第45回毎日農業記録賞《一般部門》 最優秀賞
ブルーベリー農園『ブルーベリーフレンドファーム』と『ベジ・シェフ』で新しい調理提案
小口 弘之さん=茨城県常陸大宮市
41年間のホテル勤務で地元の農畜産物の良さを知り、地産地消に取り組んだ。51歳の時に定年後を見据え、ブルーベリーの農園づくりを始めた。200本から始めて2800本に。年間フル稼働を目指して、家族の応援を得てカフェでブルーベリーのタルトやケーキを提供。明確な収入モデルで「自立できる農業」を目指した。高校生農園も作り、商業科の生徒が株式会社を設けて、6次化を実体験している。今後は電子レンジ調理器「ベジ・シェフ」で野菜の調理提案をしていきたい。
町も人も元気にしたエゴマにかける想い――耕作放棄地解消を目指して――
関澤 久さん=栃木県茂木町
農業高校を卒業後、自動車整備工場を経営。地元の耕作放棄地を見て何かできないかと、高齢者でも取り組めるエゴマ栽培を見学しに、仲間と福島県の生産地を訪れた。一握りの種をもらって翌年にまいたが、栽培管理が分からず失敗の連続。最初の搾油も失敗した。しかし栽培希望者が地域に広がり、3年目に「茂木エゴマの会」を発足。町の支援も得て廃校を加工場にし、一貫生産の態勢が整備された。ブームが来て売れるようになり、栽培面積を拡大してエゴマ油のブランドを確立した。エゴマ栽培を続け、若い世代に引き継ぎたい。
龍神は〜と・完結編
下山 眞実さん=和歌山県田辺市
23年前に一家で龍神村に移住し、石窯のパン屋「もんぺとくわ」を開業した。地域おこしグループ「龍神は〜と」を発足し、特産品や地域の雇用を生み出すまでになった。自給自足の生活を続けながら、田舎暮らしをしたい都会人の相談にものる。母屋をリフォームして「農家民泊」を計画したが、2015年のオープン直前、パン屋と自宅がまさかの全焼。消防署の人から「命があるのは、もう一度がんばりなさいということ」と励まされた。3カ月後にはピザの移動販売を始め、具材には地元の野菜を使った。今年1月、新たなパン屋と民泊施設を開業。今後も地域おこしをライフワークにしていく。
直売所からみえる地域農業の未来
佐木 杏子さん=長崎市
結婚を機に農協を退職し、子ども2人を育てた。実家の父から相談を受け、桃のハウス栽培に取り組むようになった。有人直売所「きんかい味彩市」を仲間とオープンすると、出荷者が増えていき、「病院の待合室からお年寄りが減った」といわれるほどに。地元産野菜のニーズの高さに驚き、レストランやホテルにも新鮮な野菜を配達するようになった。研修を受けて法人化を実現し、学校や病院など公的機関にも販路を拡大。直売所は今後、農家が料理までプロデュースするような地域全体の食を担う存在になるべきだと考えている。「ここで農業をして良かった」と言える産地づくりを目指したい。