線はハンディではなく、私にしか見られない世界なのだ。
わたなべ・かずみ
特技はパソコンで、ワープロ検定1級などの資格を取得した。小6から始めたアーチェリーでは、県の国体強化選手に選ばれた経験もあり、2020年の東京パラリンピックに出場するのが夢。