第44回毎日農業記録賞《高校生部門》優秀賞


夢の酪農教育~牛と人とが紡ぐ未来~

中島海さん=宮城県加美農業高3年

非農家出身だが、一冊の本との出合いから農業高校へ進学した。畜産の実習で牛とふれあう児童の笑顔にふれ、「命の教育」の大切さを実感、酪農の道を志す。一方で、窮屈な環境で牛を育てる現実に直面。全国の酪農家の研修会に参加し、快適性に配慮した「アニマルウエルフェア」を知る。牛も人も健康に生きる「酪農教育ファーム」の実現を目指したい。

農業が生み出した優しい交流と私の決意

高橋千怜(ちさと)さん=秋田県立増田高3年

少子高齢化問題に「農」の力で挑んだ。農業の「癒やし」や「交流創出」の機能に着目し、高齢者でも簡単にできる水耕レタスの栽培装置を高校農業科学科の仲間と開発。高齢者に使ってもらい、見守りネットワークを始めた。福祉センターや警察、民生委員らを巻き込んでのニーズ調査、生徒総出の訪問活動も展開。農業の魅力を多くの人に伝えるのが目標だ。

私の農業人生・序章

北見悠悟さん=東京都立園芸高3年

生き物が好きだった。父の故郷・新潟県佐渡で風に揺れる稲穂の光景を見た感動が原点。私立中に進学したが、本当にやりたいのは農業だと確信し、園芸高校へ。3年の課題研究で荒れ地での稲作を選び、佐渡からコシヒカリの種子と祖父の水田の土を調達。先輩たちの経験を取材し、ゲリラ豪雨にも対応した。米農家になるのが目標。荒れ地での実験で一歩を踏み出せた。

私が繋(つな)ぐヒョウタン文化

米山美沙紀さん=岐阜県立大垣養老高2年

地元ローカル線の存続のため、特産のヒョウタンで町おこしをするサークルを引き継いだ。先輩たちが断念した食用ヒョウタンの売り出しに再挑戦。漬物を試作すると大好評で、老舗漬物店に納品するまでになった。町も養老の滝への登山道をヒョウタンのイルミネーションで飾ることを計画。「『まち』は『ひと』の存在で成り立つ」ことを学んだ。

『父の背中を追う』~未来の農業後継者として~

石谷佳也さん=静岡県立磐田農業高3年

高糖度のトマト栽培に取り組む父の姿や、市場で高値で取引されるのを見て、誇らしく感じた。福島原発事故の被災地を訪ね、地元の浜岡原発で東海地震による事故が起きた場合を想定。代替農地のめどや、風評被害に備えた地元向けの販路拡大などを課題と考えている。将来は東京の市場などに就職して経験を積み、家業を継ぎたい。

命から学んだ私の使命~愛娘たちが教えてくれたこと~

中口愛香さん=京都府立農芸高3年

早朝、約1時間半かけて高校の畜舎に通う。牛や豚に「おはよう」と声をかけ、「愛娘たち」との一日が始まる。家畜の気持ちを読み取ることは「教科書に載っていないこと」。子牛が生まれた時の感動を母に話すと、母は愛香さんが生まれた時の話をしてくれた。飼育牛の死、食肉処理に送られる豚。かけがえのない「命」を学んでいる。

イノベーション!シイタケ栽培

小尾(おび)琴美さん=兵庫県立農業高3年

農業実習と部活の吹奏楽に全力投球。音楽と農業には「調和」という共通点があると気付いた。シイタケの原木栽培も山林と調和した農業。生育を速める実験に成功したが、シイタケ農家でのインターンでは重労働を体験し、輸入品との価格競争の現実も知った。生産性と品質を併せ持ち、最高のハーモニーを奏でる「シイタケ栽培の楽譜」を作りたい。

私の思い そして未来へ

井上久行さん=福岡県立八女農業高3年

20万羽を飼育する養鶏業の父の背中を見て育った。「うまかろー」と言って、丹精込めた鶏肉を食卓に出す両親。水炊きのおいしさ。農高祭で出した鶏肉商品の人気……。周りは鶏肉の魅力にあふれており、家業を継ぐ決意をした。佐賀大学教授を訪ねて鶏糞(けいふん)処理とバイオガスを結びつける方法を探るなど、将来の養鶏経営に向けて、日々ニワトリから学んでいる。

新商品『柚子(ゆず)カード』の開発に取り組んで

井美奈子さん=大分県立玖珠美山高3年

「開校2年目の目玉商品に」と、仲間と学校にあるユズの実を使い、加工食品を作った。ジャムではイチゴやブルーベリーに負けるため、英国の「レモンカード」(バタークリーム)をヒントに「柚子カード」を商品化。校内販売会での地域の口コミや、「大分ふるさとCM大賞」への出品など輪が広がり、産官学連携の販売ができた。

第44回毎日農業記録賞《高校生部門》奨励賞

魅力ある農業経営を遠野市で

菊池遥香さん=岩手県立遠野緑峰高2年

震災復興道路の建設により、家族はリンゴ畑と牧草地の大半を失った。愛情を持ってリンゴを育てる祖父母を手伝いながら、果樹園を存続させたいと考えた。リンゴと花卉(かき)の複合栽培で効率化を図り、ネット販売や「牛舎カフェ」開業を思い描いている。農家レストラン経営者からも「愛情」の大切さを学んだ。遠野で就農し、豊かな地域資源を生かしたい。

ブルーベリー。その小さな一粒にすべての思いを込めて

前垣沙羅さん=長野県下伊那農業高1年

伊那谷で、母と叔母が経営するブルーベリー農園。無農薬を貫き、早朝から深夜まで働く姿を見て手伝いを志願したが、母の指導は厳しい。果物を狙うサルやカラスとも格闘。高校では食品科学班で、規格外ベリーを使ったデザートの開発に仲間と取り組む。「あなたに継がせてよかった」と、母に思ってもらえる後継者になりたいと思う。

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