NPO法人「カラ=西アフリカ農村自立協力会」
地球規模の課題である食料・水・環境の問題解決に取り組む個人や団体を顕彰する「第2回毎日地球未来賞」(毎日新聞社主催、内閣府など後援、クボタ協賛)に東京都武蔵野市のNPO法人「カラ=西アフリカ農村自立協力会」が選ばれ、このほど大阪市内で表彰された。クボタ賞の「西日本科学技術研究所」の福留脩文(ふくどめしゅうぶん)代表取締役(69)=高知市、NPO法人「岩手子ども環境研究所」(岩手県葛巻町)と共に、その活動内容を紹介する。【勝野俊一郎、藤田宰司】
毎日地球未来賞
広がる、人と緑の輪–NPO法人・カラ=西アフリカ農村自立協力会(東京都武蔵野市)
歯科医でもある村上一枝代表理事(73)が92年に設立した。砂漠化と疾病、貧困に苦しむ西アフリカ・マリの農村で、地域住民の自立を支援するための活動を続けてきた。飲用、農業用井戸の設置▽野菜園の造成▽植林▽保健衛生知識の普及▽助産師の育成――など支援内容は多岐に及ぶ。
活動では住民との話し合いを重視し、生活や意識、習慣を尊重する。日本人は調整役に徹し、プロジェクトスタッフには現地の技術者を採用。後継者となる若い指導者の育成にも力を入れている。
活動のうち、野菜栽培や刺しゅうなどの技術指導は短期間で収入を得られるため比較的受け入れられやすい。半面、植林や保健、教育などは成果が出るまで時間がかかり、住民から理解されないこともあったという。
それでも長年にわたる地道な活動で、少しずつ成果は上がっている。生徒たちが植えた学校林は、伐採されて学校の運営費や教師の給料などにも充てられるようになった。女性たちが野菜販売などの収入を蓄えて管理し、商売を始める人に貸し付ける事業も始まった。
村上代表理事は「マリにいるスタッフともども受賞は大変励みになる。今後は獣医の育成などにも取り組んでいきたい」と話している。
クボタ賞
石組み治水「川の医者」–「西日本科学技術研究所」福留脩文代表取締役(高知市)
福留さんは生態系の復元を重視した土木技術「近自然工法」をスイスで学び、日本の川づくりに適した石組み工法を開発した。コンクリートで固められて真っすぐになった川に石組みを施すことで、瀬や淵(ふち)ができ、落差や蛇行がある自然な流れを復元。動物や植物が戻る条件を各地で整えてきた。
北海道の網走川も流れが変わり、自然に小石がたまってサケの産卵場所となる瀬が復活、工事の4年後から遡上(そじょう)が急増した。
治水と自然美を両立させる技術を駆使し、20年以上活動してきた福留さんは”川の外科医”と呼ばれる。高知県仁淀川のほとりで生まれ育ち、美しい川はふるさとそのもの。「国を愛することは美しいふるさとの風景を守ること」といい、全国の現場で惜しげもなく技術を伝え、市民と情報交換して自然との共生を呼びかける。
東日本大震災の被災地や外国の河川で進む自然復元のプロジェクトにも参加を求められ、「培った技術で誠実に応えたい」と意欲を燃やしている。
エコのテーマパーク–NPO法人・岩手子ども環境研究所(岩手県葛巻町)
標高700メートルの山あいの小さな集落の廃校を利用し、01年に葛巻町の協力を得て「森と風のがっこう」を開校した。
太陽光パネルや空き缶で作った風呂、水を使わずに排せつ物を堆肥(たいひ)にするコンポストトイレ、生ごみなどから調理用メタンガスや液体肥料を取り出すバイオガス装置――。楽しみながら循環型の生活を実感できる「エコのテーマパーク」に、家族連れや学校でエネルギー学習をする子どもたちなど年間約6000人が訪れる。
一昨年の東日本大震災後には「森風子ども災害援助基金」を設立した。がっこうに被災地の子どもたちを招待したり、今春から絵本や太陽光パネルなどを車に積んで被災地の児童施設などを訪ね、環境学習を行う予定だ。吉成信夫理事長(56)は「震災を機にエネルギーへの関心が高まっている。多くの人に足を運んでもらい、自分たちの暮らし方を見つめ直すきっかけにしてほしい」と話している。
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