第49回毎日農業記録賞《一般部門》 最優秀賞


農業は楽しい!を子どもたちへ伝えるAGRIBATONPROJECT

横田祥(47)=茨城県龍ケ崎市

 6人の子がいる。中学生のなりたい職業ランクの1位は「ユーチューバー」。一方で「農業」は0人。「なんとかしよう」と仲間の農業女子たちと飲み会で意気投合。農業の楽しさを伝える絵本を作り、全国に届けるプロジェクトを始めた。クラウドファンディングで資金を集め、全国の農業女子に賛同を呼びかけた。募集開始2週間で約80人の参加があった。農水省などが主催する「サステナアワード2020」でルーキー優秀賞を受賞した。10年後には農業が子どものあこがれになる世界が必ずくる。そういう日本を築きたい。

日本初!カエルと挑む有機栽培

三須翔太(21)=千葉県八街市

 鎌倉時代から続く農家の14代目だ。卒業後は有機栽培農家として自家就農する。農水省は有機農業を2050年までに農地全体の25%、100万ヘクタールに増やす。我が家は病害虫ヒョウタンゾウムシの被害に悩まされている。幼虫が地中深くに潜み、土壌消毒が届かない。増殖抑制の可能性を探ったが、試験ほ場に入ったヒキガエルにゾウムシを食べられてしまい失敗した。同時に、指導の先生のアドバイスで、ゾウムシを食べるヒキガエルは使える、という逆転の発想が生まれた。ニンジン農家で試験導入し、成功。「カエルくんが育んだ美味(おい)しいニンジン」と名付けた。新ブランドの可能性が広がった。

畜産人生51年の終わり。そして、始まり。

市川恵美子(50)=神奈川県中井町

 両親が51年間の畜産人生を終えようとしている。父は76歳。地域に30軒あった酪農家も今は父だけになった。思春期、牛は汚いとからかわれるのがつらかった。土まみれで働く両親に「農家が嫌い」とは絶対に口にしなかった。母の手は日に焼けて黒く、指輪は作業で曲がっていた。幼い時にアトピーになった長男は、母が栽培する有機野菜を食べて回復した。今は「農業を学びたい」と大学受験を目指す。牛舎をたたむ父の背中を見る。思いを継ぐことのできない私たちは言葉もない。今一度、自然とともに生かされている現実を見つめ直す時なのだろう。

『徳之島』から伝えたい~牛飼いの歩み そして感謝~

永吉清美(53)=鹿児島県徳之島町

 牛飼いを熱く語る夫と出会い、専業主婦という約束で結婚した。10年で120頭の繁殖専業農家になり、結局、手伝うことになった。夫に言われたことをただこなしているだけだったが、女性農業経営士の研修で、農業の魅力を自分の言葉で伝える人たちに出会い、「牛飼いに誇りを持って生きていこう」と決意した。2003年、夫婦間の家族経営協定を締結。海外農業体験研修に参加し、「子供に誇れるゆとりとやりがいのある農業」を実践する異国の女性たちの姿に、「これだ」と確信。子供たちは農畜産に関わる道に進んだ。努力は裏切らない。皆さんと夫に感謝だ。

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