第52回毎日農業記録賞《一般部門》 特別賞
息子ファームの事件簿
栗秋美穂(50)=東京都世田谷区、主婦

毎年4月中旬になると息子のプレゼンが始まる。春夏に育てたい野菜を説明する。「君とパパが登山に出ている間の世話はママの担当です。家族が平和じゃないと野菜のお世話が適当になってしまう。もう一度プレゼンしてください」と言う自分に、息子は「ありがとう、と言われる行動をする」「自分に手伝えることはないか考える」「注意されても嫌な顔をしない」と提案した。2024年、息子ファーム、キックオフ――。息子がなぜ「農業」が好きなのかはよく分からない。ただ、野菜のように育てたいと思い、土・水・太陽をたくさん浴びせた。畑が遊び場だ。小3の時、授業中の質問が多く妨害だと担任に言われた。思考は成人並みだが、情緒は非同期発達という脳の特性を持って生まれた子だった。「ママと公園や畑でいろんなことをしたい」と言い、ホームスクールを始めた。野菜を「育てる」ことにつながった。家庭菜園でも毎日のように変化はあり、事件は起きる。息子には苦労より喜びになっているようだ。
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