第3回毎日地球未来賞 自立の芽、一歩一歩


地球的規模の課題となっている「食料」「水」「環境」の3分野で、問題解決に向けて地道な活動を続けている団体や個人を顕彰・支援する「毎日地球未来賞」(毎日新聞社主催)が、第3回を迎える。創刊140周年を記念して一昨年に創設した。一人一人が自分の問題として受け止め、理解を深めてもらうのが狙いだ。今回、若い人たちの取り組みをより積極的に支援しようと「次世代応援賞」を新設した。

第2回受賞「カラ=西アフリカ農村自立協力会」は今

第2回毎日地球未来賞を受賞した東京都武蔵野市のNPO法人「カラ=西アフリカ農村自立協力会」は、20年以上にわたり西アフリカ・マリ南部の農村で、地域住民の自立を支えてきた。マリでは今年1月、旧宗主国のフランス軍によるイスラム過激派の掃討作戦が展開されたが、カラの活動はマリ人スタッフの手で順調に続いているという。

歯科医でもある代表理事の村上一枝さん(73)が1992年に設立した。マリの農村では疫病が流行し、砂漠化が進行。水確保のため、飲用や農業用の井戸を設置して野菜栽培を進めたり、疫病予防のために看護師や助産師を育成してきた。教育普及のため、識字教室も開くなど、幅広い支援に取り組んできた。

住民の自立を後押しするため、日本人スタッフは調整役に徹し、現地の技術者を採用している。地域住民と話し合いながら、必要な支援を行ってきた。

近年、イスラム過激派の勢力拡大などで、マリの情勢は不安定だった。村上さんは昨年3月以降、同国への渡航は控えているが、今年6月には隣国セネガルで現地スタッフと会い、活動状況などを確かめた。村上さんは「混乱の影響はなく、活動は進んでいる。私もできる限り早く、現場を訪れたい」と話す。

最近は、地域から助産師が誕生したことなどで、住民にも教育の重要性が認識され始めているという。ただ、活動資金となる助成金を得るには、情勢の安定化が不可欠。村上さんは「20年以上取り組んできた活動の芽を摘まれることがないよう、以前の平穏な状況に早く戻ってほしい」と願う。【遠藤孝康】

次世代へ「クボタeプロジェクト」

高校生に稲作の新農法を指導する特別授業=クボタ提供
高校生に稲作の新農法を指導する特別授業=クボタ提供

クボタが社会貢献活動の一環として展開しているのが「クボタeプロジェクト」だ。「美しい地球環境を守りながら、人々の豊かな暮らしを支えていく」をテーマに、2008年から取り組んでいる。

特に将来世代を担う若者向けの活動に注力している。「クボタ元氣(げんき)農業体験教室」には、主に小学5年生が参加して、田植えや稲刈り、収穫した米の試食などを通じ、農業に親しむ。これまでに約4700人が参加した。

自然の中に飛び込み、地球環境の大切さについて学ぶサマーキャンプ「クボタ地球小屋(てらこや)」にも毎年約20人が参加している。11年の東日本大震災後は、福島県の子どもを対象にして、外でのびのびと活動できる場を提供している。被災地支援では、津波などで被害を受けた宮城、福島両県の高校生に、直播(じかま)きによる稲作の新農法の特別授業も実施している。

海外でも、インドの3カ所で井戸を建設するなど、発展途上国の水質改善に取り組んでいる。【安藤大介】

「食料・水・環境」 日本の役割–クボタ・久保俊裕専務に聞く

久保俊裕 クボタ専務=大阪市浪速区で2013年8月28日、長谷川直亮撮影
久保俊裕 クボタ専務=大阪市浪速区で2013年8月28日、長谷川直亮撮影

クボタは「食料・水・環境」の各分野に世界規模で貢献していくことを「グローバルアイデンティティ」に掲げている。担当する久保俊裕専務に現状を聞いた。

取り組みの状況を教えてください。

世界的な人口増による食料や水不足、地球温暖化など、「食料・水・環境」における課題は徐々に深刻になっています。クボタは、日本の稲作で培った農業機械技術を多くの国や地域に展開するとともに、より大型機械が必要な稲作以外の農業分野にも本格展開するつもりです。各国の特性に合わせた農業機械を提供し、食料不足の課題に取り組みます。東南アジアを中心に、発展途上国の環境対策、水インフラ整備も始めています。

重要なことは。

若い世代が世界の実情に興味を持ち、課題を少しでも理解してもらいたい。海外で困っている地域に、ボランティアで飛び込んでいく若い人が増えていると聞きます。さらに多くの若者が活動に参画し、行動するようになれば、我が国も素晴らしい国になります。それは世界における日本の役割でもあります。

今後のクボタの社会貢献活動は。

最も大切なのは、活動の規模にかかわらず、社会貢献活動を続けていくということです。社会の一員としての義務でもあります。必要とされる活動は時代とともに変化しますが、ふさわしい支援のあり方を考えながら、継続的に行っていきます。【聞き手・安藤大介】

応募要項

対象

地球規模の課題となっている「食料」「水」「環境」の3分野で、国内外の問題解決に取り組む市民・草の根レベルの団体や個人。東日本大震災の被災地で3分野にかかわる復興支援活動も対象。今回、大学生や小中高校生の活動や若い人たちの将来性をより積極的に支援しようと「次世代応援賞」を新設しました。

選考

自薦のほか、読者や地方自治体、各種団体や本社取材網などからの推薦(他薦)をもとに選考委員会が審査、決定

選考委員会

【委員長】増田寛也=野村総合研究所顧問、前岩手県知事、元総務相
【委員】横山光弘=前国連食糧農業機関日本事務所長▽沖大幹=東京大学生産技術研究所教授▽イーデス・ハンソン=タレント、近畿大学客員教授▽久保俊裕=クボタ取締役専務執行役員▽伊藤芳明=毎日新聞社専務取締役主筆(敬称略)

毎日地球未来賞1点=賞金200万円▽クボタ賞2点(特別賞、うち1点は震災復興関連)=同100万円▽次世代応援賞1点=同50万円

応募方法、応募・推薦用紙の請求・送付

〒530-8251(住所不要)毎日新聞総合事業局毎日地球未来賞事務局(06・6346・8407)かメールアドレス(chikyumirai@mainichi.co.jp)へ連絡、折り返しフォーマットを返信します。必要事項を記入し、事務局へ郵送。

締め切り

10月25日(金)

発表

2014年1月の毎日新聞紙上

主催 毎日新聞社
後援 内閣府、外務省、農林水産省、厚生労働省、環境省、国土交通省
協賛 株式会社クボタ
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