第45回毎日農業記録賞《一般部門》 優秀賞


ふくろうが鳴くりんご園〜農業と野生動物の共存を目指して〜

 ムラノ 千恵さん=青森県弘前市

 農業と野生動物の共存を図るため、故郷にある弘前大の研究室へ。リンゴ園を荒らすハタネズミ駆除策として、フクロウを呼び戻す活動を地元の「下湯口ふくろうの会」と展開した。巣箱を置くと、フクロウの生息を確認。ネズミも姿を消すようになった。「自然の仕組みを利用した農地管理は持続可能な農業に必要」と考える。

 

北国で思いの《農》と《食》に挑む

 水上 見一郎さん=岩手県久慈市

 老父母の介護で半世紀ぶりに帰郷すると、畑は草ぼうぼう。じいさまが除草に使っていた米ぬかをまくと、雑草は弱り、肥やしの効果で野菜が育つようになった。米ぬかを集めるためコイン精米所巡りが日課になった。果樹やペポカボチャなどを栽培し、体調不良を機に和食で食生活を改善した。「『農』で郷(さと)を豊かに、『食』で心身の健康増強を」と思い描く。

 

雪害からの復興“農業ができる喜び”

 茂木 美代子さん=群馬県東吾妻町

 35年前に嫁ぎ、イチゴ栽培をしながら子ども4人を育てた。2014年に大雪に見舞われ、イチゴハウスが全壊。「農業にも失業があった」と涙を流した。稲の苗を栽培しながらイチゴのハウスを再建したが、竜巻で再びハウスが倒壊。一方、お米の国際大会で何度も受賞、熊本の被災地も訪ねた。昨春に長男も就農。人とのつながりで災害を乗り越えた。

 

定年就農 満10年の歩み

 角田 勉さん=前橋市

 種苗会社に勤め、野菜の品種改良に取り組んだ。定年後に農業がしたいと、借金をしないことを条件に家族を説得した。タマネギ栽培、遊休農地でのネギ栽培に着手。初めて野菜を売った時はワクワクした。3年間の赤字の後は徐々に売り上げを伸ばし、午後5時に終業する「働き方改革」も実施。自宅前に直売所を開き、妻は看板店長に。「小規模だが強い農業」の完成を目指す。

 

畑のパッチワーク

 堀田 千代子さん=静岡県藤枝市

 稲作の専業農家に生まれた。公務員を定年後、母の口癖である「ご先祖様から預かった田んぼ」で、夫婦で農業を始めた。JA女性部の地区長を務め、食農教育に励んだ。両親は、減反で乾いた田んぼの雑草を手で引き抜いていた。その思いを引き継ぎ、消費者ニーズに合った野菜づくりに取り組む。「草むしり大変だね」の声には、「畑にパッチワークしているの」と答えている。

 

人と農をつなぐ〜協働で創る食の未来〜

 小澤 富士子さん=静岡市清水区

 ミカン農家に嫁ぎ、勤めに出た夫に代わり畑仕事に。夫が入退院を繰り返すようになり、畑仕事、見舞い、免許取得に奔走。余命3カ月と告げられた夫に「絶対に治す」。そば打ちが得意で、夫とそばも製造した。「病人をこきつかうなあ」と夫は笑った。夫の他界後は何も手につかなかったが「おばあちゃん市場」を始め、朝取り野菜を販売している。

 

農が食を支える〜料理人の野菜作り

 藤井 俊昭さん=京都市左京区

 下鴨でかっぽう料理店を営む。父が亡くなり、大原の生家の草刈りをしたのを機に野菜を作ることに。次男のアトピーもあり、有機・無農薬でネギ、長大根などを栽培。畑を広げ、ハウス栽培も始めた。料理に対する考えも変わり、客の好みだけでなく、バランスの良さを心がけるようになった。自然と一体となる充実感。食べ物が健康をつくると実感した。

 

我が歩み50年『結いと絆の集落営農――おくがの村』

 糸賀 盛人さん=島根県津和野町

 農事組合法人・おくがの村を設立し、39歳から代表理事を務めてきた。集落営農型の農業法人の草分けで、「個人と法人の共存」にこだわった。耕起や田植えは法人の機械でするが、水管理など田んぼの経営は個人。規模拡大も抑えてきた。集落に人がいることで、農業も暮らしも成立する。朝から子どもの声が聞こえることが村落の自慢だ。

 

柚子(ゆず)農家に嫁いで

 植田 クミさん=高知県北川村

 JAを退職した夫が家業のユズ農家を継いだ。「一緒にやろう」の言葉を2度目のプロポーズに感じたが、現実は厳しかった。ユズのとげが肩や背中に突き刺さり、はしごから落ちれば「有刺鉄線プロレス」のように傷だらけ。選別や箱詰めもしんどいが、やりがいがあり楽しい。ツイッターにユズに関する投稿があると、我が家産でなくても「いいね」を押してしまう。

 

素敵な出会いがあるからこそ 農業は楽しい

 黒木 貴子さん=佐賀県白石町

 東日本大震災の年、東北・関東の野菜不足で九州産を探していた業者から「お宅のレンコンを取り扱いたい」と電話がきた。周りの農家も誘って出荷し、「黒木農園グループ」が誕生した。「蓮根ロールケーキ」「蓮根粕(かす)漬け」も誕生。農水省の農業女子プロジェクトに登録し、県内の団体の初代会長になった。レンコンの穴から、明るい農業の未来が見えた。

 

第45回毎日農業記録賞《一般部門》 奨励賞

舞台裏から挑む農業

 土田龍之介さん=石川県野々市市

 北海道での農業実習後、早期のがんが見つかった。手術後に農業法人に就職したが、8カ月後に再びがんの告知。職場復帰したものの、作業中に倒れたことも。「何かできることを」とゴミやくぎを拾い続け、防虫ネットの縫い直しも手がけた。「自分で考えて動けば視野が広がる」ことを学び、現在は広報業務で情報発信をする。「今のスタイルもまた農業」と誇りを持っている。

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