特集:第3回毎日地球未来賞受賞者の活動紹介


表彰式で記念撮影に納まる(前列左から)「土遊野」取締役の橋本順子さん、「熱帯森林保護団体」代表の南研子さん、山陽女子中学・高校地歴部の井上貴司教諭と奥山舞子さん。後列は同部員ら=大阪市北区で2月16日、金澤稔撮影
表彰式で記念撮影に納まる(前列左から)「土遊野」取締役の橋本順子さん、「熱帯森林保護団体」代表の南研子さん、山陽女子中学・高校地歴部の井上貴司教諭と奥山舞子さん。後列は同部員ら=大阪市北区で2月16日、金澤稔撮影

表彰式で記念撮影に納まる(前列左から)「土遊野」取締役の橋本順子さん、「熱帯森林保護団体」代表の南研子さん、山陽女子中学・高校地歴部の井上貴司教諭と奥山舞子さん。後列は同部員ら=大阪市北区で2月16日、金澤稔撮影
地球規模の課題である食料・水・環境の問題解決に取り組む個人や団体を顕彰する「第3回毎日地球未来賞」(毎日新聞社主催、内閣府など後援、クボタ協賛)に東京都世田谷区のNPO法人「熱帯森林保護団体」が選ばれ、このほど大阪市内で表彰された。クボタ賞の有限会社「土遊野(どゆうの)」(富山市)と一般社団法人「ReRoots」(仙台市)、次世代応援賞の山陽女子中学・高校地歴部(岡山市)と共に、活動内容を紹介する。【遠藤孝康、青山郁子、平川義之】

毎日地球未来賞

多様な自然と文化を守る–NPO法人「熱帯森林保護団体」(東京都世田谷区)

養蜂事業で採れた蜂蜜をこす作業をする先住民の男性
養蜂事業で採れた蜂蜜をこす作業をする先住民の男性
蜂蜜を容器に小分けする
蜂蜜を容器に小分けする
新たな事業の進め方を住民と話し合う南研子代表(左端)=①②③いずれもブラジルのシングー国立公園で、熱帯森林保護団体提供
新たな事業の進め方を住民と話し合う南研子代表(左端)=①②③いずれもブラジルのシングー国立公園で、熱帯森林保護団体提供

1989年、英国人歌手スティングがアマゾンの熱帯雨林保護を訴えて世界を回ったキャンペーンツアーで、来日時の受け入れ機関として設立された。現在はブラジルのアマゾン川支流にあるシングー国立公園で自然保護や先住民の生活支援に取り組む。

アマゾンの熱帯雨林は近年、農地や牧草地として開墾され、消失が進む。国立公園内で暮らす18部族、約2万人のインディオと呼ばれる先住民の伝統的な生活も変化を迫られているという。

代表の南研子さん(66)はスタッフと共に毎年現地を訪れ、約2カ月間先住民と生活し、必要な支援を探る。2010年からは、多種多様な植物に恵まれたアマゾンの特性を生かし、養蜂事業に取り組んでいる。採取される蜂蜜は先住民の重要な栄養源だ。

また、経済的な自立を支えようと工芸品の制作、芋や果物の畑作も始めた。近年は伐採の影響による自然発火が相次いだため、消防と協力して防火事業にも参加している。

南さんは活動への理解を広げようと、日本各地で講演し、広島や新潟など4カ所では共感した市民の手で支部ができた。

南さんは「一人一人の自然を守ろうという意識が、アマゾンの再生につながる」と話す。

クボタ賞

「循環型有機」で感動とやりがい–有限会社「土遊野」(富山市)

水力発電用の水車を前に打ち合わせをする土遊野のメンバー=富山市土で、青山郁子撮影
水力発電用の水車を前に打ち合わせをする土遊野のメンバー=富山市土で、青山郁子撮影

「共生と自立」の農業を目指して1983年、東京から富山市の中山間地、土(ど)地区に夫婦で移り住んだ橋本秀延さん(60)、順子さん(59)。2人が営む「土遊野農場」では、持続可能な社会作りの基本として「有畜の循環型有機農業」を30年間実践してきた。

スタッフは、大学卒業後にUターンした長女めぐみさん(27)のほか4人を雇用。約100枚の水田(約15ヘクタール)でアイガモ農法を取り入れた有機栽培を展開する。肥料は約1200羽の平飼い鶏のふんが中心。鶏の飼料は自家産の飼料稲や米ぬかなどを発酵させたペレット状の自家配合だ。

2008年には豊富な湧き水を生かし、水車による小水力発電に着手した。今では太陽光発電と合わせて自宅使用分と配達用電気自動車の電力をほぼ賄っている。世界各地から訪れる見学者は、この循環システムと里山の自然美に感動する。順子さんは「喜び、感動、やりがいが交ざった場所。それが土遊野です」とその魅力を語る。

復興から地域おこしまで–ReRoots(仙台市若林区)

仙台駅前に設けた「若林区復興支援ショップりるまぁと」=仙台市で、ReRoots提供
仙台駅前に設けた「若林区復興支援ショップりるまぁと」=仙台市で、ReRoots提供

仙台駅前に設けた「若林区復興支援ショップりるまぁと」=仙台市で、ReRoots提供
東日本大震災で甚大な津波被害が出た仙台市東部の若林区で、農業の再生を目指して活動する。設立は震災約1カ月後の2011年4月。震災前から市民運動に関わってきた広瀬剛史代表(39)=同市青葉区=を中心に、避難所で知り合った大学生が集まってできた。

11年7月に開設したボランティアハウスでは全国から延べ3万人を受け入れ、農地に残るがれきの撤去に取り組んできた。農業の再開を目指す農家には、ビニールハウスの再建を手伝い、耕作機械を貸し出す。JR仙台駅前に開設した「若林区復興支援ショップりるまぁと」では、復興した農地で取れた野菜を大学生らが販売する。

活動のコンセプトは「復旧から復興へ、そして地域おこしへ」。地域活性化のため、区外の市民が地元農家とともに、田植えや収穫などの農作業に挑戦する企画にも取り組む。

広瀬さんは「各農家が共同して農業を続けられるような農村作りを支えたい」と話す。

次世代応援賞

汗流し学ぶ海底ごみ問題–山陽女子中学・高校地歴部(岡山市中区)

戸内海で海底ごみを回収する山陽女子中学・高校地歴部の部員たち=井上貴司教諭提供
戸内海で海底ごみを回収する山陽女子中学・高校地歴部の部員たち=井上貴司教諭提供

海底ごみ問題の解決を目指し、部員28人が瀬戸内海からごみを回収、住民への啓発などに取り組んでいる。

部員らは月1回、住民に協力してもらい、船で沖に出て、底引き網でごみを回収・分別する。生活ごみであれば包装などを基に、どこから出たごみか、流入ルートを追う。回収結果は表などにまとめ、オートバイのエンジンやトースターなど珍しいごみは学校に持ち帰り、教材として展示。イベントなどで見て、触れてもらう。オリジナルの「海ごみかるた」を作り、子供たちにも海底ごみの問題を理解してもらえるよう努めている。

顧問の井上貴司教諭は「実体験を通して学び、社会に貢献できる人材になってほしい」。部員の中藤麻衣さん(同高2年)は「世界会議などに参加し、海底ごみを取り巻く問題は多岐にわたることを改めて学んだ」と話す。今後も活動を通じ、世界に向けた情報を発信していくつもりだ。

(2014年3月18日朝刊)

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