第43回毎日農業記録賞《一般部門》 優秀賞
乗り越える先に咲く花を求めて
農業、高橋里子さん(63)=栃木県真岡市
当時は珍しかった花卉(かき)栽培に挑戦していた夫と結婚、菊の栽培を続けてきた。現在はスプレー菊を通年栽培し、年間約80万本を出荷する。フラワーアレンジメント技能資格を取得し、アレンジの技術を生かした花づくりに励む一方、第1期栃木県女性農業士として、仲間と共に農業振興に取り組んだ。今後も農業で地域を元気にしていきたい。
日本一うまいコンニャク作りで環境と地域を守る
農業、高橋治展さん(22)=群馬県東吾妻町
高校1年の時、コンニャク農家だった父を失い、後を継ぐことを決意した。卒業後、父の友人だった専門農家の下で2年間の研修を積み、昨年、コンニャク農家として第一歩を踏み出した。農業は長時間をかけて結果が出る。だから日々の積み重ねこそが重要だ。父が求めたコンニャク栽培を実現させるため、歩いていきたい。
地域と共に 仲間と共に
農業、臼井スミ子さん(76)=神奈川県厚木市
養豚経営を息子に譲り、大豆、お茶、米を栽培する。仲間を増やしながら地域でのみそづくりを続けてきた。女性初の市農業委員となってからは農業者年金への加入を呼び掛ける一方、自分たちで栽培した野菜の加工販売に挑戦し、ボーナスも払えるほどになった。作物は手をかければ応えてくれる。父の言葉を胸に、「農の女」として一生を送りたい。
おいしく笑って健康で~地域の中で地域と共に生きる
工房経営、寺坂律子さん(59)=福井県越前町
農業を始めたのは、ダウン症の長男のためだった。無農薬栽培の食材が手に入らず、自分でやるしかなかった。以来、無農薬で米と桃の栽培を続けてきた。現在、特別栽培米を使ったみその製造販売を手がける。地域の人たちは温かく受け入れ、応援してくれる。今後も他の人たちから目標とされるような農業を展開したい。
新舞台に立つ
農業、臼ケ谷博司さん(75)=静岡県藤枝市
歌舞伎座が新装された2年前、私も新たな舞台に立った。茶園の茶を植え替えたのだ。皇室に献上するお茶農家に選ばれたこともある。70歳を過ぎての決断には勇気がいったが、人間は立ち止まってはいけないと思った。父は「土づくり」は「人づくり」に通じると説いてくれた。農家も多様化してきたが、人々とのつながりを大切にしながら、農業を営んでいきたい。
無農薬レモンに恋をして
農業、河合浩樹さん(53)=愛知県豊橋市
温室内の鉢植えでレモンを栽培している。病害虫に強く、高品質のレモンだ。害虫の天敵を利用した防除や善玉菌を使った肥料の使用などの工夫もしている。東京都内の超高級スーパーに販売していた無農薬レモンを突然半値にされ、どんなに良いものを作ってもそれを多くの人に知ってもらわなければだめだとも悟った。今後も地域に愛される農業を目指し励みたい。
専業主婦から専業農家に
農業、小林靖子さん(56)=三重県大紀町
引退する農家からハウスと道具を借りて1997年、38歳でイチゴ栽培を始めた。地名から「三ケ野(さんがの)いちご」と名付け売り出した。夫が手伝い始めた2010年からは規模を拡大。台風による洪水で苗や苗場が土砂に埋まり、絶望したが、工場に勤めに出て巻き返した。今後はとびきりのイチゴを年中食べてもらえるよう、6次産業化にも挑戦したい。
都市近郊の小さな新米農家として
~自分らしい農業の『形』を目指し奮闘中~
農業、森本聖子さん(36)=神戸市
少量多品目の野菜を栽培し、市内のレストランに届けている。5年前までは旅行会社に勤めていたが、農業に引き込まれた。自分が育てた野菜を直接消費者に届けるということは、何より「モチベーションアップ」になる。農繁期に助け合える仲間も増えた。成長しながら、自分の農業の形を築いていきたい。
人生なかばでの大決断
農業、松井栄治さん(60)=奈良県広陵町
不整脈への懸念から町役場を辞めて花卉(かき)農家になった。妻も看護師をやめて就農、パンジーなどの栽培を始めたが、最初は生活にも困り、金策に奔走する日々が続いた。それから14年。今は県外から生産者が見学に来るまでになった。失敗を経て培った栽培の秘訣(ひけつ)をすべて伝えている。農業には定年がない。以前のように花が咲き誇る地域に戻るようますます頑張りたい。
家族で支えあって
酪農家、坂手美智子さん(57)=岡山県津山市
酪農家の主人と結婚、男の子3人を授かった。息子をおぶって作業した。夫から「このままでは子供を大学にもやれん。規模拡大するか酪農をやめて勤めに出るか」と相談を受け、規模拡大を選んだ。牧草作り、自給飼料生産にも励んだ。今は長男と三男も加わった。チーズなど畜産加工の販売も始めた。今後も、牛たちも含め、家族仲良く頑張っていきたい。