第47回毎日農業記録賞《一般部門》 優秀賞


小さな農業から六次化への挑戦~夢はでっかく。さつまいもで横手を元気に~

伊藤 美緒さん = 秋田県横手市

 

 母と、野菜をメインに少量多品目を生産している。知識不足の不安を解くため、次世代農業経営者ビジネス塾に参加。消費者ニーズに意識が動いた。会社員時代、同僚と「職場で干し芋が食べたい」と話したことを思い出し、「職場で食べても恥ずかしくない干し芋」の開発に着手。数種を栽培し、ターゲットの女性層の試食会などに出し品種を改善。アンテナショップでの試販に成功。初の商談会はマーケティング用語に緊張したが、バイヤーの一言は「欲しい」。営業力の向上が課題だ。

永遠に続く田園風景を次の世代に引き継ぐ!それが私の天職

西岡 智子さん = 栃木県大田原市

 

 東京に向かう電車から、水田の風景を見る。なぜかほっとして、涙が出てきた。14代続く農家の4姉妹の長女。父の背中を見て育った。父の遺志を継ぎ、14ヘクタールで米とビール麦を栽培して7年目。3人の子を抱え、就農に周囲は反対したが、女性が機械に乗って働く光景を見てきたので一歩を踏み出せた。マルシェへの販売や酒蔵とコラボして日本酒の開発に成功。県の農業女子プロジェクトにも参加。農家民宿という形で都市と農村を結びつけ、田んぼの可能性を次世代へつなげたい。

『ダブルプレイス』と『半農半X』の私

菅野 民子さん=栃木県市貝町

 マッサージの仕事をしていた。病院に通えない患者宅へ通い、むくみをほぐす。ある患者の死に向きあい、沈んでいた6年前。別の患者から経営者のいないブルーベリー園を紹介され、マッサージと農業の「半農半X」を始める。 農業大学校で研修。自分がアレルギーであることもあり、無農薬栽培に取り組んだ。実をつける光景と里山の朝日や夕日に感動、輝いて見えた。農園名は「おかえりの丘」。身障者の就業を支援する農福連携、写真家の協力による星空観察会など多分野と連携、農業の魅力を何倍にも高めた。

ブドウづくりに恋して

山崎 佐斗志さん = 長野県須坂市

 自営のリフォーム業がリーマン・ショックで苦境に。妻に誘われブドウ栽培のアルバイトを始めた。最初は摘粒がうまくいかず、悔しさから職人魂に火がつき、工夫を重ね、ベテランから評価されたことが自信につながった。いったん本業に戻ったが、ブドウ農家への気持ちが残った。「あなたはブドウ農家になりたいのよね。私もやるから」という妻の言葉に押され、夢を共有。研修に臨み、先輩農家から多くを吸収した。栽培の試行錯誤の中で、妻とは真剣に向き合い、討論する。「ケンカするほど仲がよい」関係だ。

APG黒東の組織活動を通して従業員の私は、何が出来るのか!?

石田 夏樹さん = 富山県入善町

 入善町・朝日町の農業法人若手経営者や従業員の組織「APG黒東」の会長を務める。就農直後、国会前で全国の青年農業者たちと「TPP反対」のシュプレヒコールを上げた。APGの仲間は、所属会社の垣根なく若手を指導し、みんなで地域を守っていく。会長就任後、役員の就任時に意思表明をしてもらうことや、「栽培技術」「農業機械整備」「経営」の分野別グループ研修を導入。「農業者である前に社会人」という意識で、消費者から人として信頼される農業者を目指す。

米をつくる人を育てて

中谷 治夫さん = 石川県野々市市

 県農業試験場、農薬会社での経験を買われ、退職後、県から新規就農者の講義を頼まれた。6年間で六十数人の若手を育てた。 県のテキストは初心者には専門的過ぎると、分かりやすい要約版を作成。「どんな本を読んでいるか」「毎日作業を記録しているか」「上司に気軽に質問できるか」を受講生に毎回問いかけた。現場で試行錯誤を重ねる元受講生には、激励の手紙を出す。返信がうれしい。 妻は中学校の養護教諭。「人を育てることはもっと大変よ」。妻の言葉に背中を押されて教壇に立つ。

種ひとつぶのつたえごと〜山内かぶらが繋ぐ地域の絆〜

飛永 悦子さん = 福井県若狭町

 90歳まで全員現役が「山内かぶらちゃんの会」の目標だ。伝統野菜「山内かぶら」。肌はでこぼこでひげ根も多いが、味は濃厚だ。20歳で山内集落に嫁ぎ、このかぶらを知った。栽培農家は減少し、義母がやらなくなった1987年にはいなくなり、種子は農業試験場に保管された。「私しかいない」と気持ちがわき、最初は一人で、町や県の技術支援を得ながら再開。2011年には女性6人と会を作った。今は12人。栽培地は90アールに拡大した。販路拡大、地域ブランドを守る「GI」認証、食育など活動も広がった。生涯の仲間を得た。

<生きものにぎわい・自然の恵み>を広げたい-マコモダケ耕作による放置農空間・生物多様性の保全-

岡 秀郎さん = 大阪市

 里山の農空間が全国で荒れ果てている。「チーム農力隊」の代表だ。メンバーは10人。皆、自然環境保全に取り組んでいる都市住民だ。営農は高いハードルだったが、学習会に招いた講師からマコモダケを教わり、放置田畑での水田耕作に挑戦した。マコモダケは耕作に手間がかからず、保全を兼ねた都市住民の活動に適している。天ぷらなどの高級食材になる。株分けで大阪・京都に耕作地を増やし、販路も拡大。自治体も休耕田対策としてPRに協力する。課題は要員不足の解消だ。

サラリーマンから農業への転身~農福連携がもたらした夢~

北村 浩彦さん = 高知県安芸市

 大阪出身。食品会社に25年勤めた。転勤、単身赴任。家族と過ごせない日々が続いた。葛藤の中、チャンスが来た。会社の早期希望退職制度だ。「親の田舎で暮らそう」。Iターンを決意。地域の人から「ハウスでナス栽培をしてみるか」と誘われた。就農7年、43アールに規模を拡大。ある女性から、発達障害の子供を雇ってもらえないか、と頼まれた。時間をかけて指導した。昨年8月から、福祉保健所との連携で生きづらさを抱える人たちを本格的に雇用する。「ともに成長していこう」。

受精卵移植を活用した和牛生産および地域農業活性化への提案

本吉 康二さん = 鹿児島県霧島市

 1年1産の子牛生産農家は、受精卵移植を活用すれば短期に優良牛の増産ができる。輸入受精卵による子牛の誕生を知ったことがきっかけで、取り組みを始めた。0.15ミリの受精卵が35キロの子牛になることが神秘的だった。県立農業大学校で繁殖技術を習得、プロジェクト研究会で「優秀賞」を受賞。卒業後は経営コンサルで研修、受精卵移植師免許を取得。就農し、現在は繁殖雌牛50頭を飼育する。酪農協から依頼を受け、高齢農家を支援。「地域を引っ張っていく農家になる」

 

 

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