特集 美しい星 守るために


第2回毎日地球未来賞 美しい星、守るために

建設した井戸から水をくむ住民ら=インドで(クボタ提供)
建設した井戸から水をくむ住民ら=インドで(クボタ提供)

創刊140周年を記念し、毎日新聞社が創設した「毎日地球未来賞」(協賛・株式会社クボタ)は今年、2回目を迎える。地球的規模の課題となっている「食料」「水」「環境」の3分野で、問題解決に向けて地道な活動を続けている団体や個人を顕彰、広く知ってもらうことで市民の理解を深める願いが込められている。昨年は66点の応募があり、草の根の団体・個人を後押しする賞として期待されている。

第1回受賞「印旛野菜いかだの会」の取り組み

第1回毎日地球未来賞を受賞した千葉県佐倉市のNPO法人「印旛(いんば)野菜いかだの会」は00年の設立以来、水質が全国の湖沼で最下位級だった印旛沼の再生に取り組んでいる。

受賞を機に事業規模を広げたといい、美島(みしま)康男理事長(72)は「昨年度からは印旛沼で絶滅した水草の再生に力を入れている。子供たちが泳いでいたかつての姿を取り戻したい」と意気込んでいる。

美島さんらは12年前、水質浄化の切り札「植栽いかだ」を開発した。水路に浮かべたいかだで空心菜(くうしんさい)などを水耕栽培し、淡水真珠の母貝をつり下げて水中の窒素やリンなどを吸収する仕組みだ。

印旛沼は昭和40年代の開発で浅瀬が失われ、生活・農業排水などによる富栄養化が進み、夏になるとアオコが大量発生していた。植栽いかだはアオコの発生を抑え、栽培する植物の水中根付近に発生する動物プランクトンにより魚が繁殖。魚を求めて野鳥も集まるようになったという。印旛沼で絶滅した水草の再生事業では、今年4月から千葉県とも共同で取り組んでいる。

小学生を招き一緒に作業をしながら水の大切さを伝えるなど啓発活動にも力を入れている。今年3、7月にはベトナム・ハノイを訪問。タンコン湖に植栽いかだを浮かべ、地元の人たちと環境学習をした。美島さんは「草の根活動を続け、印旛沼と流域の環境保全に努めたい」と話している。【一色昭宏】

「課題」解決へクボタeプロジェクト

クボタは社会貢献活動として「クボタeプロジェクト」を推進している。「earth(地球)」「ecology(環境)」「eat(食料)」「education(教育)」「eau(フランス語で水の意味)」「emotion(感動)」の頭文字から取った六つのeの視点で、社会的課題の解決を図る。

耕作放棄地の再生支援では、社員が全国各地に出向き、クボタの農業機械を使って、草刈り・耕運などの農地の復元整備や作物栽培作業を支援している。11年度は全国16カ所で実施した。また、海外ではインドでの井戸建設支援など発展途上国の水環境改善に取り組んでいる。

「クボタ元氣農業体験教室」は、子供たちに田植えや稲刈りなど実際の米作りを体験してもらうイベント。農業への理解を深めるのを目的に、11年度は全国9カ所で開催した。社員ボランティアによる地域の環境美化・清掃活動「クボタeデー」も行っている。

東日本大震災の被災地支援にも積極的に取り組んでいる。仮設校舎で授業を行っている宮城県農業高校(同県名取市)に、実習用トラクター3台を寄贈したり特別授業を実施。岩手県釜石市や宮古市、福島県郡山市で仮設住宅に農園を整備し、被災者同士のコミュニティー作りに貢献している。【鈴木一也】

「グローバル企業の責務」

日地球未来賞について語る久保俊裕・クボタ常務
日地球未来賞について語る久保俊裕・クボタ常務

クボタは10月から経営理念を刷新した。重点事業分野である「食料・水・環境」を前面に打ち出した「クボタグローバルアイデンティティ」を掲げ、真のグローバル企業として新たな一歩を踏み出す。担当の久保俊裕常務=写真=にその背景や意義を聞いた。

経営理念を見直した理由を教えてください。

今や連結売上高の半分を海外が占め、社員も3分の1以上が外国人です。外国人社員に経営理念が正確に伝わっているのか、という疑問が見直しのきっかけです。特に、買収した海外企業はクボタのことをあまり知らない。クボタが何を考え、何を目指す会社なのか、共通のアイデンティティーを持つ必要がありました。

グローバルな点は?

「社是」や「経営理念」という名称を、英語で「スピリッツ(精神)」「ブランドステートメント(約束)」「ミッション(使命)」の三つに改めました。また、社名ロゴに入っているスローガン「For Earth,For Life」を大きくし、シンプルに分かりやすくしました。重点事業の「食料・水・環境」に対するクボタの意思を明確化しました。

毎日地球未来賞の理念とも一致しますね。

食料・水・環境は、地球上で暮らす人なら誰もが何らかの形で関わっていくべき課題です。国や市民、企業、NPO法人など、世界中の人々の活動のつなぎ役となり、課題解決に結びつけていくのが地球未来賞の最大の意義だと思っています。この賞をさらに広く伝え、大小に関わらずバラエティーに富んだ多くの団体や個人に応募してほしいですね。【聞き手・鈴木一也】

第2回毎日地球未来賞 募集の概要

「食料」「水」「環境」のため活動する個人・団体募集

対象

地球規模の課題となっている「食料」「水」「環境」の3分野で、国内外の問題解決に取り組んでいる市民・草の根レベルの団体や個人。東日本大震災の被災地で3分野に関わる復興支援も対象

選考

地方自治体、各種団体などの推薦(自薦可)と本社取材網の情報をもとに選考委員会が審査、決定

選考委員会

【委員長】

  • ・増田寛也=野村総合研究所顧問、前岩手県知事、元総務相

【委員】

  • ・伊藤正人=国連食糧農業機関日本事務所長
  • ・沖大幹=東京大学生産技術研究所教授
  • ・イーデス・ハンソン=タレント、近畿大学客員教授
  • ・久保俊裕=クボタ取締役常務執行役員
  • ・岸井成格=毎日新聞社主筆(敬称略)

  • ・毎日地球未来賞=賞金200万円
  • ・クボタ賞=賞金150万円

応募方法、推薦書の請求・送付先

〒530-8251(住所不要)毎日新聞総合事業局毎日地球未来賞事務局

(06・6346・8407)かメールアドレス(chikyumirai@mainichi.co.jp)へ連絡、折り返し推薦書フォーマットを返信します

締め切り

10月26日

発表

13年1月の毎日新聞紙上

主催 毎日新聞社
後援 内閣府、外務省、農林水産省、厚生労働省、環境省、国土交通省
協賛 株式会社クボタ
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